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講座7 『地質・地震学から学ぶ北海道の災害史』

第3回 「日本海の地震と津波」

2013/10/10

10月5日(土)主催講座7「地質・地震学から学ぶ北海道の災害史」の第3回「日本海の地震と津波」の講座を行いました。
講師は北海道大学大学院理学研究院・地震火山研究観測センター准教授の高橋浩晃さんです。受講者は61名でした。今回はロシアの色丹・国後・サハリンからビザなし交流を利用して防災関係の研究者6名が受講されました。
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最初に今の時代、科学的には何でも解決できると思われ気味だが、科学の世界では良く解らないこと,解っていないことがたくさんあります。そのように解らなこと、解っていないことがたくさんある種々の問題を科学者・行政に判断させることが最善の方法なのだろうかと思っています。津波、地震対策もその中の一つです。我々はこの問題に対して研究は進めているが解らないことが多いのが実情です。その様な中で我々は防災対策をどのように進めるか判断を迫られるが正解はありません。正解のない中でどのように判断するのが最善なのかを、今後考えていかなければならないと思っています。皆さんがこれから判断を迫られたとき、科学を含めた知識を持っているかいないかは重要なファクターになります。今日はその判断に必要な科学をも含めた知識を聴いていただければと思いますと話され講座が始まりました。
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3.11震災以降、防災に対する関心は大きく高まったが、2年半たった今急速に低下しつつある。3.11の教訓を未来に対してどのように扱っていくかが問われる。
「災害と歴史と人間」
・地域の歴史に過去の災害は刻まれている。
理想はそれを知り生かすことであるが、実際にはそれを実行するのは難しい
・人間は忘れやすい動物である
特に嫌なことは忘れたい
・防災を言っても効果は薄い
災害は嫌なもの、嫌なものは目を瞑る

災害は地域の歴史のなかに刻まれている例として
石狩の弁天歴史通りに移設されている旧長野商店は明治10年(1877)代に建築された可能性がたかい木骨石造建築であるが、石造建築は地震に弱く震度6以上では崩壊する。現在残存していることは石狩においては少なくとも約130年程震度6以上の地震がなかったことを示している。
また松前藩の"天保雑記"によると1834年にイシカリに強い地震があったことが書かれています。石狩にもM6.5以上の内陸地震があったことを認識してください。

今日の話の流れとして
地震とは何か
日本海の地震と津波
石狩直下の地震
被害を減らすために
以上4項目を中心に関連づけて話を進めていきたいと話され、

まず、心しておかなければならないこと
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地震とは何か
人々が一番恐れるものは地震です。それは予測が出来ないからです。北海道で起きる地震の予知はできません。しかし地震が起こったら何が起きるかは事前に大体予測ができます。事前に備えることで被害を軽減することができます。
地震の起る間隔と人の一生は隔たりが大きすぎる、"この数十年地震がなかった"それはたまたまだっただけです。日本全国どこでも地震は必ず起こります。何時かは解らないが必ず来ます。
岩に力をかけていくと耐えきれなくなってずれる。これが地震です。壊れた割れ目が「断層」です。断層が地表に現れたものが活断層です。
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岩盤がぐいぐい押されて、耐えきれなくなって断層面がずれる。岩盤がずれるとギギギッと地震波が発生する。これが地震の揺れに当たります。
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地震情報では震源は点で表示されるが、地震は断層面という面がずれることにより発生します。

地震のマグニチュード(大きさ)= 断層面の広さ(面積)である。
表からもわかるようにマグニチュードが1違うとエネルギーは32倍違う。
マグニチュードが2違うとエネルギーは1024倍の大きさになる。十勝沖でマグニチュード9の地震が起きれば、北海道を覆う断層面のずれ(面積)が生じます。
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地震予知は難しい。なぜなら断層は深くにあり地震を起こすメカニズムを直接調べられない。東北沖地震は深さ24kmで発生したが、人類が掘った最も深い穴は12kmです。技術的な面の他に掘削コストの面でも難しい問題があります。
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日本海の地震と津波
日本周辺で発生する地震の震源は、太平洋側では千島沖から南西諸島まで列島沿いどこでも震源域であり、日本海側においても新潟から北海道、サハリンにかけて地震が発生する震源域あます。また日本国内内陸にも活断層がたくさん存在しています。
日本は世界でも稀にみる多くのプレート境界が衝突している地域です。
日本海側におけるここ70年程例にとると1940年に積丹半島沖、1964年新潟
1983年日本海中部、1993年北海道南西沖、2004年新潟県中越地震が起きています。積丹半島以北に地震の空白域があり200~300年地震が起きていないので注意が必要です。
これらの一連の地震について考えるとロシアのバイカル湖から中国東北部、日本海にまたがるアムールプレートが在るのではないかと考えています。日本海側からアムールプレートが押し太平洋側から太平洋プレートに押され北海道はプレートがせめぎ合う場所になっており地震の起きやすい場所になっている。
ロシア沿海州との間でGPS機能を使い北海道との間の距離の変化を計測している。距離の縮みは地震の原因である「ひずみ」が溜まっていることを示します。計測の結果1年当たりの収束速度は稚内付近では1.3㎝/yr、積丹付近では1.5㎝/yr、松前付近では1.7㎝/yrとなっている。
1993年北海道南西沖地震の岩盤のずれは約4~5m位、これを年間の収束速度1.5㎝で割ると300年弱となり、これが、地震の繰り返し周期の目安となります。
平均的には。アムールプレートは年間1㎝、太平洋プレートで年間10㎝のひずみを起こしています。
日本海沿岸はプレートの境界にあり、ひずみの集中帯になっています。震源が海底ならば津波も起きる。津波災害に備えるには、想定にとらわれないで、想定以上の津波が来ることも十分あり得ることを認識する必要があります。
東日本大震災では400km×200kmの巨大な断層が最大50mずれ津波を引き起こしました。津波は地震で海底が隆起沈降することで海水を押上げ発生しますが、東日本大震災では8m位海底が隆起し大津波を引き起こしました。
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津波の速さはⅤ(速度)=√gh (g:重力加速度、h:海の深さ)で表されます。
海が深いと早くなり、浅くなると遅くなる。速度が遅くなると後ろの波が追いつき波が一段と高くなる。ちなみに、水深5000mでは時速800km、500mでは時速250km、50mでは時速80km、10mでは時速36kmの速さで進みます。
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東北地方の太平洋側は過去何度も壊滅的な津波被害を被ってきた歴史があるにもかかわらず2011年の東日本大震災で19553人の死者を出しました。今回の津波は決して「想定外」ではありません。1975年の学術論文にも慶長三陸大津波(1611年)の津波の高さについて書かれており、1995年発行本にも1611年に仙台平野が津波による壊滅的被害を受けたことを述べている。また古文書(日本三代実録)に869年貞観津波の記述があります。
先人や自然が残してくれた記録を認識し、それに現代の知見をくわえて対策をとること、過去に起こったことは将来必ず繰り返えします。

北海道で津波の証拠を探すには津波堆積物を探す必要があります。津波堆積物は津波によって海の砂が内陸に運ばれ堆積されている状況です。
北海道の太平洋沿岸調査では巨大な20mを超える津波が6500年間に15回起きており、400~500年間隔で周期的に繰り返し来ていたことが明らかになりました。最後の津波は400年前に来たことがわかっていますので、既に400年が経過しており切迫性が高い状態にあります。
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日本海側においても南西沖地震から20年たつが、昨年から道庁が見直しを始めました。道総研地質研究所の調査では南西沖地震津波を上回る津波が起きていた可能性があることが分かってきています。
日本海側の想定震源域としては現在空白域になっている北海道北西沖、1940年の西方沖、1993年の南西沖、1983年の青森県西方沖があり、マグニチュード7.8程度が想定されています。繰り返し期間は数百年以上と考えています。

石狩直下の地震
石狩湾の過去の地震と津波
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石狩湾沖合いは海底活断層とみられる丘と窪みがみられ、細かい地震が起きておりエネルギーが溜まっていることを示しています。
H21年の北海道の想定断層の滑り量による石狩市の津波浸水予想が石狩市HPに載っているので参考にしていただきたい。今後道の見直しにあわせて修正されていきます。

日本海側の津波の注意点
強くて長く続く地震を感じたら一刻も早く高い場所に逃げることが大切である。
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札幌周辺は伏在活断層(活断層が地下に埋もれている状態)のため、国の調査が入っていないのが現状です。内陸直下型地震の発生履歴を調べるには、液状化履歴の調査が有効です。調査によると札幌北部では2000年に3回の大きな液状化がみられる(震度6以上の揺れ)。過去150年程度の札幌周辺での地震発生状況を見ると15年に1回の割で有感地震が発生している。最大の揺れは1834年の震度6以上があります。この地震は石狩中北部の伏在活断層におる直下型地震と考えられています。
札幌北部の推定伏在活断層として西札幌断層―月寒断層―野幌丘陵断層帯が東西から押され、月寒の丘―野幌の丘を形成しています。また望来の丘も12万年前以降に40~50m隆起しています。札幌直下の西札幌断層地震の震度予測では、西区・北区・東区で震度7、広範囲で震度6強の激しい揺れが予想されます。
また石狩南部でも同様の揺れが予想されます。
液状化についても北区・東区・石狩南部の広範囲で液状化の可能性があります。
石狩花川地区は地震でよく揺れる地盤になっている(1.4~2.5倍)。

被害を減らすために
地震の揺れ対策には2つ必要です「生き残る」と「生き長らえる」です。
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阪神淡路大震災における死因の83.7%は家具、家屋による圧死、窒息死です。
家屋倒壊、家具転倒に対策が必要です。石狩市では木造住宅耐震診断補助事業として昭和56年度以前に建築された建物に補助金を出しています。耐震診断を受け自分の家の強さを知ることも大切です。

いざ被災したら、
・避難所の食事などの公的補助はある。
・自力復旧が大原則(私有財産に公的援助はできない仕組み)
・自然災害でも行政は金銭的な援助はできない
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と話され,講座を終わりました。
受講後皆さんからの感想は大変参考になった。特に3回目は身近な日本海、石狩について絞った内容でよかった。解りやすい内容で理解できた。改めて地震の恐ろしさを知った対策を講じたい。地質研も含めた講座構成が良かった。等
受講者の皆さんからの評価も高かったようです。





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