講座17「ミルクから食と健康を考える」
2012/02/24
2月22日(水)講座17「ミルクから食と健康を考える」の第2回「牛乳は優れた食べ物」が北コミュニティ・センターで開催されました。北海道大学名誉教授の仁木良哉先生を講師に、受講者28名が受講されました。
講義内容は広範多義にわたりますので、その骨子内容を掻い摘んで以下にご報告いたします。
ミルクは赤ちゃんの食べ物ですが、特に牛乳は約8000年も前から人の食べ物として利用されています。
母乳は人の赤ちゃんにとって、牛乳は牛の赤ちゃんにとって、その生育に必要な栄養素をすべて含んだ「完全食品」ですが、その成分は異なります。すなわち、赤ちゃんの成長速度や生息環境などによって個々の動物のミルク成分は変化するのです。
ところで、牛は1日に20~30リットルの牛乳を出しますが、1リッターの牛乳を作るのに500リッターの血液の流れによって乳房で作られています。
牛乳には①乳糖(炭水化物)(組成割合 約4.7%)②乳脂肪(組成割合 約3.6%)③タンパク質(組成割合 約3.2%)④ミネラル(組成割合 約0.7%)⑤免疫物質(組成割合 微量)などの栄養素(成分)が含まれていますが約88%は水分です。
1)乳糖(炭水化物):牛乳には約4.6%の糖質が含まれていますが、そのほとんどが乳糖でミルクにしか含まれない特殊な糖で、ガラクトースという物質とブドウ糖(グルコース)という物質が結合した構造を持っています。乳糖は小腸で酵素により、二つの糖に分解されてから、吸収され、主としてエネルギーとして使われます。また、乳糖は小腸内での乳酸菌の発育や増殖を助長する効果があり整腸作用の働きを持っています。一方、人が成長するにつれ、乳糖を分解する酵素の量は減少する傾向にあります。もし、この酵素が極端に減少した場合、牛乳を飲むと、乳糖が分解されず、お腹がゴロゴロしたり下痢をしたりする原因になります。
2 )乳脂肪:脂肪は脂ですから水に本来溶けないものなのですが、牛乳中の脂肪は特殊な薄い膜で覆われてた極小さな粒子として牛乳の中に分散していますので、消化管では分解・吸収されやすい脂肪になっているのです。牛乳の脂肪を構成する脂肪酸には小さな分子の脂肪酸が多く含まれています。大きな分子の脂肪酸は体内に蓄積され易いのですが、小さな分子構造を持つ乳脂酸は腸から速やかに吸収されてエネルギーとして消化されるので、体脂肪として蓄積しにくい特徴があります。牛乳にコレステロールが多く含まれると思っている人がいますが、一食分(200ml)で比較すると、決して多くありません。
3) タンパク質:タンパク質はアミノ酸形で体内に吸収され、体に必要なタンパク質の材料となります。余分に吸収されると、エネルギ-として消費されたり、脂質に変換されたりします。タンパク質は腸内でアミノ酸に分解・吸収されますが、良質なタンパク質には有益な(必須)アミノ酸がたくさん含まれております。このアミノ酸含有量(アミノ酸スコア)をパーセントで表しますが、牛乳タンパク質はその値が100%であり、牛乳は非常に優れた良質な食品タンパク源となります。ちなみに、精米のアミノ酸スコアは65%となります。
4)ミネラル(およびビタミン):牛乳ミネラルの代表的なものにカルシウムがあります。その他カリュム、鉄リン、マグネシウム、ナトリウム、塩素etc.がありますが、これらは骨格を形成したり、体の調子を整えたりする働きをしています。
5)免疫物質:文字通り免疫作用をする物質で、体内のバクテリアなどの悪玉菌を退治してくれます。
編集後記
本講座は仁木先生の牛乳に対する長年の研究生活を通して体得された「牛乳は神様からの贈り物」というコンセプトをベースに、第1回「食べ物と栄養」第2回「牛乳は優れた食べ物」のお話しいただきました。
北海道は「酪農王国」と言われ全国牛乳生産量の約50%を北海道で生産されているとのことですが、牛乳の世帯別消費では北海道は全国47都道府県中29位であり、札幌市の一人あたりの消費量は49都市中27位とのことです。この現状を知り、より多くの皆さんに「神様からの贈り物である」牛乳を飲んでいただき、より健康な毎日を送られることを願わずにはおられません。また、この消費拡大は地域活性化へ、そして引いては道内経済の活性化にもつながる要素でもあります。
今回牛乳の基本的、学術的な内容を知る機会を得られたことに大きな意義を感じているところです。
今回受講者の多くの皆さまから好評のアンケートをいただきました。翌24年度(後期)も引き続き仁木先生を講師にお招きして「ミルク講座(仮称)」を開催する予定になっておりますのでご期待ください。詳しくは「いしかり市民カレッジ・ホームページ」「いしかり広報」「あい風通信」などの広報または石狩市公民館(0133-74-2249)にお問い合わせください。 文責 林一元