平成27年8月5日(水)に講座8「躍進する石狩湾新港~海から眺める石狩湾新港と先端企業~」の第2回目である「食品関連の先端企業の見学」を行いました。34名の受講者が参加して、石狩湾新港の食品関連の先端企業である横浜冷凍株式会社(ヨコレイ)石狩物流センターと"マルちゃん"で馴染みの深い東洋水産株式会社北海道事業部を訪れて見学しました。34度という今年最高の猛暑でしたが、-20度の低温を経験して冷凍技術を学び、また即席麺の製造現場を見学して安心・安全な食品製造を学ぶ貴重な機会となりました。
9時にバスで公民館を出発、9時10分に横浜冷凍に到着しました。参加者を2グループに分け、ひとつのグループはそこで下車して横浜冷凍を見学、もうひとつのグループはバスで東洋水産まで行って見学しました。約1時間後に両グループが入れ替わり、それぞれ別の企業を見学する形で見学を行いました。
横浜冷凍では、間庭克己課長さんの案内と説明で見学が行いました。関晋也所長さんも同行されて随時補足説明や質問への回答などをいただき、全社的な形で見学を受入れていただきました。まず、横浜冷凍(ヨコレイ)の概要について説明がありました。今回訪ねたのは昨年5月に竣工した石狩第二物流センターですが、本社は横浜にあり1948年に創立されました。全国に43カ所の物流センター・冷凍工場があり、道内には石狩の他に喜茂別と十勝に物流センターがあります。来年8月には十勝第三物流センターが竣工予定で既存センターと合わせ、道内最大規模の庫腹になるとのことです。事業内容は、冷蔵・冷凍倉庫業、水産物の加工・販売と輸出入、農畜産物の加工・販売と輸出入などです。石狩第二物流センターの冷蔵収容能力は約2万4千トンであり、敷地面積は約5,600坪、延床面積は約6,700坪で、鉄筋コンクリート造4階建ての建物とのことでした。
まず、10℃以下に保たれる低温室(荷捌フロアー)を見学しました。横浜冷凍は"保税蔵置場"の許可を受けており、世界各国から輸入された食材や輸出用の食材の保管などを行っています。次に、屋上に上がり、石狩湾新港地区や札幌など360°の眺望を楽しむことができました。新港地区では最も高い建物で通常より堅牢に造られており、札幌まで15kmの位置にあることなどから、災害時の物流拠点あるいは避難場所として期待されています。横浜冷凍の建物の頑丈さについては、東日本大震災の時に証明されたとのことでした。石狩市民としても大いに期待するところです。
第二物流センターには常温、低温、冷蔵、および冷凍(-23℃設定)の4温度帯の部屋、フロアーがあり、様々な商品を大量に保管できるようになっています。−23℃の部屋は実際に入って体験しましたが、冬用の厚手のジャンパーなしではおられないような寒さでした。戸外は34℃の猛暑でしたので、今日は約60度の温度差を一度に体験したことになります。
冷凍室には横浜冷凍の最先端の技術が採用されています。冷却方法は輻射パネルで覆われた天井の内側(天井裏)にクーラーファンを置き、そのパネルの内側(天井裏)を冷却することで冷気が輻射パネルを通じて、降下熱移動し保管室内を冷却させるシステムを採用しています。(Sittory D1 システム)多くの冷蔵庫は冷気の送風によって保管室内を冷却する方法ですが、このシステムでは風が貯蔵物に直接当らない為、貯蔵物が乾燥する"冷凍焼け"を防ぐのに効果があるとのことです。
環境にも配慮しており、照明器具にはLEDを使用し、冷媒としてオゾン層を破壊するフロンではなく、アンモニアによって冷却液化されたCO2を使用しています。また、室外機との温度交換が本州では水冷式ですが、北海道の冷涼な空気を利用し水を抜いても空冷式として使用できる機器を設置している点が特徴とのことです。
最後に、貯蔵物の出し入れのために設置された大きな電動式移動ラックと1階の配送センターを見学して横浜冷凍を後にしました。
東洋水産では歓迎の看板に迎えられて工場に入り、ビデオを使って会社の概要について説明がありました。会社は1953年に国内水産物の取扱や冷凍マグロの輸出を行う水産事業から始まり、1961年には即席ラーメンの製造を開始し、今では水産物の仕入れ・販売、加工食品の製造・販売および冷凍・冷蔵保管などを手がける総合食品メーカーとして発展してきました。何よりも「マルちゃん」の名前の麺類が大変身近な存在となっています。石狩湾新港にある北海道工場は即席麺工場および営業の拠点として2012年5月に完成し、敷地内に第一工場、第二工場、研究室および北海道支店が設置されています。敷地面積は札幌ドームの1.7倍の広さがあるとのことでした。
次に、案内係の方の丁寧でユーモアに富んだ説明を聞きながら、北海道限定商品である「やきそば弁当」の製造現場を見学しました。製造プロセスを廊下から窓越しに見る形でしたが、工場内の従業員は清潔な作業着と二重かさねの帽子を着用し、エアシャワーや粘着ローラーでほこりを取ってから入っています。安全・安心な食品づくりのために、外部空気の取り入れは二重のエアフィルターを通して行い、また工場内の気圧を外部より高くして虫や異物の混入を防ぐようなシステムを取っています。製造ラインでは、金属検知器やX線検査機などを使用して異物の混入を防いでいます。
見学の最初にクイズが出されました。「やきそば弁当」と「赤いきつね」と「緑のたぬき」で麺の長さが一番長いのはどれでしょうか、という問題です。廊下の天井にそれぞれの麺の長さが色違いの線で示されており、結果は「やきそば弁当」が最も長いということでした。その後、「やきそば弁当」の製造現場を見学しました。次のようなプロセスで製造が行われています、①生地をつくり、麺状に切る→②蒸す→③1食分に切る→④油で揚げる→⑤冷ます→⑥カップに麺、ソース、かやくを入れる→⑦検査してふたをする→⑧包装する(ここで賞味期限などを印字する)→⑨検査する→⑩最終安全確認を行う→⑪箱につめる→⑫箱に賞味期限を印刷して二段に重ねる→⑬ロボットで製品をパレットに積む。
最後に受講者からいくつか質問がありました。例えば、「北海道では特別の味付けをしていますか?」の問いに対して、「地域の好みに合わせて味を変えており、例えば『赤いきつね』と『緑のたぬき』では北海道、東日本、関西および西日本の4種類の味つけをしている」との回答でした。『赤いきつね』などのお土産までいただいて東洋水産を後にしました。
予定通り12時頃に公民館に帰着しました。猛暑でしたが熱中症にかかる人もなく無事終了することができたのは幸いでした。
参加者から以下のような感想が寄せられました。
・ふつうでは見学できない工場を見学できてよかった。
・新港を海から見るのは始めてで新鮮だった。意外に狭く感じました。工場見学は規模が2工場とも大きくビックリしました。
・この講座に参加出来たことは市民カレッジの学生として誇りに思いました。船に乗船出来たこと、企業の進歩、特に冷凍・冷蔵の技術、この度参加出来なかった方々に来年も同企画の下に優先してあげて頂きたいと思います。見学コースのない企業を訪問できたことに、スタッフの皆さん、ありがとうございました。
・石狩湾新港そして企業(横浜冷凍、東洋水産)見学、いずれも最新の設備で、正に21世紀最前の思いを感じた。石狩を中心に札幌、そして全道にこの勢いを広げて欲しい。北海道だから出来る事と思う。
・楽しく有意義な研修でした。良かった!!知ったかぶりして家族や友人に話しができます。新港の工場群がようやく少し身近に感じられました。
・第1回目~海から眺める石狩湾新港、すばらしい体験、カレッジならではの企画に参加できたこと、感謝致します。第2回目~先進企業の施設見学、目を見張る様な設備、働く人達の大変さ、私達の食の安全を常に考え努力されていること、感じさせられました。有難うございます。
・ヨコレイでは+32℃から-23℃と55℃の差を体験できたことがよかった。マルちゃんのお土産もありがとう。
・マルちゃんはテレビコマーシャルでなじみがあり、今回の工場見学で一層商品に対するイメージやオートメーション化の進んだ工場製品で良い方向に変わった。子供をつれて再訪問したい。横浜冷凍は倉庫業として温度差により管理していることが理解できた。
・今後にて、同地域の他の企業についても見学、勉強出来るよう希望します。
・年をとっても新しい知識が必要ですね。大変よかったです。