11月8日(水)主催講座12「日本酒を知ろう!~石狩から道産酒を考える~」の第2回「北海道の日本酒を語る」を花川北コミュニティセンタ―で行いました。講師は、北海道酒造組合 参与の西田 孝雄さん、受講者は44人でした。
西田さんは、最初にご自身が酒造組合に関わるようになった経過やメーカーは酒造組合を通してしか原料米を買えなかったのが直接生産者から買えるようになった仕組みの変化などについて説明された後、本題のお話を始められました。
1)道内消費数量に占める道内清酒の割合等
表にある通り、昭和60年に消費総量の41.6%飲まれていた道産酒は、次第に本州産に押され平成25年には20.0%まで低下した。しかしその後盛り返し、現在は北海道メーカーは数は少ないものの、全蔵元が好調で元気が良く、中には売るより断る方が難しいと云うメーカーも幾つかある。それは、杜氏が若返り、良い酒を造ろうと熱心に研究して酒造技術が進んだことや道産の良い酒米が出来たことなどによる。最近、薄野では、道産酒専門店、あるいは半分は道産酒と云う店も増えている。
2)北海道産酒の道外・輸出比率
道産酒は、道内で消費されることが多く、道外出荷比率は12~13%ほど。近年は、東京ではどこで道産酒が手に入るか、と聞かれることも多い。また、特徴として輸出比率が高い。
3)北海道と全国の出荷数比較表
この表では、合計前年度対比(%)欄に注目。全国が前年対比で連年100%を割ってきているのに対して北海道は伸ばしていて注目されている。また、特定名称酒比率が高いのも北海道の特徴。
※特定名称酒
酒は、一般酒と特定名称酒とに分けられ、一般酒はパック酒など、特定名称酒は大吟醸酒、吟醸酒など特定の名称を付けることのできる酒。
また、特定名称酒中の純米酒の比率が高いのも北海道の特徴。確かに北海道の純米酒は美味しいが、それは精米歩合を高くすることにより、にがみ・えぐみのもととなるタンパク成分が低いから。さらに、北海道ではアルコールを少しでも添加した酒はニセモノだと考える人が多いことにもよる。しかし、実は、吟醸酒のように、アルコールを添加すると美味しくなるお酒もある。
4)酒米の話
①食用米と酒米の違い
・酒米は、粒の中心に心白があり、粒が大きくふっくらしている。
心白は、米の中心部の白く不透明な部分ですき間が多く麹菌や水が入り込みやすい。吸水が良いと仕込み時間が短縮できムラなく蒸し上げられる。
・精米歩合(削った後の米の割合)が違う
食用米の精米歩合は90%ほどだが酒米はタンパク質含有率の高い外側を削り取って概ね70%以下とする。60パーセントで吟醸酒、50%以下で大吟醸酒となる。
②道産酒米の育成
兵庫の山田錦に対抗できる道産酒米の育成が悲願であった。平成10年に道産酒米の第1号「初雫」が育成されたが、心白はなかった。心白のある酒米の育成は、平成12年の「吟風」で叶えられた。平成16年、17年には「吟風」を100%使用した「北の錦(小林酒造)」が全国新酒鑑評会で連続して金賞を受賞した。
現在の代表的道産酒米は、「吟風」「彗星」「きたしずく」の3種。
・各道産酒米の特徴
吟風⇒芳醇で濃厚
彗星⇒淡麗であっさり
きたしずく⇒吟風と彗星の中間の酒質、淡麗の中に味がある
山田錦は優秀な酒米で、削っても砕けにくく23%の高度精白の大吟醸酒も作られるほどだが、丈が1mにもなって倒れやすい。北海道の酒米は丈や穂が短く倒れにくく作りやすい。
5)清酒製成数量及び道産米使用割合の推移
※表にある酒造年度は、米の生産に合わせて7月から6月。
平成11年度に総原料米が17.5%、好適米(酒米)が9.3%の道産率だったものが、平成28年度には総原料米57.6%、好適米61.4%になった。総原料米の率がまだ低いのは、使用される「きらら397」の生産が少ないため。また、好適米は本州でもかなり使われていて不足が生じ、北海道メーカーが望む量が手に入らない事態も起きている。
6)全国新酒鑑評会の結果
表にある通り近年は、金賞4、入賞8以上を受賞している。第105回の成績が良くないのは、米の質が悪かったから。
資料に基づくお話は以上で終わり、別に配られた「SAKE」と云う日本酒バイブル冊子について、いくつか説明がありました。
・燗について
よく知られているのは、あつ燗、ぬる燗、人肌燗などだが、その他にも日向燗、上燗、飛びきり燗などがある。
・和らぎ水
日本酒を飲むときに、合間に水を飲むと、よりおいしく味わえるし、身体にもやさしい。
・マナーを守る
お酒を飲む時は、マナーを守って飲みたいもの。
・特定名称酒の分類について
以上で本日の講座は終了しましたが、かってはあまり評判の良くなかった道産酒が、近年は杜氏たちの熱心な研究・努力や道産の良質な酒米が出来た事などにより評判がよく勢いが良いことなど道産酒の事情が大変良く分かるお話でした。
西田さんのお話を熱心に聴き入った受講者からも多くのコメントがありましたので、その一部をご紹介します。
「面白かった。一気に90分、聞きごたえのある西田氏ならではの道産酒のお話でした。道産酒はもとより日本酒が低迷期の時代を知っているので厳しい時を乗り越えている(途中か)現在の状態が良く分かりました。ざっくばらんに、と何度か口にされましたが、おかげで大変わかりやすく理解が深まりました。道産酒を大事にして(飲んだり、贈ったり)いきたいと思ったしだいです」
「日本酒は全国各地で各々味が違う。そして食用米と酒米との違い等、精米割合による種類(吟醸酒、大吟醸酒等)やたんぱく質の含有率等、色々なことがわかりました。まだまだ勉強するともっと面白い為になる事があると思うと、これは楽しい講座だと思った。3回目の現地(栗山)での酒造りの見学を今から楽しみにしている」
「酒米の向上により道産酒が良質でおいしい日本酒になったことを知り、少しでも道産酒を飲むことを再考しました。普段聞けない酒について知識を得たことに感謝します」
「道内のレベルアップは酒米の歴史にもある事が良く解りました」
「酒の事を初めて勉強した。大変ありがとうございました。特定名称酒と云う言葉も知りませんでした。和らぎの水のススメは良いことを知りました。二日酔いも少なくなるのでしょうか」