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講座8≪プロフェッサーコース≫『身近な環境を考える』

第2回「地球環境を守る水循環のメカニズム」

2011/02/06

  2月5日(土)講座8『身近な環境を考える』の第2回「地球環境を守る水循環のメカニズム」が市民図書館視聴覚室で行われました。講師は北大名誉教授の前野紀一さん。参加者は28名でした。

 講師の前野さんは、北海道大学低温科学研究所で永年「雪と氷」の研究をされて「氷の科学」など著書も多数。NHKの「ためしてガッテン」に出演されたこともあるそうです。石狩市に在住で、地域の人にサイエンスの楽しさ、奥深さ、大切さを伝えようと活動されている科学者グループ「サイエンスアイ」の代表も務められています。

 前野さんは、今日は「地球環境と水循環」について(1)エジプトと石狩を対比しての話と(2)地球温暖化と地球寒冷化という二つのお話をしますと前置して講座を始められました。

8-2-3.JPG (1)エジプトと石狩

 埃及・・・これは何と読むのでしょうか、との質問にエジプトと答える受講生。そんなやりとりでなごやかに進められたお話は、エジプトと石狩の年降水量の比較から始まりました。エジプトのカイロの年降水量は21.8㎜アスワンが26.1㎜に対して石狩は1037.7㎜(日本の平均に近い)でエジプトの40倍となっている。

8-2-11.JPG また、エジプトの水源のナイル川と石狩川を比べると、ナイル川が長さ6650㎞で平均傾斜が17㎝/㎞であるのに対して石狩川は長さ268㎞で平均傾斜が7.3m/㎞となっている。つまり、ナイル川は非常にゆるやかな流れの川である。

 このように、石狩とは極端に水環境の違うエジプトであるが、日本が縄文時代だった頃の5000年前にすでに文明が栄えていた。これは、ナイル川という特殊な水循環により可能となったものである。すなわち、どんな風土においても、人間の生活する環境のキーポイントは水とその循環であることを示している。

 併せて、古代エジプトが栄えた時代は、暖かい時代(日本ではいわゆる縄文海進の時代)であったことも紹介されました。

 (2)地球温暖化と地球寒冷化

 地球をつつむ大気で人間の生活に影響を及ぼすのは、対流圏という地表からほんの10㎞から精々20㎞の部分で地球規模で云えば大変微小なものである。

8-2-18.JPG 地球に対する太陽放射は、赤道部により強く当たり、放っておくとその部分はどんどん暖まるはずであるが、実際にはそうならないのは、水循環によって余分なエネルギーを地球全体に分配する仕組みがあるから。

 大気と空気とは、違うもので、大気の下層部分を空気と呼ぶ。また、中学校理科の教科書に載っている空気の組成は、正確には乾燥空気の組成で、実際は温度と湿度により量が変化する水蒸気が含まれている(湿度100%で温度20℃であれば水蒸気は1.3%≪ちなみに二酸化炭素は0.04%≫)

 水循環は、水(2)の三つの姿≪水蒸気(気体)水(液体)雪氷(固体)≫が相変化することで起こる。もし、水循環がなかったら火星のような人の住めない環境になってしまう。

 このように水循環の基本的なお話をされた後、地球温暖化と寒冷化の話に進みました。

 水循環のパターンとスケールは時間とともに変化し、その結果、地球環境も変動する。これまでの研究から、地球は何回となく寒冷化の「氷期」と温暖化の「間氷期」を繰り返してきたことが分かっている。現在私たちが生きているのは、およそ1万年前から始まった「間氷期」であり、これがいつまで続くかは分からない。

 近年の地球温暖化の原因は大気中の"温室効果ガス"特に二酸化炭素の増加によるものとされているが、実は、水循環の主役の水蒸気は、二酸化炭素より温室効果ガスとしての効果が大きく、量も多い。

8-2-19.JPG 最近の南極の氷の分析によると、間氷期の大気中に含まれる二酸化炭素の量は、氷期よりかなり多い。人間の影響のない30万年前からそうなっているので、これは人間の活動によるものではないことが分かる。

 従って、現在の温暖化が人間の活動によるものかどうかは、判定がなかなか難しい、というのが今日のお話の結びでした。

8-2-25.JPG 温暖化が人間活動の影響によるものかどうかはさておき、水循環があることで地球環境が守られ、人間が生活できるということが良く分かりました。

 受講者からも

「雨の降らないエジプトとナイル川の関係・・・その中で栄えた文明の事。エジプトと石狩の水の循環の違い。水の対流によって守られている地球・・・スケールの大きなお話はとても興味がありました。水循環の中で私たちの目に見える河川、地下水よりも氷河、氷床の方が多い事に驚きです」

「地球環境と地域環境について水循環のメカニズムを考える機会となり感謝しております。エジプトと石狩の例が身近な話で実感がわいて理解しやすかったです。様々なデータを示して解説していただき、理解できました。素晴らしい講座でした」

「最初に今話題のエジプトと我町石狩の降水量や大河を比較しながら水と文化を説明していただき、本論の水環境のメカニズムについても映像を示しながら丁寧に講義していただき、興味をもって学ばせていただきました」

「平易な言葉で、説明上手で理解を助けて、基礎知識のない人でも興味を持って勉強ができました」

「地球環境は水循環によって温暖化と寒冷化を繰り返しており地球温暖化が必ずしも二酸化炭素の影響だけでないことがわかりました。地球放射スペクトルなどについて、一部むずかしくてわからないことがありましたが、勉強になりました」

「地球環境から考えた水環境については、知らないこともあり参考になった。しかし、身近なところの水循環として、石狩にあてはめて、地下水、河川水、海水、森林の保水力などについても知りたかったので、今後またその様な事を教えて頂きたいです」

 等などのコメントが寄せられました。

 皆さん、地球環境を守る水循環について良く学ばれたようです。

 
 




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