主催講座4 「躍進する石狩湾新港~世界最長の超電導直流送電システムと水素エネルギー~」
2016/08/15
7月20日(水)主催講座4「躍進する石狩湾新港~世界最長の超電導直流送電システムと水素エネルギー~」の第2回「これからのエネルギー~石狩スマートエネルギーコミュニティ構想と水素エネルギー社会~」を2人方の講師により行ないました。受講者は55名でした。
1講目は「石狩スマートエネルギーコミュニティ構想」と題し、講師は石狩市企画経済部渉外調整担当の松田裕部長です。
・石狩湾新港地域は、札幌市中心部から約15km・車で30分という恵まれた立地環境にあり、その面積は、約3,000haで、北海道でも最大級の工業流通団地。
・平成28年4月末の立地企業数は、機械・金属・食品などの「製造業」のほか、卸売・倉庫・運送などの「流通業」や「サービス業」など、749社に及び、そのうち628社が操業、就業者数は約13,000人と言われております。
・また、この新港地域の税収は、固定資産税・都市計画税・法人市民税等の主要税目で、市全体の40%を超えており、まさに本市の地域経営の中核を担う重要な地域となっております。
・石狩湾新港地域では中央ふ頭のある「新港中央地区」のLNG基地・ガス・オイルターミナルを中心に、新港地域において、現時点で風力発電4基・太陽光発電も8箇所で行われております。今後、平成30年度には、西埠頭に道内初となるLNG火力発電所の1号機が、また、平成32年度には、北防波堤奥の海洋において10万kW規模の「洋上風力発電」が稼働予定となっております。
・本市では、こうした多様なエネルギーソースと企業が集積する特徴を何とか地域経営に生かしたいという想いを持っており、近年では、H22年度の総務省の「緑の分権改革」において、域内のエネルギ―賦存量調査や雪氷冷熱等のクリーンエネルギーをDCに活用する手法などについての研究、平成24年度からは、経済産業省の「高温超電導直流送電システム実証研究」として送電距離世界最長級、かつ、ケーブル間の中間接続を有する送電としては世界初となる高温超電導直流送電の実証事業を行ってきております。
・平成25・26年度には、総務省の「分散型エネルギーインフラプロジェクト事業」により、石狩湾新港地域の特性である多様なエネルギーソースと先端技術を活用して域内エネルギーの需給バランスの最適化を図り、環境負荷の低減と災害に強い工業団地という新たな地域価値を形成することにより、域内産業の活性化と戦略的な企業誘致を進めるとともに、市民の生活環境の充実など、地域共生型の事業展開について検討してきたところであります。
・こちらが、ISECの基本的なモデルです。平成25年度の「導入可能性調査」の中で食品工場群と冷凍冷蔵施設のエネルギー需要調査を行い、その結果が上の円グラフの二つになります。
・左側の食品工場群は、電力負荷が「27%」・熱負荷が「73%」となっています。
・真ん中は、冷凍冷蔵施設です。こちらは、ほとんどが、電力負荷で占めています。
・要するに、エネルギー需要といっても、業種業態によって、その使い方はさまざまあるということがわかります。
・そこで、今回の構想では、こうした企業立地環境を踏まえ、一定の経済性が期待できる「ガスコージェネレーションシステム」の導入について検討いたしました。
・「コージェネレーションシステム」とは、一つのエネルギーから複数のエネルギーを同時に取り出すシステムのことで、右側にあるのは、現在主流の高効率CGSのエネルギー効率を表したグラフです。
・電気だけを利用するなら、49%のエネルギー効率ですが、蒸気も合わせて利用するとなると、これに14.9%が加わって、約64%の効率、さらに温水も利用するとなると、これに13.1%が加わって、約77%の高効率となります。
・これと合わせて、地域別のエネルギー需要を調べてみると、「石狩湾新港地域」では、電力と蒸気の需要は極めて大きいですが、温水需要は「ゼロ」になっております。
・逆に、花川などの市街地は、「温水需要」が大きいため、新港地域で余った温水を市街地に回すことができれば、理論的には、エネルギー効率が上がり、事業性が高まるということになります。
・そうした中で、検討した分散型エネルギーインフラの整備計画の全体像がこちらです。
・一言で言うと、エネルギー需要量が膨大な「石狩湾新港地域」のエネルギー利用の高効率化とエネルギーコストの低廉化を図るとともに、その過程で生じる余剰エネルギーを公共・民生部門である市街地エリアで活用することにより、地域全体での最高効率のエネルギー利用を目指すという地域共生型の取り組みであり、
・具体的には、石狩湾新港地域の3個所、図面の黄色の部分(A・B・企業誘致エリア)に、それぞれのエリアにおいて事業性を確保した大型分散電源(コージェネレーション)を配置し、広域連携の自営線及び温水配管を介して市街地の利用施設に配給することで石狩湾新港地域と市街地の連携を図ろうという構想です。
・実際のところ、熱導管インフラの往復延長が20kmを超える超広域整備プランなので、初期投資額だけでも36億を超える規模となり、熱導管使用料を、販売額の8割に設定したとしても投資回収年数が、35年越えと長期にわたることから、更なる技術改革によるコストダウンが図られるなど、長期的な視点で考える必要があることが、改めて明らかとなりました。
・個別モデルとして、事業性が一定程度確認できているのが蒸気を多消費する食品工場と電力を多消費する冷凍・冷蔵施設・機械金属工業施設を供給対象とするAエリアです。
・具体的には、食品工場群に電力と蒸気を供給し、冷凍・冷蔵倉庫と石狩新港機械金属協同組合には電力のみを供給するモデルで、大型の高効率コージェネレーション(5,200kW×2台)を導入し、低炭素な余剰発電電力は、新電力会社に売電して他の地域で活用しようとするものです。
・総事業費は補助金を活用して、30.6憶円。事業性の評価としては、現状の電力の従量料金から1円/kWh安く設定したとしても投資回収年数は「10.6年」となり、概ね良好な費用対効果の検討結果が得られております。
・想定需要家からは、現状の電力料金より安価な電力供給を前提として、参加の意向が示されている一方で、原油価格との連動など、振れ幅の大きい燃料単価や原子力発電所再稼動による系統電力単価の変動など、今後のエネルギー環境の変化に伴う不確定要素をどうみるかが事業化の課題となっております。
・その他のエリアのモデルについても、新たな企業を誘致してエネルギー需要を高めるなどの取組が必要となるため、幅広い時間軸を見据えた取組が求められています。
以上が、石狩スマートエネルギーコミュニティ構想(ISEC)の概要となります。冒頭にも申し上げたとおり、多様なエネルギーと企業の集積は、石狩市が将来にわたって発展を続けるうえで、欠くことのできない地域資源であり、その活用策を示す本プロジェクトの実現は、本市の新たな地域価値の創出につながるものであります。
このことから、これまでの検討で明らかとなった課題を段階的に克服し、各種政策や為替変動など、エネルギーを取り巻く社会情勢に注視しつつ、プロジェクトの具体化に向けて取り組んでまいります。
今まで捨てていたエネルギーを域内の必要なところで使えることになれば無駄が減りコストダウンにもつながり、早期実現を期待します。
2講目は「水素エネルギー社会」と題し、講師は北海道大学の徳田昌生名誉教授です。
石狩市では風力、太陽光、天然ガスなど石狩湾新港地域のさまざまな「1次エネルギー」を活用して水素を製造し貯蔵・輸送する仕組みづくりを検討しています。
内容として5項目になります。
1.水素エネルギー社会の象徴~燃料電池自動車
構造、仕組みとしては水素を燃料にし空気を取込んで電気をつくり(燃料電池)モーターを回します。
燃料電池は水素と酸素の反応により水と電気になります。この事から二酸化炭素を出さない環境に良い自動車といえますが、まだ価格が高いのが難点です。
180年前に発見された水の電気分解(水→水素+酸素)の逆反応(水素+酸素→水)を利用したのが燃料電池です。
この燃料電池は発電効率が高く色々な分野で利用されてきています。
2.家庭用燃料電池「エネファーム」
発電し更に、発電の際発生した熱も利用する画期的なシステム。
天然ガス方式とLPガス方式が主流です。
「エネファーム」も長所、短所が有りますが技術が進み需要も伸びれば短所は減ってきます。
3.水素はどのようにして作るか?
水素は天然ガスや石油から、あるいはソーダ工業や鉄鋼業の副産物として、また自然エネルギーを利用した水の電気分解などから作ることができます。最近では、球状太陽電池「スフェラー」や光触媒による水の電気分解あるいは太陽熱による水の分解などを利用したものもできています。
4.水素をどのように貯蔵・輸送するか?
発電所から送電線で送ると35%しか利用できないが、水素をトラック輸送して燃料電池で電気をつくると80%の利用が可能です。
トラック輸送には圧縮する、液化する、トルエンに取込む、水素吸蔵合金を利用する方法が有ります。
5.水素エネルギーの利用
イタリアでは水素発電の実証運転が行なわれました。
水素ステーションがまだ少なく建設費も高いのでこれからという気がします。
水素エネルギー社会へ向けてのロードマップは以下の通りですが、課題はたくさんあります。
最後にエネルギー源に対する長所、短所を一覧表にしました。
まだという感はしますが化石燃料と違い、地球上に無尽蔵にある「水」を利用することは将来性のあることと期待します。
受講生からも「アイセック 石狩市地域としての今後のエネルギー構想、現実的には非常に無理ではあるが一つの材料として活用出来れば、夢の様な話しですが可能性を持って取り組む事は大切だと実感しました。むずかしい勉強でしたが大変良かったです。」「石狩スマートエネルギー構想に付いての説明のお話を、今の状況を詳しく松田部長が語って下さいました。その後、水素社会に向けての徳田教授からの内容、主なエネルギー源(化石燃料、原子力、再生エネルギー)そして水素に付いての比較等を現実としての実現、問題点。とても大切な話題で良かったです。」「さりげなく生活の中でのエネルギーに深く思いが入った気が致しました。全体的には難しかったのですが燃料電池、興味深く拝聴致しました。一般家庭ではどう対応できるか楽しみな事になるでしょう。」という意見が寄せられ、時間が掛っても期待の持てる講座でした。