講座8≪プロフェッサーコース≫『身近な環境を考える』
2011/02/20
2月19日(土)講座8≪プロフェッサーコ-ス≫『身近な環境を考える』の第3回「再生可能エネルギーの有効利用~雪氷資源を中心に~」が市民図書館視聴覚室で行われました。講師は、北海道大学大学院工学研究院准教授の濱田靖弘さん。受講者は26人でした。
講演は「今朝も雪かきをしてきたのですが、この雪をなんとか利用できないかといつも考えています」という言葉で始まりました。
雪を処理するには、900円/㎥かかり、札幌市は年間150億円を使っているのだそうです。本日のテーマは、このやっかいものの雪氷の有効利用についてです。一般的に、暖めることはたやすいが、冷やすことは難しいのだそうで、これに雪氷を利用しようというのです。
最初に、すでに実際に雪氷を利用している沼田町・美唄市・名寄市・札幌市・苫小牧など道内の25地区の事例を紹介されました。あまり知られていませんが、札幌駅には巨大な融雪槽(都心北融雪槽活用雪冷熱エネルギー供給システム)があるそうです。
現在雪氷が利用されているのは、沼田町などの例のように農業利用(米や野菜の貯蔵など)が多いが美唄などのような集合住宅に利用している例もある。
次に、製雪コストは、夜間電気を使った氷が数百円/トンにたいして自然降雪の雪は900円/トンかかるが、スノーキャノンを使うと88円/トンで出来る。
それから、氷の利用例として、池田町の自然製氷による食糧備蓄無動力冷蔵システム、栃木県の食用自然氷、道内販売の自然氷、京極の名水氷、北海道向け輸送トレラーの帰り荷として氷を積み首都圏需要地への供給する構想、海洋深層水を凍らせて利用する方法などが紹介されました。
また、新千歳空港における世界最大規模のシステムとして①周辺水質環境保全対策②CO2排出削減施策の事例が紹介されました。
①従来、防除雪氷剤を含んだ雪を寒冷期に川へ流していた為汚染問題が発生していたが、その雪を貯雪して温度が上昇する夏季に少しづつ流すと汚染を免れる。
②雪冷熱供給事業として、世界最大の12万㎥の貯雪を利用して空港旅客ターミナルビル等の冷房用として雪冷熱を供給し、新千歳空港の冷房用電力を年間17,900GJ削減する。省エネ期待効果は459KL/年(原油換算)CO2削減量は最大1020t/年となる。
新港地区には193万㎥というけた違いの量の雪堆積があり、北海道経済産業局調査事業として、石狩湾新港工業流通団地内雪堆積場(スノーマウンド)冷熱冷房利用事業調査が行われた。
新港地区に進出するIT産業への利用も単独では難しいが、団地化すれば可能となるとのこと。
また、LNG(液化天然ガス)を気化する際のエネルギーの利用が「新エネ雪氷利用研究会」により研究されているそうです。
このようなお話から、石狩に大きな可能性があるのは確かなようです。
濱田さんは、雪氷利用技術の実用化は、まだまだこれからだが、先ずは新千歳空港の事業を成功させて世界に発信したいと、結ばれました
最後の質問の時間に受講者から、雪氷を冷熱利用する以外にも野菜の冷温貯蔵による糖度増加効果や空気清浄効果も生かす活用をすべきではないかとの問いがあり、濱田さんも賛成されました。
雪氷利用には、実に様々な方法があり、今後大きな可能性があることが良く理解できた講演でした。
受講者からも
「雪氷熱の利用について国内での実態を知り、また今後の活用にも期待される状況がわかり、勉強になりました」
「やっかいものと思われていた雪を、資源として有効利用する考えで研究が進められ、さらに実際に活用したり、活用する方向に向かっていることを、改めて理解することができた。石狩市もこのことについて積極的に考えて進めていることについても楽しみである」
「北海道の自然を生かした温泉熱や雪氷冷気の利用技術を開発され、実用化される事を期待したい。特に石狩市で取り組もうとしている雪氷・冷気の活用が実現するよう願いたい」
「かんがえれば有効利用の方法は色々あるんだという事が良く判った」
「今日の講座は身近なお話だったので大変良かったです。石狩市においても、市役所、学校などで活用出来るようになれば良いと思います」
「雪氷資源、排雪の山を見て、これをなんとかエネルギーとして使えないかのか、などと思っていましたが、今回の講座で色々なところで色々と考えて使われていて、本当に感心しました。人間の知恵というものは本当に素晴らしいものですね」
「雪氷利用の大切さは分かったが、コストが電気の方が安くなることもあるなどむずかしいことなのだと思った」
「札幌市内の諸公開講座でも得難い内容でした」
などのコメントが寄せられました。雪の多い石狩に住む皆さんとしては、雪氷の有効利用について、今後さらなる普及を望む気持ちが強いようです。