6月29日(水)主催講座4「躍進する石狩湾新港~世界最長の超電導直流送電システムと水素エネルギー~」の第1回「世界最長の超電導直流送電システムと実証実験現場の見学」を行ないました。講師は中部大学超電導・持続可能エネルギー研究センターの井上徳之教授で参加者は59名でした。
最初にNHKで放映された中部大学での基礎実験の模様と
石狩に於ける実証実験の模様の
2本のDVDを見ました。
中部大学では20mに成功しさらに200mにも成功、石狩では500mの実証実験に成功し1000mの実証実験が進んでいるところです。
1.再生可能エネルギー拡大のキーテクノロジー ~現時点で世界一の性能~
〇太陽からのエネルギーを最大限に活用
再生可能エネルギーの源は「太陽」である。太陽から地球にふり注ぐエネルギーは、地球上の消費エネルギーの1万倍~10万倍にもなる。化石燃料のように地域の偏在性がなく、人類に等しく与えられている持続可能社会の究極のエネルギー源である。
〇高温超電導と送電利用
超電導は、電気抵抗がゼロになり電気を非常に流しやすくなる現象。今のところ超低温でのみ見られる。高温超電導体が日本で発見され、冷却コストを大幅に下げられるようになった。電気抵抗ゼロとは、電流を流してもエネルギーを失わないということで、架線送電での送電ロスが-5~-8%あるといわれている損失部分が無くなり、将来の電力輸送の方法として期待される。
〇再生可能エネルギーの課題は超電導送電で解決可能
再生エネルギーの夜昼・天候による不安定さは超電導送電によって解決可能である。超電導送電は、送電ロスが少なく(電気抵抗ゼロ)、交流にするロスを無くし直流発電を直流送電し直流で使う
国や大陸をまたぐグローバルな遠距離送電が可能となる。
〇我が国が実証実験に成功。世界一の性能で長距離化に見通し。我が国は、世界最長となる500m超電導直流送電の実証実験に成功した(経済産業省の委託事業)。近く1000mも実験予定。
超電導線の実物をみながら、ケーブルをさらに長くするための基本的なデータが取れており、実用化に向けた見通しが立ちつつある(世界一の性能)。
世界で初めて、太陽光発電所からデータセンターに超電導直流送電により給電を行なった。直流発電を超電導直流送電して直流のまま給電する「直流システム」の実証実験の成功となった。
2.地域創生の基盤に ~高速道路などを利用した日本縦断の実現性~
〇日本列島を縦断する超電導直流送電幹線
日本列島を縦断する直流送電幹線(50Hz/60Hzでない)の建設により、革新的な再生エネルギー普及を図る。各地域の再生可能エネルギーを「直流」で接続可能にする。
〇地域創生の基盤
早期実現により、地域ごとに発電・送電が可能となり、地域創生のための基盤が整備される。技術開発は実証実験の段階を迎えている(石狩プロジェクトの成功)。
〇超電導直流送電の特徴
・省スペースで大電流を送電できる。
・少ない送電損出で超長距離の送電が可能である。
・環境に優しく、高い安定性がある。
・最終的には安価なコストを目指せる。
〇高速道路の利用
・全国各地に広がる高速道路網や高速鉄道網のインフラに使用(提案)。
・大電力を極めて省スペースで送電でき、ルート確保・実現性が高い。
・高速道路埋設の適応法規(5件)は、架空送電線(18件)により少ない。
・鉄塔を建てる用地など敷設ルートの環境破壊(大面積の森林伐採など)が少ない。
高温超電導直流送電システムの実証研究
◇事業の概要
石狩超電導・直流送電システム技術研究組合は経済産業省が所管する「高温超電導技術を用いた高効率送電システムの実証事業」を実施する。新たに高温超電導直流送電システムを石狩湾新港地域に設置し、さくらインターネットの石狩データセンターと太陽光発電間、および特殊試験用設備での送電を行い、トータルシステムとして実運用システムの構築、さらに、将来の長距離送電システムを実用化するための技術的、制度的課題の検証を行う。
システムは2つの回線を設置する。
回線1は、太陽光→データセンターに直流超電導線(500m)を地下埋設設置し、太陽光で発電した直流電気を超電導線でデータセンターに送り、実運用する。
回線2は直流超電導線(1Km)を地上設置し、上流側に試験用電源、下流側に試験用負荷を設置する。
◇実証意義
世界最長(総長1.5Km)&最大級(送電容量50MW)の直流超電導ケーブルシステムによる長距離送電システム技術の確立。
回線1
・超電導直流送電の実用線路の設計。
・設計システムの検証(安全性、成立性を含む)。
・再生可能エネルギーを直接ユーザーに配電。
回線2
・長距離送電システム実現のための長距離液体窒素循環システムの検証。
・実用化に向けた各種特殊試験の実施。
・マルチジョイント(世界初)。
課題もありますが
航空機の電動化として超電導直流送電が使われようとしている今、将来は開けています。
座学が終わりいよいよ実証実験現場の見学へとバスに乗り込みます。
車中で、送電のパイプは約30cmで太陽熱などでの伸縮を減らすため地中に埋まっているため実際のパイプや埋設の模様の写真3枚が回覧されました。
質問の答えとして①超電導直流送電にかかる費用は500mと1000mで約40億円とまだまだ高いですが実用化されていけば架空線と同じか半分位にはできる。②鉄道の線路上(脇)に送電線を設置し送電だけでなく、ブレーキのエネルギーを送電線に戻し再利用できる。③低温で電気抵抗ゼロにするための液体窒素は安価でコスト減になる。
まず1000mの実験場へ。
広い場所で一直線にパイプが敷設されているのが見えました。
建屋にはいると電気抵抗のよいペルチェ素子を使った配管端末と真空ポンプ、冷却ポンプが並びパイプの伸縮により可動するベローズが設置されていました。
実際に埋設されている超電導線と冷媒管の実物を見せていただきながら
冷却の原理を実験を交え説明がありました。一定の容器に圧力を加えると火花が出る程温度が上がり、逆に減圧すると温度は下がり冷たくなる。この原理を使ったものが冷蔵庫ということでまた一つ勉強になりました。
続いて500mの実験場へ。実証実験が成功している施設で太陽光発電を取り込むソーラーパネルが並び建屋には1000mの実験場でも見た配管端末と機械、ここから送電してさくらインターネットのデータセンターへとトータルシステムを見ることができました。
外から見るとただの管ですが実は最先端の技術が凝縮した科学の宝物でそれが石狩にあることが誇りに思います。
受講生からも「石狩にこの様にすばらしい施設が出来ていた事に感心しました。講座名を聞いたとき、一寸難しく何の事だろうと思いつつ参加しました。講師の先生のお話がとても解りやすく大変勉強になりました。超電導送電ケーブル、これからも益々発展普及して役立つ事、期待いたします。ありがとうございました。」という意見が寄せられ、期待感のもてる講座でした。