1月23日(水)講座13『科学は面白い!実験でなっとく』の第2回「転がるのと滑るのとどちらが速い?」を"学び交流センター"で行いました。講師は、実験物理学がご専門で北海道大学名誉教授の宮台 朝直(みやだい ともなお)さん、受講者は、26人でした。
宮台さんは、資料についての説明をされた後「今日おいでの皆さんの中で、理科系の方はどのくらいいらっしゃいますか?と尋ねられ、あら、少ないですねえ、それでは、文系の方にもお分かり頂けるような説明に努めましょう。」と言ってお話を始められました。
以下は、お話の概要です。
1)ガリレオについて
秀吉や家康と同時代の人であるガリレオは、軽いものも重いものも同じ速さで落ちると云う「落体の法則」を発見した。また、天体望遠鏡を作り、月面の凹凸や木星の衛星を発見、さらに太陽の黒点を発見した。彼以前には、頭の中で考えるだけで説明されていた事柄を実験により実証した最初の人。地球が動くことを唱えて宗教裁判にかけられた。
2)本日の実験を行う前に、まず問題が出されました。
◇問題:ここに二つの「円柱」試料があり、外見は全く同じ形・大きさ・重さである。一方は金製で他方はアルミ製であるが、それを壊さずに見分けるにはどうすればよいか?
答えは、実験を終えた後に説明。
3)自然落下運動の実験
金属ネジと羽根を落とす実験。
大気中で落下させると、金属ネジが早く落ちるが、真空では同時に落ちることを実験。
4)斜面上の運動の実験
①滑り落ちる運動(落体の法則)
重さの違う2台の台車による実験―同時に落ちた。
②転がり落ちる運動
a.重さ大きさの違う2つの球では―同時に落ちた(ガリレオが行った実験)。
b.重さ大きさの違う2つの円柱では―同時に落ちた。
c.重さ大きさの違う2つの円筒では―同時に落ちるはずであるが、実験では多少誤差が出た。「実験に誤差はつきもので、それをどう考えるかが、重要なのです。」と宮台さん。
③球と台車の速さを比べる―転がると滑るを比べる
球の方が台車より遅い―即ち、転がる方が滑るより遅い。
④ヨーヨーの実験―転がる方が滑るより遅い理由の説明
回転落下(糸を巻いたヨーヨー)と自由落下(糸を巻かないヨーヨー)を比べると、回転落下の方が遅い。
糸を巻いたヨーヨーに働く力を考えると、
「下向きの力=重力-手が引く力」となり、下向きの力が減じるので、重力のみで落ちる場合より遅くなる。
斜面を転がる場合も、摩擦力が働いて、斜面に平行な重力成分を減じるので、滑る場合より遅くなる。
◇実験の前に出された問題の解答
・形の違うものの転がる速さを比較する実験
結果は、球 > 円柱 > 円筒となった。
このことから、比重の大きい金製のものを比重の小さいアルミ製のものと、同じ形、同じ大きさ、同じ重さにするためには、中をくり抜いた円筒にしなければならないので、転がすと、円筒の金製のものは、円柱のアルミ製のものより遅くなる。
問題の解答は、転がして遅い方が金製、である。
・ガリレオは、球のみで実験をしたので、このような転がる時に形が違うと速さが違うということを、理論づけるためには、ガリレオの死んだ年に生まれたニュートンによるニュートン力学まで待たなければならなかった。
・さらに、真空では重いものも軽いものも同時に落ちる事は、アインシュタインの一般相対性理論でないと説明できない。
こうして、宮台さんのお話は終了しましたが、このように、テーマに沿ったいくつかの実験を見ながらお話を聞いたので、真空では、重いものも軽いものも同時に落ちること、滑る方が転がるより速いこと、形の違う物を転がすと速さが違うこと、などお話だけでは理解が難しかったと思われることも良く納得できた講座でした。