12月4日(火)、主催講座12「続・サイエンス教室~実験で身のまわりの不思議をさぐる~」の第3回「磁石はどうやって鉄を引き付けるの?~磁力線なしでは暮らせない~」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は磁性物理がご専門の北海道大学名誉教授でサイエンスアイ・メンバーの宮台朝直さん、受講者は33名でした。
最初に、電磁誘導を発見したファラデーの紹介がありました。
【Ⅰ】ファラデーについて
ファラデーは、1791年、ロンドンに生まれた。1831年、40歳で電磁誘導を発見。50歳で磁力線の発想をするも、学会では認められず。1864年、マクスウェルが電磁場の方程式を完成して、ファラデーの考えが正しいことを証明した。
◇マクスウェルの電磁場の方程式(電磁気の基本法則)
以上のお話の後、実験に入りました。
3人ずつ座ったテーブルの上には、実験道具として、実験台(磁石や鉄棒などを固定するためのもの)、白紙(この上に鉄粉を敷く)、鉄粉を入れた小さなプラスチック容器、棒磁石、鉄棒、アルミ棒が用意されていました。
【Ⅱ】実験 磁力線の観察
(0)予備実験
実験台に厚い紙を敷き、その上に白紙を敷く。鉄粉入りのプラスチック容器のふたを取り逆さまに振って、鉄粉を均一に撒く練習をする。
(1)実験台の溝に棒磁石を置き、白紙を置いて、鉄粉を撒き、出来た磁力線を観察する
(2)次は、棒磁石の脇にアルミ棒を置いた場合の磁力線を観察する
(3)最後に、棒磁石の脇に鉄棒を置いた場合の磁力線を観察する
【Ⅲ】磁力線の性質
・磁石のN極から出てS極に入る(方向がある)
・磁力線は縮もうとする性質がある(ゴム紐のように)
・磁力線上に置かれた鉄粉は、磁力線の方向に磁化される(磁石になる)
※磁石が鉄を引き付けるわけ:磁石から発生した磁力線を鉄が引き込むので、磁力線が縮もうとする性質による
【Ⅳ】物質の磁性
・強磁性体―磁石に付くもの
鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、種々の酸化物(Fe3O4、フェライト等)や化合物等
・常磁性体―普通の磁石には付かないが、強磁場の中では付く
アルミ(Al)、マンガン(Mn)等
(強磁性体もキュリー温度以上では常磁性体になる)
・反磁性体―磁石に反発される(ファラデーがPやBiについて発見)
銅(Cu)、炭素(C)等
※超電導体は完全反磁性(磁力線が侵入しない、リニアモーターカーに利用)
【Ⅴ】演示実験(宮台さんが行う実験を投影機で投影)―電流が作る磁場(=磁界)
コイル電流の周りの磁力線について
空心の場合、鉄心を入れた場合について、電流が磁石に及ぼす力を実験
応用例:電動機(モータ)、起重機、コンピュータ等
【Ⅵ】演示実験―電磁誘導
コイルに磁石を出し入れする、コイルの前を磁石が横切る
応用例:発電機、変圧器(トランス)
【Ⅶ】磁力線なしでは暮らせない
光、テレビ、スマホ等
家庭の電気
電車等
磁力線は様々な面で利用されていて、それなしでは暮らせない。
さらに追加の演示実験もやって頂きました。
【Ⅷ】おもしろ演示実験
(a)アルミ管中をゆっくり落ちる磁石
(b)鉄棒を回転しながら滑り落ちるリング磁石
【その他】
今話題の4K、8Kテレビの受信方法についてもお話がありました。
以上が本日のお話と実験ですが、お話を聴いて、磁力線についての理解が進み、実験は皆さん楽しんで取り組んでいました。
最後に受講者のコメントをいくつか紹介します。
「中学生に返った様でとても良い気分です。磁力線の魅力に驚きました。美術品の様な幾何模様が又すばらしい。久し振りに楽しい勉強をした。理解度が進むと更に面白さが増すのが良い。実験モーター、発電機の基本を習い、理解度を深めた」
「宮台先生のご年齢を聞いてびっくり!素晴らしい事です!実験、先生のお話を聞いての参加者の皆さんの真剣な態度に感心した次第です。楽しかったです」
「大変良いお話、ありがとうございます。最後のテレビのアンテナの話、8Kのテレビにすれば、アンテナを変えなければならないようで、今のテレビで充分と思います」
「鉄粉の変化を確認する事が出来て、大変良い体験となった。ありがとうございました」
「面白かった。実験が楽しい事を思い出しました。3回共に実験は良かったです」
「70になってこのような実験ができるとは思っていなかったので、良い体験になりました」