1月14日(土)、主催講座15「イスラム教は平和的~石狩の若者がシリアとヨルダン・ザアタリ難民キャンプで考えたこと~」の第1回 「シリアとは?イスラム教とは?」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、青年海外協力隊員としてシリアに赴任したほかボランティアでヨルダン・ザアタリ難民キャンプにも赴いたことのある鈴木 雄太さん、受講者は40人でした。
イスラムの衣装をまとった鈴木さんのお話はまずアラビア語のこんにちはと云う言葉で始まりました。
鈴木さんは、石狩市出身で石狩市立花川南中学校、石狩南高等学校を経て北海学園大学に入学。2009年に大学を休学して青年海外協力隊員としてシリアへ。シリアの内戦で帰国後は就職するも、その後退職してボランティアで国連の難民キャンプへ。現在は、北海道教育大学札幌校に在学されている。
以下はお話の概要です。
1)シリアってどんなところ?
シリアは、三方をアジア、アフリカ、ヨーロッパに囲まれ、他地域へ移動する時は必ず通る場所として古くから開けた地域である。
□シリアの概要
・面積 18,5万平方㎞で日本の半分ほど
・人口 2,240万人であったが内戦で減少
・人種 アラブ人(90%)、クルド人、アルメニア人、その他(9,7%)
・宗教 イスラム教(90%)、キリスト教
・政体 共和制
□シリアの共和制の実態
・街中に秘密警察がいて、密告が横行
・非常事態宣言法の存在
・インターネット規制
フェイスブック、ツイッター、YouTubeなどは接続できない
・1980年代には、ムスリム同胞団を鎮圧するとして大統領が軍隊を投入、ハマと云う街を滅ぼした
□鈴木さんが接したしたシリア人の印象
・見知らぬ者にもお茶やご飯をふるまってくれる
・東日本大震災の折には、見ず知らずの異国人なのに家族の安否など気づかってくれ、多くの人が決して少なくはない額の見舞金をくれようとした
・子供に石を投げられた時には、他人の大人がたしなめてくれた
※鈴木さんはこれらの経験から、シリアは他人を気づかう人たちがいる素敵な国だと云う印象を持った。
□シリア人は親日家
車や家電など日本製品は信用がある
□エピソード
・シリアにはあらゆる所に軍事施設が存在し、うっかりカメラに収めたりすると強制退去させられる
・渡航履歴をチェックされ、イスラエルなどへの渡航履歴があると入国できない
ここで、質問タイム。
・シリアで石油は産出するか?またインフラ状況は?
石油はあまり採れない。道路は高速道路と言えるほどではないが遠距離を結ぶ舗装道路があった。インターネットはダイヤル回線で遅い。停電が多い。水は供給されているがタンクに貯める方式。
2)イスラム教とは
アシュハドアッラー
イラーハイッラッラー
ラスールモハンマドアッラー
(神はアッラーである。モハンマドは神の預言者である)
この言葉を、2人の成人の前で2度唱えるとイスラム教に改宗したことになってしまう。鈴木さんも何度も改宗をすすめられた。鈴木さんの友達で実際に改宗させられてしまった人もいた。
□モスク
一日に五回礼拝することになっている。基本的には男女別の場所
□六信五行
イスラム教には教徒が信ずべき六つの信条と実行すべき五つの義務がある
〇六信
・アッラー(神)
・天使
・啓典(コーラン)
・預言者(ムハメド)
・来世
・定命
〇五行
・信仰告白(シャハーダ)
・礼拝(サラート)
1日5回
・喜捨(ザカート)
貧しい人や困っている人に富を分配する
・断食(サウム)
1年に1か月(ラマダン)、鈴木さんもイスラムの文化にとけこもうと実践し、喜ばれた
・巡礼(ハッジ)
生涯に一度はメッカへ巡礼する
□ハラームとハラール
・ハラーム
禁じられている行為。酒を飲むこと、豚肉を食べること、人を殺すこと
・ハラール
食べ物の事だけではなく、許可されている行為のこと。また、食べることが許されている食材や料理
□イスラム原理主義
イスラム原理主義と云うとともすれば過激派と結び付けて考えがちだが、本来は伝統的なイスラム教の教えに戻ろうと云う運動(イスラム復興運動)。イスラム教徒の女性は、家族以外の男性に見られる場所では素肌や髪を隠さなければならないが、近代化が進み女性が肌を見せるようになったため、イスラムの良き伝統に戻ろうと云う運動。
□最後に、シリア人アナウンサーの言葉(現在、シリアが置かれている状況)
パリでテロが起きた時に・・このような犯罪を悲しく思う。しかし、全世界の人達がパリの味方になってくれる事が羨ましい。私たちアラブ諸国ではこのようなことが毎日起きているのに注目されない。
以上が本日のお話の概要ですが、最後に質疑応答を行いました。
□質疑応答
イスラム教への改宗、他人を気づかう人たちがどうして過激な事をするのか、六信のうち来世と定命などについて質問があり、来世と定命については次回に詳しく解説して頂くことになりました。また、水タバコにも興味が集まり、これも次回に水タバコ用のパイプを見せてもらうことになりました。
鈴木さんの実体験に基づいたお話は、これまで抱いていたイスラムの人たちのイメージとは違う面もあり大変興味深く聞くことが出来ました。