講座10《プロフェッサーコース》『藤村久和さんと学ぶ 北海道とアイヌ文化』
2010/11/17
11月16日(火)講座10『藤村久和さんと学ぶ北海道とアイヌ文化』の第4回「白老ポロトコタン体験学習」が行われ、藤村さんの案内でバスに乗り白老ポロトコタンを見学に行きました。参加者は33名。
藤村さんは最初に「おはようございます!でも、アイヌの挨拶は、おはようございますではなくて、お前、飯喰ったか?です。それは、昔の日本でもそうだったが、なかなか朝ごはんを食べられなかったからなのです」と挨拶されました。
それから順路の創成川(大友堀)や石狩街道のお話を聞きながら、高速道路に乗って白老へ向かいました。また、前回の質問のアイヌの人口動態についても答えられました。当時(江戸時代)の人口調査の数字が残っていないのは、調査の目的が、松前藩のアイヌ慰撫策(高齢者、病人、子供などへ物資を与えた)に利用する為で、残す必要がなかったからだそうです。
一方、アイヌの方でも、死んだ子供は再生を前提として数に入れない習慣があって正確な人口数は報告されなかったとのこと。
和人の進出につれてだんだんアイヌが住みにくくなり、石狩川の下流から生振、生振から旭川へと移動した経緯もお聞きしました。
恵庭を過ぎた頃から見える山々についてもアイヌ語の話題と共に解説して頂きました。例えば、恵庭岳は、エ・エン・イワで、エ・エンは尖った、イワは境(あの世とこの世の境)と云う意味で、確かに恵庭岳は尖った形をしていました。風不死(ふっぶし)岳は、フブ(トドマツ)ウシ(たくさん)から名付けられたそうです。
そんなお話を聞いているうちに白老に到着。ちなみに、シラオイというのは、古くからある地名で今では語源のアイヌ語がわからなくなっていて「虹の多い所」という説が一般的ですがはっきりした定説はないそうです。
見学したアイヌ民族博物館(ポロトコタン)は、アイヌの文化遺産を保存公開するために、1965年、白老市街地にあったアイヌ集落をポロト湖畔に移設・復元した野外博物館のようです。
野本正博学芸員の案内で、博物館を見学、生活の様々な品々や道具などを見て神と共に生きるアイヌのくらしを想像する事が出来ました。この博物館には、年間10万人が訪れるとのことですが、韓国語と中国語の説明書きがあり、外国からの見学者も多いようです。実際に韓国とシンガポールの団体客が来ていました。
それから、チセ(茅葺きの家)の中で、アイヌ古式舞踏のイオマンテリムセ(熊の霊送りの踊り)サロルンチカプリムセ(鶴の舞)ムックリ(口琴)演奏、イフンケ(子守唄)カラフトの唄の実演を鑑賞。ムックリやカラフトの唄の響きに東北地方の音楽と何か共通するものを感じました。
ここで、お昼の時間になって、楽しみにしていた伝統料理の昼食です。さて、メニュウはと見ると、イナキビ入りのご飯に鮭の串焼き、しょうゆ味の鮭汁、だんごでした。食べてみると、これがなかなかうまい!ご飯と鮭汁はお代わり自由で、お代わりした方もけっこういました。
食後は、館内を散策。北海道犬(ソフトバンクのカイくんの子供"空"くんがいました)や熊の霊送り(この博物館内で行われている)に使う為に飼っている熊、薬用・食用植物展示場などを見学しました。
次は、ムックリ制作体験です。一通り説明を聞いてから、皆さん一生懸命彫刻刀で竹を削ります。削り具合を係の人に確かめてもらって糸をかければ完成。完成したら、今度は演奏体験です。ところが、これが難しい、説明者のような音はなかなか出せません。皆さん、帰ってよく練習しましょう!とハッパをかけられて、ムックリ体験を終えました。
最後に、1925年に製作されたアイヌの生活を映したビデオを見せて貰いました。これは、ここでしか見る事の出来ない貴重なもので、アイヌの行事やイヨマンテ(熊送り)の様子などが良く分かりました。
こうして、今日の予定を終了、またバスに乗って帰路につきました。
アイヌ博物館、踊りや唄の鑑賞、食事とムックリ制作体験など色々楽しみながら学んだ一日でした。
皆さん満足すると同時に疲れも出たのか、帰りはちょっと無口。
しかし、藤村さんは、最後まで受講者を楽しまそうと、ムックリを自ら吹いて実演して下さったのでした。そして、秘訣を伝授、それは、ムックリをテンプラ油で揚げること(水分が抜けて良く鳴るようになる)
藤村さん、イヤイライケレ(ありがとうございました)!
受講者からもたくさんのコメントが寄せられましたが、その一部をご紹介すると
「アイヌの人達の生活全体が神様と一体化となっているんだ、という事を認識させられた」
「アイヌ民族博物館等は個人ではナカナカ見学する機会がなく、アイヌ民族の生活様式や行事など説明を受け大変意義のある講座でした」
「ムックリの制作体験や伝統食の昼食など体験のなかなか出来ないことをさせていただきました。勉強になりとても楽しかったです」
「実際にポロトコタンを訪れて体験するという機会に恵まれました。アイヌの人々の精神文化にふれる事が出来ました。胸があつくなる思いでした」
「藤村先生の行きのバスの中での解説は大変良かったです。特に生振アイヌの移動ルートが分かりました。白老(ポロトコタン)には以前にも訪れたことはありますが、野本学芸員の解説を聞くことができ改めて勉強になりました。ムックリは勉強して特技にしたいと思います」
「アイヌの食事、踊り、ムックリづくり等を通してアイヌ文化の一端にふれるができ、本当に良い機会であった。今日のような体験型講座も大変おもしろいと思った」
等など皆さん大いに学び、大いに楽しまれたようです。
そして「藤村先生には、これからもカレッジで講座をお願いします」「今回の続きも是非聞きたいと思います」と、今後も藤村さんの講座を望む声が多く寄せられました。