8月6日(水)講座8「石狩湾新港の最先端技術を学ぶ」の第2回「北海道ガスLNG基地見学」及び「超電導直流送電実験施設見学」を行いました。
石狩市公民館よりバスに乗車し9時5分に出発しました。受講者は47名でした。
本日の日程についていしかり市民カレッジの運営委員から説明がありました。
まず、最初に北海道ガスLNG基地を見学するとのことでした。
石狩湾新港は石油コンビナート地域に指定され、LPG(白い大きな球形タンク)を備蓄し、全道にも配送している。この他に石油関係の備蓄(ガソリン、灯油、軽油)の空色のタンクがあり、全道に配送されている。LNGも含めて石狩湾新港は全道のエネルギー基地とも言える。苫小牧方面のエネルギー基地が震災などで機能しなくなった場合、札幌圏を中心としたエネルギーの代替え地として十分機能するとのことでした。
9時15分、北海道ガスLNG基地管理棟に到着、3Fのオリエンテーションルームで解説員の関さんより、本日の見学の流れについてお話しがありました。図1はLNG基地の解説員の関さんです。
①映像により紹介
②バスに乗車し構内見学
③LNGを使った冷熱実験
④コントロールセンターの見学
⑤PRセンターで省エネについて解説
では、映像紹介の中から、いくつか紹介したいと思います。
◇今、エネルギーに求められるものは何か
それは、環境に優しいこと、安定して供給されることでその答えの1つが現在天然ガスだと言うことです。
その天然ガスを外国から受け入れて全道の各都市へ安定供給ができ北海道で唯一大型エネルギー基地がここのLNG基地です。
天然ガスは地下数千mのメタンを主成分とする化石燃料の1つで、燃やしたときに出るCO2の量は石炭や石油に比べて4割少なく、大気汚染の原因となる窒素酸化物も少なく、硫黄酸化物は発生しないと言うことでした。
下の図2は、石炭を100とした排出量の比較です。
また、図3のように天然ガスは、輸入のほとんどが中東に頼っている石油と違いロシヤやオーストラリアなど世界各国から輸入している。
さらに、新しい天然ガス資源があるシェールガスが採れるようになり、埋蔵量も数百年とも推定され今後もより安定した供給ができる可能性があると期待されているそうです。
◇天然ガスをどのようにして大量に輸入しているか
北海道ガスは外国から天然ガスを受け入れるためにこのLNG基地を建設し、2012年11月から運転を開始したそうである。
運搬には天然ガスの性質を利用しています。天然ガスは無色無臭の気体で、-162℃まで冷やすと液体になり、体積は600分の1になる。
したがって、LNGを運ぶときは液体にして運ぶそうで、大型タンカー(全長300m)には8万Kℓ、一般家庭40万軒の1年分に相当するガスを貯めることができるそうである。
◇天然ガスはどのように使われているか
LNG基地ではLNGで都市ガスを製造している。
タンクのLNGをポンプで気化器に流し、40~50℃に温めて気体の天然ガスに戻す。戻した気体にプロパンガス(LPG)を加えて熱量を一定に調整し、更にできあがった気体に事故防止のため独特な臭いを付けてあるそうです。図4は基地の中にあるLPGタンクです。
都市ガスは、一般家庭だけでなく大型施設(学校、公共施設、商業施設、工場など)、ロードヒーティング、発電などにも使われているようです。
バスに乗車し構内を関さんに案内していただきました。下の図5は、LNG基地の全景です。
基地の敷地面積は10万㎡で札幌ドーム2個分あるそうで、北海道ガスのCMでもこのLNGタンクにクジラの映像を映し出したものがあるそうです。
まず、最初に説明があったのは図6のように、4本の高いパイプ(アイドリンクアーム)があるところで外航船バースと言い海外からのタンカーが着く桟橋でした。
サハリンからは1日、オーストリアからは11日かけてやってきて、1船あたりLNGタンクに移すのに15時間程度掛かるようです。図7は、LNG1号タンクです。
LNG1号タンクの大きさは、高さ54m、幅83mで容量は18万Kℓある。今、2号タンクを建設中で、容量は20万Kℓで2016年の秋に完成予定です。
次にLNGタンクの構造について説明がありました。周りのコンクリート部分は万一何かあってもLNGが外に漏れ出さないようにするための壁のようなもので、内側は特殊なマホービンのような二重構造になっていて特殊な金属で出来ているそうである。全体として、震度7ぐらいの地震に耐えられるとのことでした。
続いて、ローリー出荷場を見学しました。タンクローリー車は長さが16.5mで最大積載量は14tで、一般家庭650軒の1ヶ月分だそうである。
図8のLNG気化器について、説明がありました。この基地では1日に70万㎥のガスを製造していて、一般家庭2万5千軒の1ヶ月の使用量に相当するそうです。前述の通り更に臭いとLPGを加えて都市ガスが造られます。
図9が臭いを付ける付臭設備です。臭いが外に漏れないように三重のドアになっているそうです。
基地で造られた都市ガスはパイプで札幌近郊に送られています。下の図10は都市ガスの製造工程をまとめたものです。
構内の見学が終わり、バスから降車し、管理棟前でLNGの冷熱実験を見ました。
実験はLNG基地の久保さんにやって頂きました。
まず、LNGの液体は採れた産地で冷やして液体にしたもので3つ特徴があるとのことでした。
①冷やして液体になる際に不純物が取り除かれるので非常に透明で綺麗な液体でクリーンなエネルギー。
②液体にすると体積は600分の1になるので大量に輸送できる。
③簡単に液体がガスに戻るので空気や海を汚すことなく熱量も高いエネルギー。
では、3つの実験を簡単に紹介します。
液体のLNGを用意する。図11は、実験1で液体LNGから取り出したカーネーションで実験をする久保さんと受講生です。
実験1.ピンク色のカーネーションを数分間液体のLNGに入れる。
↓
液から取り出し手で握ると花びらはバリバリと音をだてくずれる。
↓
更に少しすると花びらの破片は少し濡れた花びらに戻る。
実験2.ゴムボールを液体のLNGに入れる。
↓
液から取り出し地面に落とすとバーンと音を出して粉々に割れる。
↓
更に、少しするとゴム片は柔らかいゴムに戻る。
※この技術はタイヤやプラスチックの粉砕に利用されている。
実験3.三角フラスコに液体のLNGを入れたものを用意する。
A.フラスコの中に火を入れる→燃えない
B.フラスコの口のところに火を近づける→炎を出して燃える
C.フラスコの中の液体のLNGを地面にまく→一瞬に気化する
※Aの場合、中に全く酸素が無いので火がつかず、Bの場合は口のところに酸素があるので火がついた。
上の図12は、実験3のBでフラスコの中の液体LNG引火すること無く、フラスコの口から外気にふれている部分だけ燃えている。
また、下の図13は、Cの実験で液体のLNGが気化しているのが分かる。
そこで、もし事故が起きた場合と言うことで原油と液体のLNGを比較して説明がありました。
液体が海に流れ出た場合、原油は海を汚染するがLNGは一瞬で気化して上空に上がり汚染しない。また、ローリー車の輸送中に液が地面に流れ出た場合も一瞬にして気化するので原油と違って地面や空気、海などを汚染しないことが分かりました。
実験終了後、管理棟内にあるコントロールセンターを見学しました。
コントロールセンターでは3名が常に勤務していて、三交代制で24時間体制でガスの製造を監視しているとのことでした。
北海道では全国に比べどのくらいのエネルギーが消費されているか説明がありました。
・1世帯あたりでは1.26倍
・1人あたり1.44倍
・1世帯あたりの冷暖房では3倍
エネルギー摂取量では灯油が55%を占め、全国の4倍で暖房に多くのエネルギーを使用しているのが分かりました。
また、多く利用している時間帯は16:00~21:00で、冬は19時頃が最も多いようです。
図の14は、北海道の冬の19時の電力消費量です。
長時間にわたり基地の様子だけでなく、LNGガスの特性や省エネ等についても詳しく説明していただき受講者にも良く理解できたように思います。
次に、北海道ガスさんの基地からバスでさくらインターネットさんの敷地奥に設置された超電導直流送電実験施設に向かい5分程度で現地に到着しました。
現地では、第1回の講師の宇野さんから本日の現地での講師の紹介がありました。
現在地は500mの実証の施設です。そこで、この500mの実証の工事内容について樋口さんに説明していただきました。樋口さんは石狩超電導直流送電システム技術研究組合で工事事務所の所長さんをされています。下の図16は、工事の状況を説明する樋口さんです。
工事の状況について樋口さんより説明がありました。
現在掘ってあるところにケーブルを入れる管を埋設します。500mの実証実験は地上の方が作業もしやすいが、将来道路下の設置を考えて埋設実験にしました。今丁度掘ってある状態なので下の図17のSTEP2というところです。7月上旬から約1ヶ月かけて行いました。マンホール一基と500mの堀込みが完全に出来ています。
一番奥の方に建屋②(機器設置場所②)があり、データーセンターの方に建屋①(機器設置場所①)を建設中です。
これからSTEP3で管を入れていく作業が始まります。管は一本12mのものを溶接して行く。液体窒素を流したり、冷やしたりするために魔法瓶のように、真空にしなければならず、テストを行いながらの配管作業になっている。試験も含めて9月20日を目途に行っているそうです。
9月20日以降になると土木班が戻ってきてケーブルを埋めていき10月上旬には全部終わって建設工事自体は終了します。
その後、埋めた管の中に超電導ケーブルを引き入れ、1週間程度で200mと300mのケーブルの引き入れを終了する。
各端末での処理(太陽光発電機やデーターセンターと超電導ケーブルとの接続など)やマンホールでケーブル同士をつなぐ作業に1~1.5ヶ月で、12月ぐらいを目途に行っているそうです。ケーブルの作業はマンホールのところから両側に進めて行くそうです。
また、工事中の浸水を防ぐため地下4mの深さにたまった水をくみ上げるウェルポイント工法(地下水低下工法)で行っているそうです。
次にケーブルの構造について説明がありました。
以下、その概要です。
ケーブルはさくらインターネットさんのデーターセンターの所にある建屋①(機器設置場所①)と一番奥にある建屋②(機器設置場所②)の間に設け、直線部分には下の図19のような12mに造られた直管ケーブルを溶接して使います。
2つあるコーナーの部分には7mrで曲げた亜鉛メッキをした鋼管を使用しています。
ケーブルの構造は、ケーブルの中に太い青色のパイプと細い緑色のパイプの断熱二重管が入っていて、青いパイプには心線が入り、青いパイプに送り込んだ液体窒素は緑のパイプで循環させ冷やして戻す。
ケーブルの太さは内径25㎝で、二重管はステンレス製で太い青色のパイプが65㎜、細い緑色のパイプが50㎜です。
心線は、導線に紙を巻いて絶縁し、その上にテープ状の超電導物質を二重に巻いたものです。
液体窒素の循環はマンホールを中心に200mと300mで循環させる。
マンホールの大きさは長さ10m、幅2.5m、深さ2.5mで、このマンホールから、それぞれ心線を入れる。
図21は200mパイプの埋設現場です。
第1回の講座で問題点として上がっていたパイプの熱収縮に対しては、各端末の所に収縮を吸収できる装置が設置されているそうです。
この後、図22の建屋①側の工事現場を見学して、実験施設の見学は終了しました。
第2回の講座では解説員の方から液化天然ガスについて詳しい説明があり、輸入の様子、天然ガスの特性、都市ガスの製造方法などについて、受講生の方も十分理解されたように思います。市内の身近な施設も普段は何気なく見ている程度ですが今回の見学で北海道ガス石狩LNG基地の機能がよくお分かりになったと思います。
また、まだ作動はしていませんが超電導直流送電実験施設の見学によって第1回の講座で夢の送電方法と言われたものがより現実に感じたように思います。現場責任者の樋口さんから作業状況を聞き、現場の地道な取り組みもあっての事だとも感じました。
第1回、2回の講座を通して、超電導とはどのようなものか。また、その応用のリニアモーターや直流送電の原理が理解されたように思います。
以下、受講生の方の感想、意見等です。
第1回
・実験もあり理解も深まり良かった(同様意見6件)
・超電導の実証実験が行われている事を初めて知った、原理を知ることが出来た。
・リニアモーターの原理を知り大収穫でした。
・講義と、実験ですべてのなぞが解けました。
・良く知っている技術であるが、直接接するのははじめて、簡単な実験ではあるが、工夫された装置で、感動をおぼえました。
・実験を含め大変有意義であった。交流と直流のなぞが解けた。
・超電導の仕組み、利点を良く理解することができた。
・短い時間に実験も盛り込んでくださったので、全く未知の世界だった超電導が理解できた。
実用に出来るまでに多くの研究があるのだと、積上げの重要性もわかりました。
・超電導は、難しいと思っていましたが、わかり易い話で良かった。実験も面白かった。
第2回
・LNG基地を直接見学が出来、エネルギーの大切さを改めて勉強できた。
・規模の大きさ、ガス供給量の多さすごいものだなー、実験も面白かったです。
・ガスについていろいろわかった。災害とガス基地の関係が少々不安になった。
・市内の大型施設の内容が理解され安心感を生じた。
・座学十施設見学は、理解度を深めることで、大変参考になった。
・ガスのこと非常にわかりやすく説明されていた。
・北ガスLNG基地が、すごくおもしろかった。もっとゆっくり見学したかった。
・大変貴重な施設を見学できて良かった。 LNGの本当の姿が解った。
・液化天然ガスの実験、利用状況が良く理解できた。
・百聞は一見にしかず、規模の大きさ、ガス供給の多さ等すごいものだな一。
・エネルギーの大切さが改めて勉強できました。
・北ガスの見学は、施設内をもう少し見学したかった。
・超電導は、工事途中のものを見ることが出来めったにない機会だった。(同様5件)
・大変勉強になりました、来年もこのような講座が開催されるようお願いします。
・近くに住んでいるのに何も知らないでいました。大変有意義な見学でした。
・普通は、入れない所に入って見学できて良かった。今後のエネルギー政策に 原発に変わるエネルギーとして「ガス」の利用は大浮上するか気になった。