講座2 日本・北海道の畑作史~畑作日本一への軌跡~
2011/05/15
5月14日(土)講座2《プロフェッサーコース》日本・北海道の畑作史~畑作日本一への軌跡~の第1回「日本・北海道の畑作史~麦類・豆類」が市民図書館視聴覚室で行われました。
講師は農学博士・技術士で、現在北農会農業技術コンサルティングセンター幹事の佐藤久泰さんです。受講者は23名でした。
佐藤さんはパワーポイントを使ってまず講座のテーマである麦類から話を始められました。
1ー麦類
麦類には小麦・大麦・二条大麦・エン麦・ライ麦などあるが今日は小麦を中心に話を進める。
■ 北海道の小麦の歴史―わが国には4~5世紀に朝鮮半島を経て伝来され、8世紀頃水田裏作として広く栽培された。北海道では1857年北見、篠路、函館でも良く実りありと記録がある。広く栽培されたのは黒田開拓使次官がケプロンを迎えて七重、札幌、根室に官園を開設 、欧米の種苗、機械技術を導入し、開拓使を設置した明治19年(1886)以降広く栽培されるようになったそうです。
■ わが国の小麦事情-小麦の作付面積は昭和10年代から30年代半ばまで70~80万haあった。昭和52年には86,000haまで減少し、その後28 万haまで回復するが再び減少傾向である。近年は20万ha程度で推移している。
2009年の統計であるが、生産量:88万t(うち北海道54万t,61.5%)、輸入量:520万t全消費量585万t、飼料用:30万t、自給率14.4%、1人当たり消費量46㎏。(参考に米1人当たり消費量64㎏) 米と小麦合わせて110k程度1人当たり消費している事になります。
近年品種改良などで収穫量が上がってきている。平成12年には収穫量が370kg/10aであったが最近は600kg/10aを越えている。将来的には 品種改良等により1000kg/10aの収穫も可能であると話されていました。
■ 北海道の小麦品種と作付面積―北海道ではホクシン、きたほなみ、春よ来い、キタノカオリ、ハルユタカ、等が作付けされているが、「ホクシン」が96,274haと「きたほなみ」の7,415ha「春よ来い」の,267haをこえ圧倒的に多い。また北海道の品種は官育成苗が多く民間育成苗は少ないそうです。
■ 小麦粉の種類と用途-小麦粉は含まれるグルテン、蛋白質の量により種類分けされる。強力粉は食パン類に使用され、準強力粉は中華麺 、菓子パンに中力粉は麺類に使用され、薄力粉はケーキ、菓子類に使用されている。
2-豆類
豆類には大豆、小豆、菜豆(インゲン)、蚕豆(ソラマメ)、豇豆(ささぎ)、豌豆(えんどうまめ)等多種あるが、初めに大豆についてお話しをされました。
大豆の起源は諸説あるが、中国でBC2700代に神農が行った五穀幡種の儀式に大豆が神種され、中国で最も古い作物とされている事から原産地としている。わが国には原始時代に伝えられたと考えられている。古事記、日本書紀にも大豆の記載があるそうです。
■ 北海道における大豆の歴史―1562年亀田村で栽培された五穀の中に大豆が含まれていたと推察されるのが最も古いそうである。一般栽培 は明治初期(1870)頃には道南地方で始まっていたが、開拓使が設置された1886年頃には2,219haの作付けが記録されている。
■ わが国の大豆事情―2009年の統計であるが、国内生産量が23万t(内北海道5.7万t―21.7%)、輸入量360万t、全消費量383万t、飼料用 ・種子用26万t、自給率5.9%である。1人当たり消費量が30kgとなっている。 需要実態としては製油用として300万t消費され、その他、加工品(味噌、醤油、豆腐、)等で消費されている。
■ 大豆の標準成分と利用形態―大豆は他の豆類から見ると糖質は若干少ないが、たんぱく質、脂肪が多く栄養価に富む。ブラジルなどでは主食とされている面もある。
又利用形態も我々の日常生活に無くてはならない味噌、醤油、オイルの他、菓子類、豆乳黄な粉など多岐にわたっている。
■ 大豆の品種―大粒大豆、中粒大豆、小粒大豆、極小粒大豆、に、種類分けされ多種の品種があるが、普及面積の多いものは中粒大豆のユキホマレ、トヨムスメ、トヨコマチ等である。
■ 小豆について
小豆の起源は東南アジアの照葉樹林帯とされるが野生種が多く目下遺伝子解析中である。北海道でも遺跡から炭化した小豆が出てきている。小豆は戦後小豆相場で投機の対象とされ価格が高騰し赤いダイヤと称された時もあった。
■ わが国の小豆事情―2009年の統計であるが国内生産量:7.0万t(内北海道:6.1万t88.5%) 輸入量:2.75万t、消費量:8.45万t、その他在庫となっている。また加糖餡の輸入量が7.24万tある。国内産の小豆は殆ど北海道産と考えてよいようである。
■ 道産小豆の利用実態―製餡44%、菓子類41%、その他が15%となっている。
■ 小豆の機能性―ポリフェノール(除活性酸素)、食物繊維(便秘など)、ビタミンB群(脚気防止)、ビタミンE(老化防止、抗酸化)、ミネラル、鉄分、サポニン(動脈硬化防止)、アントシアニン(血液さらさら)と補助栄養価が高い。また抗酸化活性は中国産などより道産小豆が高 い事が明らかにされている。
■ 菜豆(インゲン豆) 豌豆(えんどう豆)、についても生産量事情、需要実態について説明がなされました。又「ホジティブリスト制度」―残留農薬などが一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度について説明がなされました。
最後に機械化されたオーストラリアの小麦の耕筰状況をまたブラジル、中国における大豆の耕筰状況をビデオで見て第1回目の講座を終わりました。