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講座8 「顕微鏡を使って宇宙を覗いてみよう」

第2回 隕石から宇宙を覗いてみよう

2012/11/25

11月10日(土)講座8『顕微鏡を使って宇宙を覗いてみよう』の第2回「隕石から宇宙を覗いてみよう」の講座がありました。講師は前回と同じ、北海道大学大学院 理学研究院の伊藤 正一さんです。
受講者は31名でしたが、他に今回は屯田北中学校から4名、花川北中学校から生徒2名の参加がありました。


はじめに伊藤さんは、今日の講座では太陽系の起源に関する研究を紹介した後に、光学顕微鏡で隕石を見る体験をしていただきたい話され、また是非この機会に隕石の観察を存分に味わってほしいと話されました。


最初に「原始太陽系の歴史」からお話が始まりました。約45億7000万年前、銀河系のあるところに分子ガスと固体微粒子で出来た漂う雲が出来ました。これが太陽系の基となる「分子雲」と呼ばれるものです。それから300万年後に、分子雲は縮小を始め、原始太陽のまわりに巨大な円盤状星雲が生まれました。この頃の太陽はまだ核融合するほど成長していなかったが、「双極流」と呼ばれるジェット噴射をしていました。星雲に含まれる微粒子やガスは太陽の重力で引き寄せられ、塵同士はくっつきあって徐々に大きな塊となり直径十数キロの微惑星に成長します。微惑星は更に衝突合体を繰り返し、溶融を起こします。地球など惑星が持つ核やマントルを持つ構造になり、現在とほぼ同じ大きさの惑星に進化したこと等太陽系の成り立ちについて説明されました。
そして、この46億年前の歴史を紐解く手法の一つが"隕石をみる"という事なのですと話されました。

講座a8-2-2006.jpgのサムネール画像次に「隕石学入門」にはいり、隕石は南極でほとんどが収集されます。現在まで南極に降ってきて収集された隕石は世界中で約28,000個ありそのうちの58%を日本が保有しているそうです。
隕石には、大きく分けて2種類の特徴があります。
①分化した隕石:小天体として集積後、溶融を経験している。ニッケル鉄合金である金属相とカンラン石、輝石、斜長石等のケイ酸塩相に分かれている。
講座a8-2-4 008.jpg・分化した隕石の組織
鉄隕石:主にニッケル鉄合金から出来ている。100万年に2~3℃の冷却速度で出来るとされる。
石鉄隕石:ニッケル鉄合金とケイ酸塩をほぼ等量含む。
エンコンドライト:主としてケイ酸塩鉱物から出来ている。地球上の岩石と似た特徴を持つ。火星隕石、月隕石もこの仲間である。

②始原的な隕石:小天体として集積後、溶融を経験していない。普通コンドライト隕石(はやぶさ帰還試料など)と炭素質コンドライト隕石がある。
・ 始原的隕石の組織
 コンドライト:主としてケイ酸塩鉱物から出来ている。コンドリュ-ルと呼ばれる直径数mm~0.1mmの丸い粒を含んでいる。さらにスピネルと呼ばれる鉱物からなるCAIとよばれる直径0.01~1㎝の不規則な粒を含んでいる。それらの隙間を埋めている細粒な鉱物の集合体で0.0001mmのカンラン石からなるマトリクスを含む。高温鉱物と低音鉱物が混在している。
・普通コンドライト隕石:地球に一番多く降り注ぐ種類の隕石イトカワもこのタイプである。

・炭素質コンドライト隕石:普通コンドライト隕石に較べて極わずかしか地球に降ってこない(全体の2%程度)。有機物や水を含んでいる隕石である。
興味深い特徴として化成組成が太陽と同じ特徴を持っている。また太陽系で最古の形成年代を示す物質(約46億歳)や太陽系が出来る前の星屑も含んでいる。
太陽系の元となった始原物質であることから、太陽系を46億年前まで戻って解読する事ができる唯一の試料です。

伊藤さんはここから先はコンドライト隕石のみに主観を置いてお話をされていきました。

講座a8-2-6010.jpgのサムネール画像まずスクーリンに映されたCAIと呼ばれる物質について話されました。この物質が45億6700万年に出来たことが、放射性同位元素の半減期を利用してわかりました。構成している鉱物が生まれる温度から推定される原始太陽系星雲の温度は約1600度だというのです。このCAIはどこで出来たのでしょうか。CAIは溶融を経験した後ゆっくり冷え固まったものや、ガスから直接固体に凝縮したものまで様々です。

つぎにコンドリュールについて話され、コンドリュールはCAIの年代と比較してわずか200万年だけ若い事が5年前に同位体分析から確かめられました。またCAI生成過程と異なり溶融物質が急激に冷やされ生成される物質もある言う仮説も存在する。
この200万年間の仮説はたくさんあるがまだ万人が認める仮説は存在していないのが現状です。
つぎにマトリックス物質について話されました。マトリックスはCAIやコンドリュールの隙間を埋めている1マイクロメーター以下の粒子の集まりです。この粒子の集合体の中には46億年以前の星屑が紛れ込んでいる事が解かっています。さらに分子雲と呼ばれる低音環境下(-263℃)で形成されたと考えられる有機物も含まれる事もわかっています。
コンドライト隕石の中は、灼熱の中で生まれた最古の天体(CAI,コンドリュール)や低温環境でうまれた有機物までバラエテーに富んでいます。そしてコンドライト隕石は太陽系が生まれる元となった物質が、生まれれた姿のまま46億年間保存されたタイムカプセルであり、太陽系を解読するロゼッタストーンのような存在であると話されていました。
太陽系で作られた鉱物の酸素同位体比の分布を見るとイトカワの同位体比分布とは桁違いに広範囲にわたっている。宇宙化学分野の謎になっているのがこの広範囲な酸素同位体分布がいかにして生まれたのか、何を意味するのかです。この答えに一歩近づくと考えられているのが小惑星や彗星に存在していると考えられている氷や水の酸素同位体を測定する事だそうです。
講座a8-2-9 013.jpg分布図をみると太陽系の鉱物は一部を除きすべて直線的に並んでいます。この直線になる理由は、水と鉱物が相互作用し、混合した割合の違いによる結果だと考える事ができます。つまり小惑星にある氷や水を直接測定できるとこの仮説を実証する事になります。
事実、降ってきたばかりの隕石をすぐに回収したNASAの研究者の見つけた塩の中に閉じ込められた流体含有物(水)の酸素同位対比と水素同位体比を測定したところ、地球より重い酸素同位対比を示し、またその水の水素同位体比が、彗星氷の値と一致していました。つまり地球外の水から、重い酸素の起源は氷であるという説が支持された結果でした。さらにアポロが持ち帰った月試料にわずかに含まれている微量結晶水を測定した結果からも、その水素同位体比から彗星起源である事がわかりました。そして地球の水の起源も彗星が担っていた可能性が高い事がわかってきました。

近いうちに地球外の氷や水を持ち帰って測定する事が出来たら、重い酸素と軽い酸素が何故そうなったのか、この最大の謎を解明する鍵に一歩近づく事が出来るかもしれません。
そして最後に受講した中学生の紹介があり、伊藤さんは若い皆さんに期待をこめてお勧めしたいのは「やり続けることが出来るような楽しい事を見つけたいという意識を持ち続ける事です」エールを送り今日の講座を終えられました。
この後、受講者は思い思いに顕微鏡を覗きながら45億年前の世界に浸りました。

講座8-2-11 015.jpg受講生の感想は、「むずかしい でもおもしろかった。」、「普段聞く事がない話で参考になった」、「光学顕微鏡で隕石を見て楽しかった」、「機会があれば再度受講したい」など多くの感想が寄せられました。

伊藤先生2回にわたりロマンある宇宙の壮大で貴重なお話しありがとうございました。

 

 




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