7月11日(水)主催講座5「大人の遠足~夕張市を訪ねて」を行いました。参加者は48名でした。
今講座は、日本唯一の財政再生団体として財政再建に向けて日夜挑戦を続けている夕張市の現況と展望について、市担当者から講義を受けます。その後、石炭博物館・黄色いハンカチ広場・滝ノ上発電所を巡り「炭鉱の街夕張」の炭鉱遺産や産業振興・観光産業について学びます。以下、その概要を紹介します。
◇夕張市役所訪問
バスに乗車して9時公民館を出発、10時30分夕張市役所到着。庁舎内は省エネが徹底され、執務室以外の廊下や階段は照明が消され自然採光のみ。
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◎講義「夕張市について」(60分)
講師 夕張市企画課主任 左近 航 氏
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1.夕張市について
〇人口の推移
かつての夕張市は、炭鉱の街として栄え、石炭エネルギーの供給基地として発展。最盛期(S36年)は107,972人を数えた。平成30年5月末現在の人口は8,267人。
*全国の市でワースト(H27国勢調査)
人口減少率 :年-4.1%
15歳未満(少子率) :5.7%
15歳~64歳(生産人口率) :45.8%
65歳以上(高齢化率) :48.5%
*その他
夕張市の知名度 :96.2%
食品想起率 :全国1位
〇財政破綻の経緯
石炭産業の拡大⇒エネルギー政策の転換⇒石炭産業の衰退⇒観光産業への積極投資⇒石炭関連資産の引き受け⇒石炭関連職員流出⇒投資の失敗⇒資金繰り悪化と不適正会計⇒財政破綻
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2.財政破綻について(概要)
(1)おもな要因
・閉山処理費 580億円(財産取得など)
・観光施設の建設 170億円
・観光施設の管理運営費 H17年 年間40億円(三セク委託料)
(2)解消すべき債務の額 353億円(H19~38年度)
(3)返済の状況
・年間26億円(市税8億) ・総返済額116億円
市民生活への影響
・金額よりも精神的な負担感が大きい
・夕張市に「ネガティブなイメージ」
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財政破綻で失ったものはなにか?
・お金だけではなく、市民生活だけでもでなく、「地域の誇り」が失われた。
3.夕張市の課題解決について
〇夕張市が抱える三大課題
「全国で唯一の財政再生団体」「10年間で3割の人口減少」「全国一の高齢化率50%」
世界で誰も経験したことがなく今後日本中が直面するであろう課題にいま向き合っている。
〇財政破綻後の10年間:財政の再建に奔走
・全国最低水準の市民サービス ・生命に関係のない事業の削減
その結果...10年間で3割人口減少
〇夕張市地方版総合戦略の策定(H28,3)
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〇これからの10年間:「財政再建」と「地域再生」
・地域再生=人の距離が近い状態
・人口減少=人の距離が離れること(物理的・精神的)
人の距離を近づける施策が必要
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Θコンパクトシティ構想
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Θ拠点複合施設の整備
・待合交流スペース・児童乳幼児スペース・図書コーナー・多目的ホール
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Θ財政再生計画抜本見直し(29年度実績)
・若者定住への取組み(住環境)
・必要な人材を地域でつくる取組み
創業支援補助2件・地域人材育成補助7件・資格取得補助9件
Θ認定こども園の整備(H30年度実施設計32年度供用開始予定)
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Θ日本一の薬木産地化事業と就労機会の創出
Θ小・中・高 教育環境整備
・ゆうばり小学校、夕張中学校、夕張高校
・マンツーマンオンライン英会話(小・中・高)
Θ財源確保の取組み
~ふるさと納税を活用した「クラウドファンディング」~
Θ公設塾『夕張学舎キセキノ』
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質問コーナーでは受講者から、ふるさと納税と返礼品・夕張メロン・廃校や廃住宅の活用、石狩市の将来と重ねて限界集落対策等多くの質問があり、左近さんから丁寧な回答を頂きました。
市役所での昼食後、バスで出発。車窓からは、シャッターの降りた商店街や空家、廃屋が見える一方で、新しい集合住宅や新築戸建住宅、整備中の施設、夕張メロンのビニールハウス群など再生への動きを確認することが出来ました。
◇夕張市石炭博物館
1983(昭和53)年にオープンしたテーマパーク「石炭の歴史村」のメイン施設でした。2階建ての本館と坑道展示、国登録有形文化財の炭鉱坑道「旧北炭夕張炭鉱模型坑道」からなります1・2階は夕張の歴史や石炭産業の変遷など展示空間。地下展示空間及び模擬坑道では炭鉱の様子を本物に触れて体験することが出来る。
〇職員による説明夕張石炭博物館は「生きると向き合う博物館」を新たなコンセプトとしてリニュアルオープンした。ここ夕張で毎日を生と死に向き合い支え合って暮らしていた炭鉱マンや、人々の歩みに触れて、自分自身の「生きる」に向き合うきっかけとして頂きたい。
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〇1・2階展示:炭都の歴史に触れる
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〇地下展示室:臨場感ある機械の数々と模擬坑道
マネキンを使ったジオラマや実際に使った機械が展示されており、石炭の採掘について学ぶことができる。
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〇地上へ
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◇幸福の黄色いハンカチ想い出広場
1977年公開、第1回日本アカデミー賞最優秀作品賞授賞映画『幸福の黄色いハンカチ』(山田洋次監督)で主人公島勇作(高倉健)と妻光枝(倍賞千恵子)が再会する感動のラストシーンのロケ現場をリニュアールしたもの。
○受付とカフェ
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〇炭鉱住宅外観
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〇幸福の聖地:来訪者の想いで染め上げられた空間
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〇展示室
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◇滝の上発電所
滝の上発電所は、1925(大正14)年1月に北海道炭礦汽船㈱が自家発電設備として建設。のちに建設した清水沢水力・火力発電所とともに石炭産業を動力面から支えてきた。その後、平成6年に北海道企業局が譲渡を受け発電継続。平成25年から施設老朽化のため改修工事に着手、平成28年に発電再開。
〇旧発電所建屋
未公開施設ですが、今講座のため特別に見学させて頂きました。
赤いレンガ造り。玄関上部窓の「北斗星」は旧北海道炭礦汽船㈱の社章(ステンドグラス)。
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〇北海道企業局職員による説明
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〇電気事業(道営事業所の概要)
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〇発電機〈2台〉
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〇改修事業
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〇新発電所の一部
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◇夕張市農協銘産センター
夕張メロンを買って夕張市に貢献しようと、特別に立ち寄りました。高級夕張メロンが並んでいました。
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◇道の駅マオイの丘公園
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小休止(トイレタイムと買い物)の後、石狩への帰路につき、午後5時20分過ぎに公民館へ到着しました。厳しい日程にもかかわらず、熱心に参加して頂いた受講者の皆さまお疲れ様でした。感謝。
受講者からは、夕張を応援する内容の感想が多く寄せられました。いくつかを要約して紹介し、今講座の講評に代えます。
「楽しみにしていた夕張の旅、大満足?カレッジの皆さんと一緒だからこそ聞けるお話、見学であると実感。若い役所の左近さんの熱意溢れる説明、準備に頭が下がる。石炭博物館、展示方法も良かった。映像も展示物もコンパクトでありながら見ごたえ十分。説明して下さった方の思いも伝わり、頑張っている皆さんに応援したい気持ちになった」「14~5年前に訪れて、その後破たん、ずっと気になっていた。一生懸命に再興をはかり頑張っている様子が見られ安心した。大きくならなくても、幸せに暮らしていける街になってほしい。水力発電所もっと造ってほしいですね」「まず夕張市役所の左近さんの前向きな姿勢に感激。石狩市もいつ破綻するやもしれず今から手立てをして欲しい。少し忙しい日程だったが、普段行く機会がないので良かった。道の駅にもよることが出来て満足」「市役所の若い職員がこれからの10年を目指し地域再生に懸命に努力を続けている姿に感動した。叉、夫婦で過酷な肉体労働で採炭している地下モニュメントを見て現世と比べて考えさせられた。北電が多数の道民が反対している原発を再開しようとしている時、道の直轄発電所が稼働している事を今日の研修で初めて知った。カレッジ運営スタッフの皆さんの企画で今日も大変良い講座でした。ありがとうございました」「初めての石炭博物館は期待以上だった。滝の上発電所は内部の説明は初めてで歴史を感じた。数人の係員に質問したがどの方も感じ良かった」「夕張の人口8,200人、1日1人減と聞いて驚いた。その少ない人口で、あのように美味しいメロンを作られることにまた驚く。私には夕張を訪れ、メロンを食べることぐらいしか出来ないが、日々奮闘している市の職員、農家の方、夕張高校の皆さんを応援する」「夕張市の前に進もうと努力する姿に感動した。これからの石狩市の方向の参考になる点があった気がする」「夕張市の苦悩、そしてそこから脱却しようと奮闘する姿を直接市の担当者からうかがえた企画が大変良かった。普通の観光旅行ではできえ得ぬ体験(学習)でした」「もしも原油価格が30ドル以上値上げになったら石炭復活?夕張市の往年の賑わいに産炭地出身者の夢の夢だ」「財政赤字、少子高齢化は夕張に限らず私たちの町の課題でもあり、勉強になった」「時間が少なく、今日は夕張の石炭のみで充分だった。博物館も時間がもっとあればよかった」「石炭博物館もう少し滞在したかった。もっとコンパクトかと思ったが広いのに驚いた。解説員の方の再生夕張にかける思い認定感動した。何かの形で夕張を応援したい。幹事の要所要所のトイレの気配り有難うございました」