6月3日(土)主催講座3「菅井貴子さんの気象学講座」の第3回「気象予報の現場と報道」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は気象予報士でUHBテレビお天気キャスターの菅井貴子さん、受講者は59名でした。また嬉しいことに今回は屯田北中学校・科学部の生徒さん7名が受講してくれました。
番組でお天気を予報する前の準備などについてのお話の後、「リチャードソンの夢」と云う逸話が紹介されました。
◇リチャードソンの夢
イギリスの気象学者・数学者のリチャードソンは、6時間後の天気を予報できるとして計算を行ったが、その計算に1か月以上かかってしまった。そこでリチャードソンは6万4,000人が一斉に計算出来たら予報が出来ると提案。数値予報が可能と云う彼の考えは「リチャードソンの夢」として有名。リチャードソンの夢は、コンピューターの導入により実現した。
その後、受講者からの質問への回答がありました。
◇質問1.気象衛星「ひまわり」について
・どうして「ひまわり」と云う名前か?
太陽に向き合うことと夏に打ち上げられたから。
・今のひまわりは、何号?
8号で、さらに昨年9号が打ち上げられ8号をバックアップしている。9号は8号より性能が良く、さらにきめ細かなデータが得られるので期待が大きい。
・気象衛星の長所
地球の7割は海で、海にはアメダスが置けないが、衛星により海の上空の雲の様子が良く分かり予報がしやすくなった。
・ひまわりのデータの受信地
埼玉と江別
※ところで上空の気温は、どうやって測るのか?
気球(バルーン)を飛ばして測る。温度、気圧、風速(移動距離で割り出す)
・打ち上げ場所、時間
道内では3か所(札幌、稚内、釧路)で、午前9時(グリニッジ天文台0時)午後9時の2回打ち上げる。世界中で同時刻に打ち上げて、情報を共有している。
・気球は、最後にどうなるか?
上昇するに従い気圧が低くなるので気球は膨張して30㎞くらいで破裂してしまう。但し、落下して何かに衝突しないようパラシュートがついている。また、気球は自然回帰する素材で作られ環境を損なわないようになっている。
◇質問2.上空の天気図を見られるサイトはあるか?
地球天気図、で検索すると情報が公開されている。また、HBC北海道放送も情報公開している。しかし、専門的で難しいので、天気予報を見ることをお勧めしたい。
◇質問3.石狩市の警報、注意報の区分は?
石狩市は、石狩北部になる。
◇質問4.気象学から見た北海道の離婚率は?
気象と風土は関係があると言われている。また、北海道は離婚率が高いのも事実。
タレントの石田純一さん曰く「人類にとって嵐は必要である。人は、生命の危機に陥ると子孫を残したくなるから」この見地から云うと、台風の少ないことが北海道の離婚率を高めていると云えるかもしれない???
質問への回答の後は、これからの気象ビジネスについてのお話でした。
◇的中率100%の予報
一般的には、翌日の予報で85%、1週間予報で65%くらいの的中率だが、お金を払うと(1,000万円/月)100%当たる予報が得られる。精度が高いのは、地域に細かく測定機器を設置しているから。
では、そんな予報を一体どこが買っているのか?⇒㈱オリエンタルランド(東京ディズニーランド)が買っている。
◇天気に保険を掛ける「天候デリバティブ」
あらかじめ設定した気象条件が実際に現れた時に補てんを受けられるサービス。
・屋外ビアレストランの事例
1日の降水量10ミリ・最高気温31℃以下。オプション料(保険料)1,690万円で支払いは1日につき500万円(但し、36日目から支払い発生)期間は、7月1日~8月31日。
・利用業種
農業関係、イベント主催会社、除雪業者、流氷観光会社、神社(元旦の天候)、銀だこ、サッカーチームなど様々
◇予防医学天気予報
気象と季節に結びついた病気がある。しかし、症状が出やすい気象状態を予告すると、心理的に圧迫を与える場合もあるので要注意。
また、気圧が低下する時は、体に負担がかかる(頭痛、リューマチなど)。逆に、高気圧では盲腸患者が多いと云われる?
◇コマーシャル付 経済活性的「お天気番組」
・付加価値を付けた予報
高気圧、低気圧の命名権を販売。これは外国(ドイツ)ではすでに行われている。
例えば、高気圧にいしかり市民カレッジと命名するのは如何?
◇予報の伝わり方
・予報はきめ細かく伝えているつもりだが伝わらず、ハズレた、と言われてしまうことがある
原因は、人間の五感は視覚が87%、聴覚は7%なのでテレビでは言葉が伝わりにくいから。話している言葉にもぜひ耳を傾けて欲しい。
また、お天気マークは4つ(晴、曇、雨、雪)しかないので、細かな状況が伝えにくい。天気予報は細かく無数にあるのに、それを4つしかないマークにあてはめることに限界がある。
◇天気予報の発表時間
・週間天気予報
午前11時に新しい予報が出る。その後夜に少し修正、翌朝は大きく修正しない。
天気予報は鮮度が命、週間天気予報は午前11時過ぎに見ると最新の情報が得られる。
・短期予報
午前5時、午前11時、午後5時の3回。
・1ヵ月予報
毎週金曜日
・3ヵ月予報
毎月25日頃
◇気象庁の週間天気予報
信頼度も記載されている。
◇天気予報はどのくらい当たる?
全国年平均は、83%。
北海道は冬の予報は難しく精度が下がるが、夏は梅雨のある本州より精度が上がる。
◇道内各局の予報の違い
道内各局は、HBCとHTBはオリジナルの予報、他はそれぞれ情報ソースが違うので、予報も個々で違ってくる。
◇気象予報士について
全国で9,000人くらい、道内では600人くらいいるが、予報士として生計を立てるのは厳しい世界。また、気象予報士は、天気図がなければただの人、と云われる。
その後、もともと数学の先生志望だった菅井さんが気象予報士になった経緯などのお話があり、気象予報士から見た北海道の利点について語られました。
◇気象予報士から見た北海道の可能性
・丘珠空港をもっと活用しては
千歳と便を分け合えば気候も分散される。また、冬場に天気が安定しているのは旭川。確実に来道したければ、旭川空港からJRで札幌へ行くのが無難。
・梅雨がない北海道を楽しむにはオロロンライン
・本州の花粉症発生期に北海道へ
・先ず来道し、天気に合わせて移動するのも良い
・夏のマラソンや高校野球は北海道で(涼しい釧路、浦河など)
菅井さんは最後に、天気についての言い伝えを紹介しながら、北海道を活性化するのは、3つの気、元気、景気、天気です。私も、これからも元気にお天気を予報して北海道を活性化できれば良いなと思います、と結ばれました。
講座の3回目の今回は、ご自分のお話も含めて1~2回とは違う角度から気象予報について紹介され、受講者も大変興味深く聴くことができたようです。
受講者からは、お話に応えてたくさんのコメントが寄せられましたので、その一部をご紹介します。
「楽しいお話、予報の裏話など面白く聞きました。いつも予報は見ているのですが、やはり視覚からが多く、予報士の話を聴いていませんでした。これからはきちんと聞こうと思いました。単なる予報と思っていましたが、奥が深い!!」
「へえ~!!石狩のことわざ、天気の言い伝え、種のお話など資料を見るだけで面白い。予報がはずれたと怒るより面白おかしく頭に入るようになれば雨もまた楽しですね。楽しい講義を3日間ありがとうございました。菅井さんは晴れ女ですか?雨女ですか?テレビデコタエテクダサイ」
「3回全部受講しましたが、大変楽しくためになる講座でした。テレビで観ているよりずっと親しみやすく美人さんでした。マークですが、夜になって晴れるのなら☆マークにするなんてどうですか」
「菅井さんは色々と構想をもっていらして、私ももっともだと思えるものがたくさんありました。何か一つでも実現するといいですね。とても楽しい3回の講座でした」
「私は中学2年生ですが、とても分かりやすく聞きやすい説明で天気のことを全く知らなくても楽しんで受講できました」
「大変興味深く聞かせて頂きました。毎日見聞きするTVの予報がちょっぴり詳しくなって嬉しいです。ありがとうございました」