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講座1 杉浦篤子さんと美術を楽しむ『アートって何?』

第2回「ファッションはアート」

2011/05/11

  5月10日(火)講座1.杉浦篤子さんと美術を楽しむ『アートって何?』の第2回「ファッションはアート」を石狩市公民館で行いました。受講者は25名。

 前回はキュレーターというアートを演出する側からアートを捉え、併せてモダンアートの楽しみ方を紹介されたのですが、今回は、自己を表現する手段として身につければファッションは動くアートとなるというお話でした。

231-25.JPG 杉浦さんは最初に、モロッコ旅行のお話をされ、ナツメの実を配ったり(なかなか美味しいものでした)砂漠が怖くてすごいものである事を披露したりされた後、アラブの衣服のカフタンの事から西洋と東洋の衣服の違いを説明されました。

 西洋では、衣服を体に合わせてつくるが、日本や中国、アラビアなど東洋では1枚の布を纏うので、体と衣服の間に隙間ができる。日本では、明治初期まで、東洋式の着物を着ていたが、軍隊が軍服を着るようになって洋服の一般化が進み、第2次世界大戦後女性の社会進出が進んで制服などで洋服が普及した。しかし、まだ子供服というジャンルはなかった。その後、仕事をする女性の増加で洋服が一般化した。さらに、大量生産で安価な洋服が流通するようになった。
 
 1950年までパリ・コレクションはオートクチュール(高級仕立て服)コレクションのみだったが、1960年頃から始まったプレタポルテ(高級既製服)コレクションがその後隆盛となった。

 ファッション界では、1960年~1970年代に、日本人が次々にパリに進出した。
 
 そのファッション・デザイナーの話は山本寛斉のビデオで始まりました。NHKの番組「課外授業ようこそ先輩」で、山本は、担任の先生に派手な衣装をまとわせ、外に出るのは躊躇するが、なんだか気持が良いという感想を引き出します。そして、自己表現の手段として子どもたちにファッションショウをやらせるというものでした。スーパーショウという形式を作り上げたことも紹介されました。

 231-211.JPGのサムネール画像次に紹介されたのは、三宅一生です。1968年の「五月革命」に遭遇して影響を受けた三宅は、着ることの原点に戻って服をデザインするという「一枚の布」のコンセプトで新しい服の概念を打ち出しました。布を裁断し縫製したあとにプリーツをかけるという通常と逆の発想から生まれたプリーツの服は「プリーツプリーズ」シリーズとして世界中で広く支持されました。そのプリーツの服については、杉浦さんがご自分の物を皆に廻して見せられたので、その軽くやわらかな手触りを味わい実感することができました。ビデオの中で、ワイヤーでつりさげた服がモーターで伸び縮みして動き回るショウも紹介され、いかにも楽しげで"アートとは生きる喜び"という言葉を納得しました。

m2.jpgのサムネール画像 それから、ジョルジオ・アルマーニ、カール・ラガーフェルドと並んで、ファッションの世界で最も影響を与えた3人の一人と云われた川久保玲です。川久保は常に、どうしたら今の概念を破れるか、を考え、穴開きの服や怖いイメージの黒服など既成観念を打破したファッションを発表し、業界の記者からは酷評されながらもデザイナーなどの一部からは熱狂的に支持されました。また、日本産の生地にこだわり、機織り産地の衰退に危機感を持ち続けているそうです。

231-218.JPGのサムネール画像 怖い黒の川久保に対して、新しい「エレガンス」を探求したのが、山本耀司です。

 杉浦さんは、このように何人かのファッション界を代表する人たちを紹介されたあと、衣類というのは身を守るという役割の他に、自己の意思表示をしたり、自己を表現したりする役割もあり、そういう意図で身につければ動くアートとなる、と結ばれ、ファッションは、若い才能を育てる場ともなると話されました。

 また、保育学科教授の立場から、保育士さんたちは、あまり身を飾らないのがしきたりのようになっているが、もう少し自己主張して欲しいとも言われました。

 これに対して、受講生からは

「パリコレなど日常の生活では遠いものと思っていましたが、年月を経て私達の衣生活の中に入ってきている、そしてそれがアートとつながっている面白さ。若い頃に愛読していた装苑と云うファッション誌などとてもなつかしく聞かせていただきました」

「今まで何気なくファッションの世界をみていましたが、視点を変えてみると、なかなか面白くてこれからも気をつけてみていきたいと思っています」

「周りに受け入れられなくても自分の信念を貫いて前向きに生きるデザイナーに感動です。そして、日本を愛している気持ちが見えて凡人の私にも何か理解できたような気がします」

「1975~80年代までの間、川久保玲(コムデ・ギャルソン)さんのファンでした。古い織機で織られていたビデオの布が昔着ていたオーバーの布地とそっくりで懐かしく当時を思い出しました、只、家族からはデザイン的にも丹前のようと不評でした、残念」

「最近はおしゃれをすることに遠ざかりつつあり、今日の話を聞き、又少しおしゃれ心を持とうと思いました」

「ファッションがアートであり、ファッションが創造であることが今日のお話でわかったような気がします。デザインにあまり興味のない男性にとっても大変おもしろい講義でした」

「ファッションの世界は今の私(男)にはあまり関係がないと思っていたが、凝った映像そして先生の話を聞いて改めてファッションの歴史、ファッションの変化等に面白い関心が出て来た。(動くアート)で了解」

 などのコメントが寄せられ「ファッションはアート」であることに納得されたようです。
 

 

 




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