平成25年5月25日(土)講座5『北海道の野菜を学び、つくる』の第1回「北海道の野菜の歴史と現状」を行いました。講師は元北海道花・野菜技術センター場長で現在ホクレン特任技監の塩澤耕二さん、受講者は30名でした。
司会から「今年の春は寒かったが今日畑でカッコウの鳴き声を聞き、いよいよ豆づくりをできるようになった。カッコウは講師の塩澤先生が運んできてくれたのではないでしょうか」との紹介から講座は始まりました。
今回は北海道における野菜生産の歴史と現状について話しをされました。
松前藩時代にはダイコン、カブ、ねぎ等が栽培されたが、明治時代になってから開拓使が西洋野菜を積極的に導入した。西洋野菜は北海道の風土に合っていたため生産量が飛躍的に増加し、今では北海道の野菜生産量は全国一となっている。
さまざまな野菜が北海道に導入された時期や北海道の野菜産出額の推移などについても説明があった。
次に、主要野菜の原産地、北海道への導入時期、品種、栽培面積等について話されました。
◆たまねぎ
原産地:インド北部あるいは中央アジア
北海道への導入時期:1871年(明治4年)に開拓使が札幌官園に導入(日本で始めて)。長期間保存ができ北海道の厳しい環境に適していたため栽培が拡大、現在は北海道全体の野菜生産額の4分の1に当たる500億円をたまねぎが生産している。
品種:クラーク博士の後任のブルックス博士(札幌農学校)が故郷のマサチューセッツ州から導入した「イエロー・グローブ・ダンバー」が始まりで、その後品種改良された「札幌黄」が最も有名。昭和50年代には病気に強いF1品種ができて現在に至っている。
市町村別の栽培面積:北見市、富良野市、訓子府町、岩見沢市、美幌町の順で、ほぼ同じ緯度に位置している。「たまねぎベルト」とも言われているが、日長の影響によって球の肥大が決まるからだと考えられている。
◆かぼちゃ
原産地:中央アメリカ〜南米北部(日本カボチャ)、南米の高原地帯(西洋カボチャ)あるいは北米南部(ペポカボチャ)。日本に最も早く渡来したのは日本カボチャで(17世紀)、カボチャはカンボジアがなまったもの。
北海道への導入時期: 18世紀後半から19世紀前半に渡来し、明治時代に開拓使の奨励で積極的に栽培された。北海道の栽培面積は、戦後の食糧難時代が約20,000㌶で最大であったが、昭和35年頃には約5,000㌶まで減少した。最近は健康志向のためか、約9,000㌶まで増加している。
品種:北海道では「まさかりかぼちゃ」が有名であるが、明治11年札幌農学校で試作された「ハッバード」から派生した品種であると言われている。手稲山口で生産されていた「大浜みやこ」はほくほく感が高い好評な品種であるが、札幌の都市化で栽培面積が激減し、今では手稲と石狩の一部で栽培されている。
市町村別の栽培面積:和寒町、名寄市、美深町、士別市の順で、内陸部の高温になるところが適しているようである。
◆キャベツ
原産地:西欧の沿岸暖地
北海道への導入時期:明治4年に札幌官園で試作され、明治5年に石狩(当別)で伊達移民団によって栽培され良好な結果が得られた。北海道の作付面積の推移をみると大正9年頃が最大で3,500㌶(全国の52%)、現在は1,300㌶までに減っている。
品種:「札幌大球」という品種は重さが8〜10kg、球径50cm位でニシン漬け用として人気があるが、これは明治28年にアメリカから導入された「アーリー・サマー」が原種と言われている。
市町村別の栽培面積:伊達市、恵庭市、和寒町、幕別町、函館市の順である。
◆アスパラガス
原産地:中央・南ヨーロッパ、北アフリカ、西・中央アジアで、自生していた。
北海道への導入時期:日本へは天明以前にオランダから長崎に渡来したが鑑賞用であった。食用は明治4年に渋谷官園で試作、明治6年に札幌官園でホワイトアスパラが栽培された。当時は食べる習慣がなかったため栽培は広がらなかった。
品種:昭和50年頃までは輸出缶詰用のホワイトアスパラが栽培されたが、それ以降はグリーンアスパラが栽培された。昭和50年の栽培面積は5,000㌶、平成23年には1,800㌶まで減少している。
市町村別の栽培面積:名寄市、美瑛町、東神楽町、美唄市の順で比較的内陸部が多い。内陸部では湿度が低くて病気にかかり難い。
◆メロン
原産地:北アフリカ。中央アジア、ヨーロッパを通って中国に「まくわうり」として伝わった。まくわうりは弥生時代に日本に渡来した。
北海道への導入時期:メロンは明治5年にアメリカから導入され(東京官園で試作)、明治6年に北海道に渡来して札幌官園で栽培された。
品種:夕張メロンは、昭和36年に栽培農家が「スパイシー」と「アールスフェブリット」のF1品種化に成功してできた(「夕張キング」と命名)。平成2年に販売額40億円を突破したが、現在は30億円前後となっている。
市町村別の栽培面積:夕張市、共和町、富良野市、中富良野町の順で、比較的内陸部が多い。昼夜の温度差が大きい内陸部の方が甘いメロンができる。
◆食用ゆり(ゆりね)
原産地:日本と中国を含む東アジア。日本ではかなり古くから山ゆりが食用とされており、藤原京時代に祭事に利用されたとの記録がある。栽培面積は200㌶前後で推移し、北海道から全国に供給されていた。平成23年には100㌶までに減った。
市町村別の栽培面積:真狩村、富良野市、ニセコ町、芽室町の順である。
明治44年(1911年)の北海道庁統計書を使って当時の野菜の作付け面積についても説明があったが、最後に北海道の野菜農業の現状について話されました。
・平成23年の北海道農業産出額は10,137億円、そのうち野菜は1,903億円で約19%を占めており、最近は増加傾向にある。米は意外に少なく、約13%のシェアしかない(日本全体では野菜は28%、米は19%)。
・品目別の生産額を順に並べると、たまねぎ(23%)、トマト(9%)、にんじん(9%)、やまいも(6%)、メロン(6%)、だいこん(6%)などである。
・都道府県別の野菜産出額をみると、北海道がトップであり、千葉、茨城、熊本などがこれに続く。
・品目別の栽培面積で北海道が全国1位であるのは、だいこん、にんじん、ばれしょ、アスパラガス、ブロッコリー、かぼちゃ、スイートコーンおよび食用ゆりである。全国2位となっているのは、ながいも、トマト、さやいんげん及びメロンである。
家庭菜園を続けている人間にとって今回の講座は野菜の歴史や現状を知る良い機会でした。受講者からも「とてもわかりやすいお話しでした。また次回楽しみにしています」との感想がありました。