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主催講座1「北方領土と北海道」

第1回「密漁の海で」

2018/04/16

 4月12日(木)今年度最初の講座となる主催講座1「北方領土と北海道」の第1回「密漁の海で」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、北海道新聞社 編集局 編集委員の本田 良一さん、受講者は50人でした。

 本田さんは「みなさん、こんにちは。私は入社33年目になりますが、根室、ハバロフスク、モスクワなどに駐在し、長く北方領土の問題を取材してきました。今回の講座では、1回目は海の境界でどういう操業が行われてきたか、2回目は領土問題の経緯を、3回目は領土問題に対する現在の日本のアプローチについてお話していきたいと思います」と言ってお話を始められました。
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 以下はお話の概要です。

1.根室のマダラはえ縄漁
日本とロシアは平和条約を結んでいないので、国境線が定まらず、4島と根室との中間ラインを事実上の国境としている。今年1月、根室のマダラはえ縄漁船が納沙布岬沖の北方領土水域で拿捕されたが、根室海峡中心に1946年以来、拿捕された漁船は1343隻(沈没23隻、死亡31人)に及ぶ。拿捕の危険があるのに違反操業が絶えない背景には、「魚をたくさんとりたい」という漁業者の本能とともに、割当量の削減など操業条件が厳しくなってきた状況がある。また、割当量をオーバーしても日本の法律での処罰の対象ではないと云うこともある。

2.北洋サケ・マスと「国益」
戦後1952年に北洋サケ・マス漁が再開されたが、ソ連水域での漁獲量が増えるにつれソ連が規制を強めた。そこで日ソサケ・マス漁業協定を締結し、毎年、漁獲割当量を設定したが、サケ・マス漁は経済効果が大きく(1船団が中規模炭鉱に相当)外貨も稼ぐので、協定に違反する割当量超過も「国益」として黙認された。

3.日本漁船への脅威(アメリカによる規制)
一方で、米国はソ連に先駆けて、日本の漁船に対し操業規制を実施している。サンフランシスコ条約が発効した11日後の1952年5月9日、日米加条約が締結され、西経175度以東のサケ、マス、ニシン、オヒョウの漁獲が禁止された(背景には、日本調査船の操業が疑われ騒ぎになった1937年のブリストル湾問題がある)
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4.違反操業の実態
サケ・マス漁での割当量超過問題が初めて公になったのは、1992年に起きたサケ・マス小型船違反事件だった。日本は追加再生産協力金という名目で、事実上の罰金4,000万円をロシア側に支払った。また、違反操業を黙認させる手数料(黙認料)を要求されることもあり、違反を金で償うようなことも起こった。これに対して、国も割当量を守るために取り締まりを強化したが、根本的な問題は解決されなかった。

5.サンマ漁について
サンマ漁も2010年の操業では漁獲枠を超過した。例年は9月中旬になると、北海道沖へ南下する魚群が同月末まで、北方領土水域に滞留したためだった。結果として、ロシア主張200カイリ水域ので漁獲枠3万5千トンに対して、実際の漁獲量は2万トンオーバーの5万5千トンになった。しかし、サンマ漁船は警備隊の要求に応じて2005年頃から「手数料」を支払っていたので、問題にならなかった。

6.ロシアの規律強化
2014年11月に新しいサハリン国境警備局長が就任し、警備隊員に「手数料」の受け取りを禁止するなど警備隊の規律を強化した。
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7.ロシア産カニ輸入の推移、最近の動向
ロシア地域で割当量超過漁獲が出来なくなった規律強化の流れは、ロシア産カニの輸入に一番よく表れている。カニ輸入のピークは2005年の6万3600トンだが、2017年は3433トンとなっている。
2014年に違反漁業防止協定が発効したが、それ以前から規律強化などで漁獲は減っている。

8.レポ船から特攻船、ロシア密漁船
1947年頃から始まったレポ船、78年頃からの特攻船はロシアの規律強化や日本の取り締まり強化により90年になくなったが、その背景には東西冷戦の終結があった。反面近年は、ロシア船などによる日本水域での密漁が増加している。

 以上が本日のお話のあらましですが、ロシア水域での違法操業の実態と背景が良く分かるお話でした。

 最後に受講者から寄せられたコメントをいくつかご紹介します。 
「我々の食生活の一部が密漁と違法操業で支えられていた事が解り、ちょっと複雑な気がしています」
「新聞の日本人拿捕の記事を見るたび身びいきで日本人寄りの考え方をしていましたが、見えないラインを引かれた海では取り締まりも難しいということがわかりました」
「これまで北方の海でどのようなことが行われていたのか、その状況が良く分かりました。漁業の分野に色濃く領土問題がその影を落としていたということだ。本田良一氏の話はその背景を具体的な資料で語ってくれました。ありがとうございました。現状がよくつかめました」
「鮭、マス、サンマ等の密漁の件数、漁獲枠の在り方等あまり知らない事で勉強になり良かった」




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