10月6日(土) 講座7「石狩平野北部の地質と地震問題」の第3回「石狩丘陵・当別川沿いの活断層・活構造」の野外講座が行われました。講師は元北海道立地質研究所 地域地質部長で現在アースサイエンス株式会社 常務取締役の岡孝雄さんです。受講者は35名でした。
受講者、スタッフ全員バスに乗り9時過ぎに公民館を出発しました。
早々に岡さんは資料を基に今日の予定のルートの説明がありました。
午前中は①(美登位分館周辺)の紅葉山砂丘北端部と周辺の泥炭地②(獅子内高地)での当別層、最終間氷期の海成段丘・洞爺火山灰、活褶曲の観察③材木沢大露頭を見学④阿蘇公園で昼食とし、午後からは⑤当別ダム提横の広場でのダム建設の経緯ついて⑥ダム湖中間地点での周辺の地形と当別層露頭観察⑦道民の森周辺での当別断層露頭観察の予定です。
今日の予定説明が終わり早速「茨戸油田と大曲流」について説明がありました。
茨戸油田は茨戸背斜(馬の背に隆起した地質構造)に対応し旧石狩川をはさんで石狩市生振と札幌市篠路またがってかってあった油田で、昭和33年に発見されてから昭和46年まで石油を産出していました。この油田の付近では旧石狩川は大きく曲流している(現在の茨戸川)この大曲流には、平野の下に茨戸背斜があり、その隆起部を遠巻きにするように川が流れる傾向を示していると考えられているそうです。また、篠路、石狩花畔等で見られる液状化痕から札幌付近では500年前後に1度、震度6程度の地震があることが解かるそうです。ちなみに一番新しい地震は1834年の石狩地震だそうです。
バスは①の美登位分館付近に到着する。ここには紅葉山砂丘の北東端が3つの小山として残っている。紅葉山砂丘は6000年~6500年前をピークとする縄文海進時に存在していた内湾の砂州から発達し、海退と共に取り残されたものである。また美登位―太美地区は石狩川が南に大きく曲流し当別川も東に流れ川によって分断される事がなく広い泥炭地を形成している。又美登位―太美地域は最終氷期の埋設谷(石狩川本流)が存在していた処だそうです。
ここでは紅葉山砂丘の断面を観察する。
②の当別町獅子内高台の土取場跡の大露頭に移動する。大露頭をまじかで見学、観察する。ここでは西北西へ20度傾斜した当別層と中位段丘堆積物(石狩高岡層)の不整合関係が観察できる。石狩高岡層の形成年代は13万年~8万年頃で上部基底部に約11万年前の洞爺火山灰をはさんでいる。土取場の急斜面を滑りながら岡さんの説明を聞きました。
③に移動し、材木沢層の大露頭部分を見学する。材木沢層は層厚が650mを越す240万年~80万年前の厚い地層である。現在露頭している部分は50m程であり、観察できる。露頭の主部は材木沢層の下部の最上位の部分に相当する。下部は板状泥岩、細粒砂岩、両者の互層により構成されており、浅海、~潟湖の環境を示しているそうです。上部は礫、砂礫からなり三角州などの環境を示す。皆さん100万年前の礫を手にして考え深げでした。
④阿蘇公園で昼食となり、皆さんそれぞれ公園内のベンチで昼食となりました。昼食後公園内の施設を見学し開拓当時の風情を楽しんでいました。
午後からは⑤当別ダム提横の広場でダム建設の経緯について話を聞きました。
当別ダムは、当別川総合開発事業の一環として、治水、利水、環境保全のための多目的ダムとして作られた。現在、丁度工事が完成したところである。ダム提建設箇所は地質構造的には、「中小屋半ドーム」と呼ばれる南北方向の隆起構造部を当別川が北北東から南南西に横切ところで、地形的には谷巾が狭まった渓谷を成している。
バスは当別川に沿って進み、⑥ダム湖中間地点付近の地質について説明を受ける。
ダム湖周辺は地質的にはほぼ当別層の分布域である。活断層である「当別断層」はダム提付近では東側2.5k付近を南北に通過するが、北半ではダム湖に接近するようになる。この地域の当別層は泥質極砂~細粒砂岩が主体である。風化に弱くダム湖周辺は護岸整備が続けられている。ここでの当別層の観察が工事によって観察不可能になったので「沼ノ沢、月形超え道路入り口土取場跡の当別層を見学しました。ここは当別断層が東側に500mのところを通過している。全体的に灰色を呈し細粒砂岩が確認できる。また地層は西北西に傾斜している。
今日最後の観察地 ⑦移動し「道民の森」周辺の当別活断層露頭部分についての説明を受けました。
最初に「道民の森」青山中央地区一番川南休憩所に到着し、西上がり東落ちの逆断層(当別断層)を見る。道路を横断し望来層と段丘堆積物の変位(S字断層)、そしてそれに伴う断層谷を観察する。また道路脇にも変位する露頭が確認できる。
次に一番川「道民の森」道路入口付近に移動する。ここでは活断層によって隆起した低位段丘とその前面に巾30m前後の断層谷が見られ説明を受ける。さらに200mほど移動し活断層露頭部分を見学し説明を受ける。ここでは段丘砂礫層が落ち込み、望来層が上に載る逆転現象が確認できる。この付近全体で段丘礫層がS字状に変位しており、垂直変位は10数mになるそうです。
これで今日の野外講座が終わりました。皆さんお疲れ様でした。これで少しは石狩を取り巻く地層と当別断層について知識が増したのではないでしょうか。岡先生今日1日有難うございました。