9月1日、主催講座7『石狩平野北部の地質と地震問題』の第2回「北海道と札幌付近の地質活動」が花川北コミュニティセンターで行われました。講師は、北海道大学名誉教授の笠原稔さんで、参加者は52名でした。
笠原さんは、元北海道大学地震火山研究観測センターのセンター長として、長年地震の研究に携わってこられた方です。講義は、"地震はなぜ起きるか"から始まりました。
話しのはじめでは、地震とは何か、何故起きるのか、地震発生のメカニズムでした。地震というのは、地球内部のずり破壊によって起こり、幾つかのプレートの境界で発生するとのことです。また、地震の"震度"と"マグニチュード"ですが、ある地点のゆれの大きさ強さが"震度"で、揺れの規模大きさを表す指標がマグニチュードとのことです。震度は場所が変われば震度が変わるとのことです。
地震が何であるかということがはっきりと判ったのは1960年代の地震学で、それまで観測条件が十分でなくデーターが不足していたが世界的に地震観測網が進み断層モデルがまとめられた。地震がどういう大きさでどういう方向に滑ったか、その場所を記録することにより、同じ方向の力が作用していることが判ってきた。その作用をさせる条件を作ったのがプレートテクニクスで、プレート境界は地震の巣であるということが判ってきたとのことです。
講義は、地球の大陸とプレートの動き、また海底の年代とそこで生成されるプレートについて説明がありました。驚いたことに、海底の年代は非常に若いとのことでした。地球の年齢は46億年といわれていますが、海底の年代は2億年よりも新しいとのことです。
北海道周辺のプレート境界は、太平洋側では太平洋プレートが北海道にぶつかりながら沈み込み、東岸側ではアムールプレートが進んできて北海道にぶつかっており、この二つの東西のプレートの間に北海道が位置することにより地震が発生しているとのことです。
これまでも北海道の地震は、太平洋沿岸でM8クラスの巨大地震が発生しており、日本海側では、アムールプレート境界での衝突による大きな地震が起きているとのことです。また、札幌圏では平野部の下に活断層があるとのことです。
講義では、北海道及びその周辺での過去の被害地震の分布も紹介されました。北海道及びその周辺の過去の被害地震の分布では、太平洋プレート側が多く、アムールプレートのある日本海側、三陸沖でも多く発生しているとのことです。微小地震は、1995~2010年間をみると北海道のほぼ全域で発生しているとのことです。
札幌の場合は、多くの場所で建物を建てる際に地下の調査が行われており、そこで液状化の痕跡がみられるとのことです。液状化があるということは直下型地震があったことを示しているわけで、少なくとも2000年間で4回の地震があったことが分かっているとのことです。このことから札幌も決して安全な場所ではないといえるとのことです。
講義では、笠原さんも加わって行われた地震被害想定の調査についても紹介がありました。「平成13~16年度の地下構造調査」、「16年度の石狩低地東縁断層帯強度振動調査」、「17年度の地震防災対策に関する提言」について紹介されました。市街地の震度予想では、平野部では厚い堆積層があり地震動の増幅が想定され、山地は固い地盤により揺れが小さいとのことです。講義では、スライドを使いながら、過去の地震の発生分布、札幌周辺の震源分布、札幌市及びその近郊で発見されている液状化痕の分布などが紹介されました。
地震による被害想定もされているとのことです。建物の倒壊率では、木造家屋はM6以上になると急増するのに対し、非木造家屋ではその半分以下と耐震化が大事であるとのことです。また、3・11のM9地震の評価ですが、決して想定外ではなく、三陸沖では869年、1611年に地震・津波の記録があり、北海道太平洋沖では、17世紀初頭に発生しており、過去5000年間では10数回発生しているとのことです。今後~数100年を想定すると、いつは分からないが「ある」ことを前提に、津波なら避難場所・方法・訓練を、強震動なら家屋の耐震化、都市構造改善の備えが大事とのことです。
地震に対しては備えあれば憂い無し、敵を知り己を知ることが大事で
・札幌における地震の種類と発生のリスクでは、直下型地震の繰り返し発生する事が想定される。
・液状化では、平野部の軟弱地盤で予測される。
・自分たちの問題として、倒壊を防ぐ耐震、家具の固定など地震時の安全確保と思慮ある行動(自助)
・地震発生時の住民組織のとるべき行動(共助)を備える。
など、自分が当事者になることを考えておくことをが必要であることを話されて講義を終了しました。
講義が終わって、質疑も行われました。感想をみても、あらためて地震に対する認識が強まった講義でした。
<受講生の感想>
・内容はわかりやすかった。地震はどこにでも発生する可能性は有りますが、庶民としても少しでも勉強(知識を吸収)する事が大切で有ると思いました。是非、又講習希望致します。
・札幌地域も直下型地震のおこる恐れがあるとのお話しにより、常に地震に対する心構えと準備は忘れずに生活したいと思います。いろいろくわしいお話しありがとうございました。石狩市も砂層の上にあるので液状化の心配は如何?
・アムールプレートとオホーツクプレートについて石狩の近郊の海での地震の有無について知りたかった。
・気になっていることがわかった。新たな視点からの見直しが必要であったと判った。