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講座13 『科学は面白い!実験でなっとく』

第1回 「あい風はなぜ吹くの?熱と温度の違いを知ってなっとく!」

2013/01/12

  1月9日(水)平成25年に入って最初の講座『科学は面白い!実験でなっとく』の第1回「あい風はなぜ吹くの?熱と温度の違いを知ってなっとく」を"学び交流センター"で行いました。講師は、北海道大学名誉教授の前野 紀一さん、受講者は28名でした。

 前野さんは、雪氷物理学がご専門で、石狩では、サイエンスアイと云うグループを作り子供たちに科学の楽しさ、奥深さ、大切さを伝える活動も行われています。

 「今日ご参加の皆さんは、よもや理科嫌いと云うことはないでしょうが、最近は理科嫌いの子供が増えていると云われます。この原因は、色々あるのでしょうが、一番大切なことは、なぜ、と思う心を子供たちに持たせることで、その点が欠けているのではないかと思います。」
「今回のテーマは、"あい風はなぜ吹くの?"ですが、実は、あい風について正しく理解している人は意外に少ないのです。そこで、今日は二つの事をお話したいと思います。ひとつは、石狩にあい風と云う言葉が伝わった歴史について、もう一つは、なぜあい風が吹くか、の科学的な説明です。関連する実験も行いますので、皆さんご自身が自分で考えて、納得して頂きたいのです。」前野さんは、こう言ってお話を始められました。

 以下は、お話の概要です。

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◇日本海のあい風
1)あい風の風向
・あい風は、日本海沿岸の各地で知られている。
・あい風は、場所によって、「あい」「あいの風」「あゆ」「あゆの風」「あえ」「あえの風」など呼び名はいくらか異なり、漢字をあてる場合も「東風」「鮎風」「藍風」など色々であるが、多くの場合、春から夏にかけて吹く、さわやかな風をさしている。
・日本海沿岸のあい風は、各地で風向が異なっていることから、あい風がその土地独特の局地的な風であることがわかる。
・柳田國男の民俗学的調査によると、どの地のあい風も、豊穣、豊漁、あるいは幸運をもたらす「幸せの風」と考えられている。
2)あい風の歴史
・あい風と云う言葉は、日本海沿岸で広く知られていて、文献も多いが、一番古い文献は、万葉集で、「あゆの風」として大友家持を始め四首の歌がある。
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・このことから、すでに1300年前にはあゆの風(あい風)が人々の間に流布していたことが分かる。
・あい風は局地的な風なので、風向は各地で異なっているが、江戸時代初期に始まった、北前船による西廻りの日本海航路と関係した共通点がある。
・北前船は、北へ向かう時(クダリ)対馬海流が順流となるが、大阪に向かう時(ノボリ)逆流となるので、ノボリの時この方向へ吹く風(順風)は重要な動力源であった。
・北前船の船乗りや寄港地の人々は、このような順風をあい風と呼んだと考えられるが、このことから、あい風の風向が北陸、山陰で北風から東風に変わることも頷ける。
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◇あい風の特徴と名前の由来
1)あい風の特徴
上記1)、2)のことから、あい風の特徴は、次のふたつにまとめられる。
A.あい風は、海から幸せを運ぶ好ましい風
B.あい風は、北前船のノボリの順風
AかBを満たす風を、それぞれの土地の人々は、あい風と呼んだと考えれば、地形や気象の違う各地で、あい風の風向が異なる事が理解できる。
2)名前の由来
あい風と云う呼び名の由来については、諸説あるが、詳しいことは分かっていない。

◇石狩のあい風
・1300年以上前に生まれたあい風が、どのような経緯で石狩に伝わったかは分からないが、1694年に建てられた石狩弁天社の狛犬には、酒田の柏屋九左衛門の船が石狩に入港したことが書かれている。この時代から石狩には、蝦夷地探検や海産物等の商い、開拓のために多くの和人の往来や移住があった。
・明治以降は、各地から移民が入り、それぞれの出身地で馴染んだあい風と本来のあい風の二つの特徴が、石狩で新たなあい風を生み出していったことが想像される。
・石狩のあい風については、田中實、吉岡玉吉両氏により多くの資料が集められて、次のようにまとめられている。
浜益、厚田、石狩の漁師たちが云う「アイノ風」は、春(4月上旬)から初秋(9月中旬)にかけて、真北の方向からゆるやかに吹く夏の風である。夜半から朝方にかけて、陸から海に吹いていた弱い南東風(アラシ)が止み、午前10時頃から正午にかけて、晴れてきた石狩湾の真北の方向、浜益浜では雄冬岬、厚田浜では愛冠(あいかっぷ)岬、石狩浜では雄冬岬、から3~4mの風速でそよそよと吹き始め、いくら吹いても夕方には止むのが、「アイノカゼ」である。
・厚田のあい風については、昭和55年に放送されたNHKの新日本紀行「アイ風のたより」で冬の北西の風として説明され、また、それを気象学者が風の専門書で紹介したが、これは間違い。厚田でも浜益でも石狩でも、冬の冷たい季節風はあい風とは呼ばれていない。

◇石狩のあい風の気象学的解析(あい風の科学的な裏付け)
海陸風は、陸と海との温度差で生まれる。海に比べて陸は暖まりやすいので、日射によって陸が熱せられると、陸上の空気は暖められ、軽くなって上昇し、その結果、海から冷たく重い空気が流れ込む。これが海風である。夜はこの逆で、陸から海へ陸風が吹く。
・あい風の気象データによる解析
実際にあい風が吹いた日を漁師の方に記録してもらい、あい風該当日の気象データがどのようになっているかを調べた。
1)該当日2007年8月13日の天気図
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 8月13日は、日本全体が太平洋高気圧に覆われ、風も静穏、日射は強く、各地で猛暑日となった。
2)風向の時間変化
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浜益では、夜間吹いていた東南東ないし東の風が午前8時40分に突然北西風に変わり、午後6時頃まで続いている。これが、海風、即ちあい風である。同様の風向の変化は、厚田では10時10分、石狩と札幌では12時20分におきている。
3)気温変化
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気温変化を見ると、どの地点でもあい風の吹き始めとともに気温が急降下している。石狩ではおよそ4℃下がっており、文字通り夏のさわやかな冷風である事を示している。

◇このあと、熱と温度に関する実験を各グループ(5グループ)ごとに行いました。
「実験は、なぜ、と云うことが大切です。なぜ、を自分の頭で考えるようにして、行って下さい」と前野さん。

実験1)金属と発泡プラスティックに触る実験
まず、触る前に、金属と発泡プラスティックのどちらが冷たく感じるかを予想。
一人以外は、皆さん鉄との回答でした。
次に、実際に触ってみて、答えを温度と熱と云う二つの言葉を使って説明することになり、各グループから、色々な答えが出ました。
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 それに対して、前野さんは、本当は答えを自分で見つけて欲しいのですが、と前置きされながらも「熱と温度とは、意味が違います。その違いをきちんと考えられるようになったのは産業革命の頃なのです。実験1)では、室温と同じ温度の鉄と発泡プラスティックに、それより高い体温を持つ人が触ると、熱は温度が低い方に流れますが、熱がより多く流れる鉄の方が、冷たく感じるのです。」と説明されました。

実験2)水(400ml)にペットボトルの湯(100ml)をつける実験
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1)両方の温度を測定し、ペットボトルを水につける。
2)2分たったら両方の温度を測定する。
3)湯の温度変化を水の温度変化で割り、小数点第2位を四捨五入。
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皆さん、ワイワイガヤガヤ、非常に楽しそうに実験した結果は、次のようになりました。
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1回目、2回目ほとんど変わらないデータを出したグループやかなり違う数値となったグループがありました。

 実験についての前野さんのお話

 「同じグループでもちょっとづつ数値が違うのが、実験の面白いところです。実験は、上手にやれば良いデータが得られますし、雑にやれば雑なデータしか得られません。ですから、うまくいかなかったと思ったらもう一度やり直すと良いのです。今回の実験の、答えは、4が正解です。種明かしをすると、これは実は実験をしなくても、水(400ml)と湯(100ml)の容量比が4であることから分かるのですが、この実験で大事な事は、ペットボトルで遮られている湯から水の方へ流れ出たものが熱で、この状態を決めているのが温度だと云うことです。この熱と温度の違いを皆さんは自分なりに理解して頂きたいのです。」

 最後に、石狩であい風がおきる状況のスライドを見て、今日の講座は終了しました。
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 あい風についての分かりやすい説明を聞き、熱と温度の違いを理解する実験を行って、大変興味深かった講座でした。受講者の皆さんは、それこそ"なっとく"して帰られたのではないでしょうか。




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