4月23日、講座1『ネルソン・マンデラが夢みたアフリカ大陸』の第2回「アフリカはアフリカのリズムで未来を拓く」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、当別町長の宮司正毅さん、受講者は当別町や札幌からの参加者も含めて93名でした。
宮司さんは先ず、27年間も投獄されていたマンデラが恨みなど抱かず白人も含めて皆で国を作ろうと言ったこと、南アフリカを奇跡的に発展させたマンデラはリーダーとしても人格的にも最も優れた人であったこと、またお孫さんを2年間預かった個人的な体験など前回をふり返ってからお話を始められました。
□アフリカは、54カ国で人口10億、GDPは全世界の2.8%。
□アフリカの自律
・NEPAD
国際社会の援助に従属するのではなく、アフリカ自身の責任において貧困撲滅、持続可能な成長と開発、世界経済への統合を目指す。また国際社会にはアフリカの自助努力(オーナーシップ)を補完する形での支援(パートナーシップ)を求める。ムベキ南アフリカ共和国大統領が提唱、2001年に採択。
・AU(African Union)
アフリカ人自身の手で、政治的、経済的統合を図り、アフリカ人に平和と安心をもたらすことを目的とする。
・TICAD
アフリカの開発をテーマに、日本が国連や世界銀行などと共催する、アフリカ開発推進のための国際会議。93年から5年ごとに開催。
□アフリカ合衆国構想
現在はGDPは低いが、人口は多く面積も広い。
歴史的な負の遺産、国内紛争、多様性に富む地域、など克服すべき課題も多い。
追い風としては、AUやNEPADの創設など。
□アフリカが今求めているものは
求めるものが、従来の「人間の安全保障(学校、橋、道路などの建設)」を核とする援助から「経済発展」を核とする援助へと変わって来ている。
ODAを民間プロジェクトにリンクさせる官民連携による投資が必要だが、日本企業の理解度はいまひとつである。
□アフリカへの投資を今
鉱物資源、食料、水、エネルギーなどの将来的確保のためには、今、アフリカへの投資が必要。
求められている時にやらないと見捨てられてしまう。
中国が進出しているが、方法に問題もある。ただ、中国の判断スピードは早く日本は遅い。
□アフリカでの投資プロジェクトへの提言
①アフリカへの提言
・自国のチャームポイントの見極め
・プロジェクト実現のための制度作りと運用の柔軟さ
・政府自らの参画
・先ず、自国の利益(私益)を考える→次に隣りの利益(他益)→最後に公の利益(公益)
②民間企業への提言
・通常のF/S(実行可能性調査)で判断すれば、No.となる→何をすればプロジェクトが可能になるのかを問う姿勢が必要
・生産コスト低減を目指しネゴる(粘り強く交渉)
・単なる投資では駄目、経営に参加できるシェアー(25%以上)を取得する
③官への提言
・政府自らの投資
・ODAのリンクによるプロジェクトコスト低減
・円やドルで貸さないで、リスクはあっても相手国の通貨で貸す
□成功したプロジェクトの紹介"MOZAL"(モザンビークのアルミ地金製錬製造会社)
・従業員:約1,100人(95%がモザンビーク人)
・総事業費:約2,300億円
・主原料
電力は南アフリカより。アルミナはオーストラリアから。
・MOZALの効用
①1996年、GDP2.9兆米ドル(180米ドル/一人)→2012年、GDP14.2兆米ドル(634米ドル/一人)
②社会貢献
2001年に発足したMCDT(モザール地域発展基金)は、小学校7校、中学校1校、工業高校1校、トレーニングセンター、スポーツランド、病院、クリニック等などをコミュニティーに提供した。
・このプロジェクトの成功には、マンデラ効果(マンデラが、事故で死亡したモザンビーク大統領の夫人グラサと結婚したことにより、各国がモザンビークを援助するようになった)もあった。
□どうしてモザンビークだったのか
将来、アフリカ全土の電力を賄えるような巨大ダム(カホラ・バッサ・ダム)ができる予定だったから。
□これからのプロジェクトへの提言
民間だけでは難しく、官民パートナーシップ(Public―Private Partnership)方式が望ましい。
本日のお話はこのように、アフリカが自律できるようになった経過や現在アフリカが求めるもの、プロジェクトを成功させるための宮司さんの体験に基づく提言、プロジェクトの成功例など多岐にわたるものでした。
宮司さんは「我が運命を決めるのは我なり、我が魂を征するのは我なり」「運命の支配者も、魂の指揮官も、誰でもなく自分自身である」と云うネルソン・マンデラの言葉を結びとして本日のお話を終えられました。
2回のお話を聴いた受講生からは,たくさんのコメントが寄せられました。そのすべてはとてもご紹介できませんので、ごく一部だけを列挙いたします。
「南アフリカは遠い存在と考えていましたが、宮司さんの講義を聞いて近い存在になりました」
「アフリカから世界が分かる貴重なお話でした。経済、技術、政治力、バランスが大事なのですね。マンデラさんの人としての大きさに感動しました」
「マンデラさんのことをよく知りたかったので、高齢であるが故に知らなければ恥と思い参加しました。更にすべてに意欲が増してきました」
「私は近年人間関係で嫌な思いをしていましたが、この講座に出て、ネルソン・マンデラのような広い心の人間になりたいと思うようになった。1ミリでも人間的に成長していきたい。私の生き方の方向を決めてくれた講座となった」
「第1回目の講座を受講した人から勧められて参加した。とても良かった。アフリカという括りで活動していらした宮司町長のお話はとても感動した。地域活性化についてもMOZALプロジェクトからとてもヒントになるものでした」「"アフリカはアフリカのリズムで未来を拓く"と云う副題は考えさせられるタイトルです」
「ネルソン・マンデラさんの不屈の精神に学びたい。融和精神に基づき、汝の敵を愛する精神を実行した稀有な人、政策的に人間愛を基本に先人の良い所を執り悪い所に眼をつむれる偉大な人と思い尊敬の念大なるものがあります」