2月9日(土)主催講座8「北朝鮮を考える~現状と今後の展望~」の第2回「北朝鮮の核開発問題と今後の日本への対応」を行いました。この第2回は元来9月8日に行うはずだったのですが、地震の為に中止し、本日改めて行ったものです。講師は、北海道新聞記者の方、受講者は36名でした。
今回のタイトルテーマは、北朝鮮の核開発問題でしたが、お話は主に韓国についてでした。
1.韓国ってどんな国なんだろう?
①北と南に分かれた分断国家である
②日本と文化を共有している
・今はハングルだが、元々日本と同じ漢字圏
・食文化や歌などは似ている
・中国とは地理的に直接つながっていない
・米国の影響下にある
③いつも日本を非難している
韓国からは年間500~600万人が日本を訪れていて(人口割合では中国より多い)、日本に親しみを持っている
④約束を守らない
松本さんの経験では、個人的には約束を守る人達。世界には約束さえ出来ない国もある。
⑤韓流スターが人気
・国と国はぎくしゃくしても、韓国の芸能や食べ物は日本で受け入れられている
・韓国の大きな書店では、日本コーナー(村上春樹が人気)があり、日本文化に関心を持つ韓国人も多い
⑥家電やスマホで世界を席巻
⑦制度の共通性、行政に対する一定の信頼
災害時の救援システムなどは共通している(胆振東部地震の際、韓国総領事館は旅行者の避難所受け入れを要請、日本も受け入れた)
2.文在寅大統領はどんな人?
朝鮮戦争で北から韓国へ避難してきた貧しい両親のもと、慶尚南道に生まれた。学生時代は、朴正熙政権に反対する民主化運動に関わる。大学卒業後は弁護士に。後の大統領廬武鉉と知り合い、共同で法律事務所を開業。廬政権では、大統領秘書室長など要職を歴任、南北首脳会談を実現させた。17年に大統領に。
※選挙時の様子が動画で流されましたが、日本とはかなり趣が違いイベント的な感じでした。
□公約
・北朝鮮との関係改善、対話を非核化と並行で進める
・慰安婦問題合意は、再交渉すべき
・雇用拡大
・南北経済協力事業、開城工業団地の創業再開
・南北のメディア・社会文化交流の活性化
・朝鮮半島の日本海側(東海側)に経済ベルトを構築、朝鮮半島平和協定締結を推進
・南北の段階的な統一を目指し、まずは経済統合を優先
□対して保守派の主張
文在寅政権では、安全保障が不安(洪氏)。保守派は、高齢者が多い。
3.大統領支持率の今
経済政策の失敗(格差は是正されず、雇用主も困難に)や南北政策の行き詰まりにより、昨夏の勢いはなくなっている。
4.溝が深まる日韓関係
□徴用工問題
・判決への受け止め
日本―判決は暴挙、国際秩序への挑戦。韓国―三権分立の中で尊重しなければならない。
・相手国への要求
日本―韓国側の内政問題。韓国―日本の指導者たちが過激な発言を続けることに深い憂慮。
・今後の対応方針
日本―日本企業の資産が差し押さえられた場合の対抗措置を検討。韓国―韓国の政府、企業と日本企業による基金を設立する案が浮上。
※問題点
日本側―請求権協定で終わったから「もう責任なし」で、良いのか?加害者側の道義的な態度として別のメッセージの出し方があるのではないか⇒韓国側に攻撃材料を与えているのではないか?そもそも個人請求権は、日本政府も最高裁も認めている。
韓国側―請求権協定で決着した問題とこれまで発言してきた事への整合性。自分の国の裁判で対応を迫られているのに、日本への批判に結び付けている。
※今後の流れ
日本政府は、韓国政府に仲裁委員会への付託を要請⇒韓国が応じない場合⇒国際司法裁判所への提訴⇒難しい
※解決策
国際司法裁判所で対応してもらい、痛み分けとするしかないのではないか?
□慰安婦問題
元慰安婦支援のため韓国政府が財団を設立、日本は10億円を拠出。問題を最終的、不可逆的に解決したはずだった。
※両政府は、誰のために合意を結び、そして対立しているのか。当事者の願いは何か。
成功例としては、サハリン残留韓国人問題の解決、がある。
□現在の情勢
アメリカは対北朝鮮政策で、日本には経済制裁への協力を、韓国には融和政策への協力を求めてそれぞれに役割分担させているので、両国の仲裁に入らない。レーダー照射問題も、本来であればアメリカが仲裁に入るはず。北朝鮮、韓国、アメリカが近づく中で、東アジアにおける日本の役割が希薄になってきている。
□平昌五輪の意義
・日米韓朝の政府高官が参加、対話のスタート
・南北協調路線の雰囲気醸成。合同チーム、合同入場、美女軍団
5.最近の韓国事情
・日本の高齢化対策に高い関心を持つ(介護保険)
チキン屋が多い―日本より定年が早く(55歳くらい)、年金も少ないので退職後開業。
・訪日韓国人増加(日本への関心高い)
支えているのは、LCC。訪日が多いうちにさらに増加させる対策が必要。
・自由貿易は日本より進んでいる(国内産業保護政策も様々行われている)
以上が本日のお話の概要ですが、松本さんは最後に「日本と韓国は、様々な問題はあっても、お話した通り共通した部分も多いので、お互いを理解し合う努力を続けていけば、手を携えていけるのではないでしょうか」と結ばれました。
最後に受講者から寄せられたコメントの一部をご紹介します。
「日本と朝鮮の共通している共有の制度、感覚等、興味深く聞けました。近くて遠い(隣国)のごく日常的(普通の感覚)な捉え方でお話されているのが良かった。選挙の仕方など(色、数字、音楽、若者)日本との違いを知ることができ納得!と云う感じでした。今この時の日韓の問題の不協和音、対立感情に憂いています」
「現大統領の下での韓国について、勉強になりました。『行いを憎んで人を憎まず』と云う心を互いに持って今後の日韓関係の未来を切り開いていってほしい。北朝鮮と心をどのように繋いで具体的な活動を進展させていけば良いのか、聞きたかった(人道的な心はつながるのでしょうか)」
「日韓関係が停滞している現在、韓国の国民性が理解できた。只、北朝鮮の核問題と今後の日本への対応に対するメインテーマの解説が無かったのが残念」
「隣国である韓国とは積極的な話し合いをすることで友好関係を保ち、文化や経済面で互いに有益な関係にして欲しいと云うことが強く伝わった。周辺に於いて友人には韓国の大学後輩も多いことから個人的には好きな国と思っています」
「日本と韓国の問題は、似たような問題が世界中で沢山ある中の一部である。長年かかっても解決されていない。イスラエル、パレスチナ、パキスタン、印度のカシミール、ロシアのクリミア、イギリスの北アイルランド他、その外まだ沢山あるだろう。日本と韓国も今のような形でいつまでも続くのではなかろうか」
「マスコミを通じて知る韓国と今日の韓国からの目線の情報の違いを知った。大変有意義でした」