5月22日（木）講座3『田中實さんが語るとっておきの話～石狩海浜地区のうつりかわり～』の第2回 「石狩海浜の自然保護と石狩臨海地域の開発」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、石狩市郷土研究会顧問の田中實さん、受講者は54名でした。
田中さんは最初に、受講者の多くが住む花畔団地（花川団地）の環境について触れられました。
団地内には、先人が守ってきた他の街にはない整備された防風林があり、ふたつの大きな公園もあって緑地率が高い。また、独自に車の乗り入れを規制する街づくりが行われた（市内他地区との釣り合いの面から批判もあった）
次に、現在とは大分情景の違う昭和40年代の石狩灯台の航空写真が披露されました。
さらに、25年間海浜植物保護に尽力され、自然環境功労者に贈られる環境大臣表彰を今月16日に受けられた阿部義孝氏の功績を紹介されました。
その後、石狩臨海地域の開発に関わる本論に入りました。
□石狩湾新港について
・新港の建設は、当時人口19万の大都市で銭函副港実現を目指す小樽市と人口わずか8,000人の石狩町とのせめぎあいであった。
・昭和45年、町村北海道知事と小樽市、石狩町の首長会談で、「新港は石狩町域での建設を原則とする」「港湾管理は、小樽市、石狩町、北海道の三者管理とする」「小樽市が港湾管理者となるために、石狩町は大字樽川村の一部を小樽市に割譲する」事が合意された。
・明治15年開村以来の歴史ある樽川村の割譲については、住民感情を納得させる事が大きな課題であった。一方、銭函副港実現を目指す小樽市にとっても石狩町での新港建設は隣接する小樽港の死活問題であり、町、市それぞれの意見統一は困難を極めた。
・編入予定地は、面積875万㎡、住民69世帯、314人。域内には小中学校、神社、消防施設、墓地もあった。
・行政区域の変更は、住民が石狩町域に移転完了後に変更を行うべきとする農漁業者の要望や漁業補償問題があり大幅に遅延した。
・昭和50年4月15日、北海道知事、小樽市、石狩市各首長による合意から5年を経てようやく境界変更が施行された。
□石狩海浜の環境保全、自然保護
・昭和47年3月、石狩湾新港地域開発計画委員会（ 委員長・小川譲二≪北海学園大学理事長≫）が「石狩湾新港地域開発計画調査報告書」を知事に答申。
石狩海浜地区を近接した札幌市の周辺緑地及び海浜レクリエーション地域と位置付けて、人間優先の開発、公害のない都市型工業を目指すと共に生活福祉対策の必要性を提言した。
・昭和51年6月、北海道は「石狩湾新港地域に係る環境保全について」をまとめた。
石狩湾新港地域開発計画の熟度に応じて、大気、水質、気象等に関する調査を計画的に実施し、企業等が立地するまでに必要な補完又は見直しを行うとした。
・昭和39年から平成9年まで、石狩町、通産省、開発局、北海道、石狩湾新港管理組合による石狩海浜地域植生調査が延11回ほど行われた。
・石狩海浜地区の自然保護に係る出来ごと
昭和23年～昭和37年頃 石狩町海浜砂防林事業。
昭和35年 本町市街地の地先砂丘のハマナス（花）の採取（香水の原料）を禁止。
昭和53年 灯台から石狩川河口までの約17haを海浜植物等保護地区に指定。
平成12年 石狩市環境基本条例制定、石狩浜海浜植物保護センター開設。
□石狩海浜地区の活用
・昭和42年 石狩海水浴場区域に、石狩観光開発（株）による石狩国際モビレージが開設（この年の海水浴場入込数は103万3000人）
・昭和49年 石狩海水浴場入込数28万人
・石狩海濱ホテル
昭和12年竣工（内部造作未完、設計 田上義也）、昭和19年道庁の第二健民修練所として使用、昭和20年米機の空襲により全焼。
本日は以上のようなお話でしたが、石狩湾新港については実際に開設に係る業務に従事された中での秘話などを交えて大変興味深いものでした。また、海浜地区ばかりでなく石狩市全体の自然保護についての目配りにも感心させられました。
次回は、少し角度を変えて、石狩海浜に魅せられた文化人についてのお話ですが、どんなお話を聞けるのか楽しみです。
