主催講座15 「『超高齢化社会』~あなたはどう生きますか~」
2015/11/19
11月14日(土)講座15「『超高齢社会』~あなたはどう生きますか~」の第2回「人生90年時代を生きる」を花川北コミュニティセンターで行いました。
講師は、北海道新聞社編集局生活部の福田淳一さん、受講者は23名でした。
福田さんは、「前半は、超高齢社会とはどうなっているか、日本の高齢化の歩みなど全体状況をお話しし、後半では具体的に、取材に基づいた生き方の参考になる事例を紹介してまとめさせていただきます。」と述べ、講義に入られました。以下その概要を紹介します。
日本政府は人生90年時代という言い方をしている。男性の平均寿命は80歳、女性は86歳、90年にちょっと足りないが平均寿命を超えて生きている時代でもある。
○ 日本の高齢化の推移と予測
(高齢化率~総人口に占める65歳以上の人口)
■1970年 7%超 ■2015年 26.8%
高齢化社会 (ほぼ4人に1人)
■1994年 14%超 ■2035年 33.4%
高齢社会 (ほぼ3人に1人)
■2007年 21%超
超高齢社会
・日本の高齢化率は世界に例がないスピードで進んでいる。
・日本が初めて高齢化社会に突入したのは1970年(昭和45年)。
・人口高齢化の国際比較
(65歳以上の人口割合の到達年)
フランスが7%に達したのは1864年、14%になったのは1978年、120年以上かかっている。中国では日本より30年遅れで高齢化が進んでいて、日本と同じ道をたどりつつある。
・北海道の高齢者人口と高齢化率
全国平均より少し高い。しかし、若者が少なくなって全国有数の高齢化率になっていくだろうと思われる。2015年150万人(団塊の世代が65歳を迎えた)。
○ 日本の長寿革命 ~ 30年延びた
・歴史的にみて平均寿命がどのぐらい伸びたか。
1947年(昭和22年) 女性53.96歳、 男性50.06歳
2014年(平成26年) 女性86.83歳、 男性80.50歳
戦後驚異的に寿命が延びた。理由は諸説ある。
(医学の進歩、衛生状態、栄養状態、国民皆保険、戦争がなかった)
○
日本人の平均寿命 過去、未来
・今後も寿命は延び続けるか。鈍化しつつ少しずつ延びていくであろう。
・戦後、日本は何とか寿命を延ばしたいと考え、ある程度達成できた。
・今後、寿命の長さから質(健康に充実した生活をして生きる)が問題になる。
◇
平均余命
(ある年齢の人が、その後何年生きられるかという期待値~厚生労働省で産出)
・女性の場合 ・男性の場合
60歳+28.68歳=88.68歳 60歳+23.36歳=83.36歳
70歳+19.81歳=89.81歳 70歳+15.49歳=85.49歳
80歳+11.71歳=91.71歳 80歳+ 8.79歳=88.79歳
90歳+
5.66歳=95.66歳 90歳+
4.35歳=94.35歳
・年をとるほど合計の数字があがっていく。これを見ると「人生90年時代」というのはそんなに無理な数字ではないことがわかる。
◇
急激な高齢化、長寿化の問題
・エイジズム~高齢者に対する差別の問題(虚弱である、社会に対する経済負担~)
・実際には8割の高齢者が自立している。
・要介護、要支援の認定者15%、未申請者を含めると20%。
・介護保険制度は、意識を変え権利として利用すべき。
・急激に進んだために、人々の意識、社会の仕組みが追いつかない。
○
高齢者の能力、体力、知力
・高齢者は若返っている
体力テストを実施した結果、高齢者の体力が向上していることが分かった(北海道新聞10月12日朝刊)
・知力も、新しいことを学ぶような能力は、60代以降、衰えると言われるが、知識、経験を応用するような能力は緩やかに伸びると専門家が指摘している。
○
人生90年時代をどう生きるか
◇人生10万時間 (リタイア後の自由時間)
14時間×365日×20年=約10万時間、シニア世代の1年の使いで
◇人生90年時代とは
・「老後」「余生」という言葉はもはや実態に合わない。人生2毛作、多毛作の時代へ。
・長寿を達成し、今度は長さから質を重視する時代へ。
・ジェントロジー(高齢社会総合研究)
・クオリティー・オブ・ライフ(QOL人生の質)
・サクセスフル・エイジング(幸福な老い、年をとって成功しよう)
○
超高齢社会にどう生きるか
・高齢社会はマラソンの後半戦
・2025年問題~団塊の世代が75歳になったとき、認知症や介護の問題が出てくる。
・元気な高齢者が社会を支える。老々介護、老々除雪
・個人として・・・生涯現役(エイジフリー社会)
・いきがいの大切さ
○
男性の第2の人生は
・難しい社会参加、閉じこもり? 女性は子育てを通じて地域にチャンネルがある。
・生き方の極端さ(勉強、仕事)、かつての地位へのこだわり
・管理職の難しさ。かつての地位が重いよろい。よろいを脱いだ方が勝ち
・夫源病~夫が原因で奥さんまで憂鬱になる
・社会参加が大事
○
解決策として、働き続ける選択
・継続雇用、再就職(シルバー人材センター)人材銀行
・独立・起業
・NPO活動、ボランティア活動
・ワークライフバランス、少し働く選択
○
事例の紹介
◇
多様な趣味 池田町のワイン町長丸谷金保さんのお話し
視察でフランスのパリに行った。朝、ホテル近くの公園に三々五々老人が集まり、終日同じ人が同じ場所にいる。田舎に行くと農園などで生き生きと働いている。そのとき「やっぱり生きがいが必要だな」と思った。町長になって生きがいづくりのために陶芸など様々な事業を行った。94歳で死去。
◇
自分の好きなことをする
・札幌の演劇企画集団 平均年齢75歳
・少し働く 白老のコミュニティレストラン(昼だけ) 平均年齢74歳
・札幌市厚別区の団地の集会場で活動している「ハッピー会」
・ボランティア活動も働くことと位置づけられる
○ 福沢諭吉の言葉
■恰も一身にして二世を経るが如く、一人にして両身あるが如し(文明論之概略)
・福沢諭吉は66歳で死去、幕末期と明治期を33年ずつ生きている。
○
高齢者は何歳?
・みなさんは、高齢者は何歳からだと思いますか(受講者への質問と回答)
65歳以上 0人 70歳以上 1人 75歳以上 多数 80歳以上 1人
・65歳という定義を見直した方がよいのではないかということが専門家の間で言われている。ある専門家の話では75歳を超えると認知症の発生率が高くなるという。
○
高齢者を75歳以上に?
高齢者の定義を見直して、75歳以上という時代が来そうな感じがする。
・2015年の予測 65歳~74歳(13.8%) 75歳以上(13.0%) 合計26.8%
・2035年の予測 65歳~74歳(13.3%) 75歳以上(20%) 合計33.3%
○
まとめ
◇持てる力をフルに発揮することが、個人にとっても社会にとって重要である
◇社会参加と運動が大切。
知的能力を維持する方法は、社会参加と運動が大事
人とつながろう。生涯現役を目指して。
社会に支えられる側から、社会を支える側に。
◇「きょういく」と「きょうよう」の大切さ
「今日行くところがある」「今日用事がある」
◇シニアの1年と若い層の1年を比較すると、自由時間の使いでが違う。
・やりたいことがあれば1年の重みが違ってくるのではないか。
・人生90年時代、お元気で充実して、健康で過ごしていただきたい。
今日は、ご清聴ありがとうございました。
○受講者からの意見や感想
元気な老人が日本を元気にする。社会に対する経済的負担ではなく貢献できると思う。人生二毛作の言葉がよかった。やわらかい頭と体で前向きに暮らすことが大事。今日の日本の高齢社会の諸問題について、きわめて分かりやすく話していただき、勉強になった。特に高齢者の知的能力に関しては再発見があった。これからの人生の糧にしたい。幸せとは、の定義に新しい知見を得た。90年時代まで生きられるか?自立して生活できることを目標にしたい。
たくさんのご感想ありがとうございました。