平成27年1月19日(月)まちの先生企画講座4『地図の世界は無限大』の第1回「ところ変われば地図変わる」を石狩市公民館第1研修室で行いました。講師は元社会科の高校教師で、現在いしかり市民カレッジ運営委員の木戸口道彰さんです。受講者は28名でした。
自己紹介の中で講師の木戸口さんは高校で38年間地理を専門に教えていました、また定年後も私立大学で10年ほど地理を教えていたそうです。現在、高校には社会科の科目がなく、地歴科(地理、歴史)、公民科(政経、倫理)にわかれていて、高校には社会科の先生はいないそうです。学校で教える地理は地名、物産地理で暗記が中心になるので生徒には人気がない。初めて子供に地図を渡すとまず自分の住んでいるところに真剣に興味を示し、色々なことにどんどん興味を広げていきます。これが大切で、地図を中心にして話をすることによって地理に関心を持ち、おもしろい、楽しいものであることを子供たちに与えます。そして地理が好きになります。今日はこれから3回にわたり、長年私が付き合ってきた地理の話を中心にお話しをしていきますので、高校生のつもりで聞いていただきたい。と話され講座が始まりました。
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初めにこれから3回の講座予定について概略説明され、受講生の興味をそそりました。
1981年環境庁作成の石狩植物分布図、現存植生図を示され、これは地図らしい地図、正確な地図、真面目な地図であるが、一方 お菓子の包装紙に書かれた日本各地の都市(江戸の町絵図、神戸の地図、京都今昔絵地図、美唄の絵地図等々)の絵地図を示され、またイタリア、フランスのレストランのランチマットに書かれた絵地図など地図にまつわるエピソードを交え説明されました。
そして地図には詩があり、ロマンがあり、夢がある。正確で立派な地図だけでなく、包装紙や紙ナプキンに書かれた地図も、詩やメルヘンを誘い出し、歴史や科学への夢を誘ってくれると、地図研究科でエッセイストの堀純一氏の言葉を借りて話されていました。
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1.地図は主張する~さまざまな世界地図
各国の世界地図を比較してみると必ず自国を地図の中心に配置し自己主張をする。
・太平洋を中心とするアメリカの地図(ハワイが中心)
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・ヨーロッパ中心のフランスの地図
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・アメリカ合衆国を中心とするアメリカの地図
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・日本が中心の世界地図
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・北が下のオーストラリアの地図
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・北極が中心の世界地図(NASA制作)
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・日本列島と北海道の衛星地図「ランドサットマップ」
NASAから打ち上げられた地球観測衛星「ランドサット」からの衛星地図。
画像は1シーン185㎞×185㎞の地域をカバーし地図上から植生、集落、農地など多くのものが読み取れる。
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各国が制作した様々な世界地図を見ながら説明を受け鑑賞しました。
2.地形図の世界
・イギリスの地形図1/50000「エジンバラ」1986
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・アメリカの地形図1/24000「サンフランシスコ」、「オタワ」1973
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・ノルウエーの地形図1/50000「ブリュクスダール」1995
・フランスの地形図1/100000「ナント」1981
・スイスの地形図1/25000「ツエルマット」1998
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各国の都市の地形図を見て、各都市にまつわるエピソードを交えながら地図の特徴を鑑賞する。特に地図研究家の堀潤一氏はヨーロッパの地形図の中でもスイスの地形図を芸術品といってもよいくらいであると絶賛していますが、淡彩の色調と繊細さに素晴らしさを感じました。またノルウエーの地形図にあるブリュクスダール氷河の先端を木戸口さんが訪ねビデオ撮影したものも上映されました。
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3.絵地図の世界
・「アムステルダム」(ボルマン社)
ドイツのボルマン社からは世界の大都市の絵地図が出版されている。その中の1枚である。1軒1軒の窓まで正確に書かれている。その精密さは人間業とは思えないと評されています。
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・「奈良」「神戸」(絵師石原正氏)
地図絵師 石原 正氏の手書き作品で地上の樹木、建物、道路、畑をきわめて精密に招いている絵地図である。ボルマン社の絵地図に比べ著しくリアルなのが特徴である。
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・スイス「パノラマ マップ」
ライン川とドナウ川の源、アイガー、インターラーゲン、マッターホルン、モンブランなどの位置関係がはっきりわかる。
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・大雪山のパノラマ マップで石狩川の源流をたどり、朝日岳、黒岳の位置を見る。
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・町割り図「角館」
400年前の江戸時代の町並みが残る東北の小京都といわれ角館の町割り図を鑑賞する。まちの特徴は、豪雪地帯で火災から守るため、幅広い道路網、道幅11mは当時としては珍しく、東海道、京都、江戸のみである。武家屋敷(内町)と町屋敷(外町)で構成されている。
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・タイ「チェンマイ」の古地図
タイの古都、13世紀にメンライ王によって計画的に作られた王宮のある町です。ピン川右岸に方形の城郭と塀をめぐらした。旧市街には多くの寺院や遺跡が残っている。
残念ながら時間が足りず今日の予定を若干残して講座を終了することになりましたが十分地図の魅力を感じる事が出来ました。またタイトルの「ところ変われば地図変わる」を十分実感することができました。
講座終了後受講生たちは、地図から離れられずテーブルに広げられた地図を再確認し木戸口さんと地図談義が続きました。