平成26年7月15日(火)に講座7『さっぽろアート散歩』の第2回「鑑賞~道立近代美術館・三岸好太郎美術館・知事公館~」を行いました。48名の受講者が参加して、北海道立近代美術館、三岸好太郎美術館および知事公館を訪ね、心豊かな「アート散歩」を楽しみました。好天に恵まれましたが、30度近い暑さには少々閉口した一日でした。
石狩市のバスで9時10分に公民館を出発、10時頃北海道立近代美術館に到着しました。そこで11時45分まで徳川美術館展を鑑賞、本講座第1回の土岐講師による「見どころ」解説を思い出しながら、駿府御分物の国宝太刀や国宝「源氏物語絵巻 竹河(一)」、国宝「初音蒔絵旅眉作箱」および数多くの尾張徳川家の至宝を鑑賞しました。華麗で贅を尽くした美術品の数々と歴史の重さに圧倒され、至福の時を過ごしました。
なお、徳川美術館展の内容についてはホームページのトピックス記事(2014/07/13アップ記事)をご覧下さい。
(下記のURLをクリックすると見る事ができます)
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昼食後13時15分から北海道立三岸好太郎美術館を訪れ、同館で開催されていた「チャレンジの人・三岸好太郎~31年の生涯」を約45分間、2グループに分かれて館の方から説明を聞きながら鑑賞しました。最初に同館と三岸好太郎について説明がありました。同館は、三岸節子ら遺族が220点の三岸好太郎作品を北海道に寄贈したのを契機として、1967年に北海道立美術館・三岸好太郎記念室として発足しました。10年後に現在の館名となり、1983年に三岸好太郎のアトリエのイメージを取り入れた新館を現在地に建設して移転し、現在に至っています。
三岸好太郎は1903年(明治36年)札幌で生まれましたが本籍は旧厚田村で、小説家子母沢寛は異父兄に当たります。札幌第1中学(現在の札幌南高)で油絵に興味をもち、美術クラブ霞会に所属して研鑽を積みました。31歳の若さで世を去りましたが、大正から昭和初期の日本近代洋画史に鮮やかな光彩を放ちました。
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以下にいくつかの絵を紹介します。昭和6年作の「猫」、ブーツをはいて腕を組んだ不敵な態度ともみえる猫が描かれています。単に猫のマスクをかぶった人間なのか、おとぎ話を擬人化した猫なのか、謎とのことでした。この絵をもとに三岸好太郎の孫の「三岸太郎」が平成24年に制作した立体が、美術館受付カウンターに置かれています。
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23歳の時に訪れた上海・フランス租界を描いたのが「上海風景」です。プラタナスの並木の奥に洋風の邸宅が見え、念願のパリに行くことができなかった三岸にとって西欧の雰囲気を感じながら描いたのであろうと思われます。
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29歳の時に描いた「道化役者」は、現存する三岸の絵の中では最も大きい。高く張られた綱の上でバランスをとっている道化が描かれています。
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「花ト蝶」は昭和7年に札幌の豊平館で開催した個展で出品した作品です。華麗な花束のそばに蝶が描かれており、後に蝶と貝殻シリーズを描く先駆けとなった作品です。この絵は北大に所蔵されていましたが、学園紛争の時に損傷を危惧した学生が道立美術館まで運び出し、後に美術館に寄贈されたという経緯をもつ絵です。
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技法的に面白い絵として、画面をひっかいて描いた「オーケストラ」があります。よく見ると、舞台を思わせる楕円形の中央下部に指揮者、その横にはヴァイオリン奏者、上部に管楽器を演奏すると思われる奏者などが、ひっかき線で描かれています。
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小規模ながら趣のある三岸好太郎美術館を後にして、隣接する知事公館を訪問しました。知事公館では、2グループに分かれて職員からの説明を受けながら館内を案内していただきました。知事公館の敷地一帯は明治維新後に旧鶴岡藩士族が開墾した場所で、桑苗を植えて桑園を経営していた跡とのことでした。現在も知事公館の北側地区は「桑園」(そうえん)という地名で呼ばれており、敷地内には「桑園碑」が残されています。昭和11年に三井合名会社が敷地内に鉄筋コンクリート木造2階建ての「三井別邸新館」を建設し、三井クラブとして使用していました。戦後一時米軍に接収されていましたが、昭和27年に札幌市、昭和28年には道の所有となり、昭和28年から55年には知事が居住していました。現在は「知事公館」として知事が来客との面談等に使用していますが、公務がない時には一般に開放されています。緑豊かで広々とした庭園は道民の憩いの場として親しまれており、今回の訪問時にもお母さんと子どもが芝生の上でゆったりと過ごしている姿を見かけました。
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説明を聞いた1階応接室には留辺蘂町でカラマツの間伐材を使ってつくられた応接セットが置かれており、現在公務で最も使用されている部屋です。1階食堂には安田侃の「妙夢」が置かれており、天皇陛下が平成23年に来札した時にはこの部屋で昼食を取られたとのことでした。2階には、天井板を貼らずに合掌の梁材をあらわにした構造の応接室、昭和天皇・皇后陛下が滞在時に休まれた寝室、外国使節団の表敬など大人数の公務に使用される大会議室などがありました。大会議室入口横の壁には「女官(にょかん)」と「内舎人(うどねり)」の呼び出しボタンが残されており、古い歴史と格式を感じさせる部屋でした。
なお、知事公館の建物は公務がない限り1年を通して午前9時~午後5時、庭園は4月29日~11月30日の期間、午前8時45分~午後5時30分に公開されています。皆さんも是非一度訪ねてみて下さい。
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今日は非常に心豊かな一日を過ごすことができました。受講者の皆さんから多くの感想や意見をいただきましたが、いくつかを以下に紹介します。
・徳川美術館展はあと1時間くらい、欲しかった。
・外出することがなくなっていたので楽しかったです。講座後、なつかしく源氏物語を読み直しています。良い機会を与えて下さり有難うございました。
・国宝級の物を見て、歴史の中にひと時身をおき、素晴らしい体験をさせていただきました。これだけ貴重な物を見るには少し時間が足りませんが、連れていってもらえたのは本当に幸せなことと思います。
・今回の講座のメインは徳川美術館展のはずである。この美術展をじっくり見るには約1時間半では短い。人が多いなか、ゆっくり見たいはず。もっと検討する必要があったはず。この講座は観光でないはずである。見学場所が多すぎる。しぼるべき。
・いつも車で通り過ぎていて、知事公館に入館してとてもよかったです。また機会があれば行ってみたいです。徳川美術館も、また日をあらためて行ってみます。
・一度訪れてみたいと思っていた三岸美術館と普段訪れることはない知事公館など、盛りたくさんの講座で満足しました。徳川美術館展は当時のすばらしさが良くわかりました。
・札幌圏には文学館、市民ギャラリー、芸術の森など、まだまだ沢山の勉強する所があり、来年も計画して欲しい。特に、説明付きだと尚良い。
・今回のように大型イベント展示などがありましたら、タイムリーに企画募集して欲しい。今日の企画は素晴らしかった。ありがとうございました。
・これからも美術、文化関係の魅力ある講座を期待しています。有意義な一日でした。ありがとうございました。
・これからも音楽(クラシックも含めて)や芸術関係の講座の開催を希望します。