1月16日(木)、まちの先生企画講座4「北海道の歴代長官」の第1回「開拓使・三県の設置と長官・県令の足跡・業績」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、武石詔吾さん、受講者は37名でした。
北海道の行政区分は、開拓使時代(明治2年~明治15年)14年間、三県時代(明治15年~明治19年)4年間、北海道庁時代(明治19年~昭和22年)61年間、北海道時代(昭和22年~令和2年)73年間と変遷していますが、この講座では、それぞれの時代の歴代長官の足跡や業績を辿ります。
1.開拓使の設置
明治政府の三大急務のひとつであった蝦夷地開拓を進めるため、明治2年東京芝の増上寺に開拓使が置かれたが、これは中央官庁の「省」と同格であった。
2.開拓使設置前後の状況
当初は、松前藩の館藩や箱館奉行所系箱館県なども併存、11カ国86郡のうち16郡を支配するにすぎなかったが、明治5年になりようやく北海道6支庁のすべてを統治することになった。
なお、現在の14支庁(振興局)になるのは、明治43年。
3.開拓使初代長官 鍋島直正(明治2年7月~明治2年8月)
佐賀藩・肥前10代目当主。
◇業績
①北海道の命名、国郡の設定(11か国86郡)
これについては、松浦武四郎の功績が大きい。
②人材登用―開拓使の体制づくり
島義勇(札幌の構想)、岩村通俊(本格的町づくり)、松浦武四郎(北海道産みの親)、松本十郎(根室担当)、岡本監輔(樺太担当)、竹田信順(宗谷担当)
4.第2代長官 東久世通禧(ひがしくぜみちとみ、明治2年8月~明治4年10月)
歴代行政長で唯一の公家出身。
◇業績
①拓殖予算1千万円の調達
②ガルトネル事件の解決(費用6万両《1両は今の5万円に相当》)
※ガルトネル事件―プロイセン(ドイツ北部)の貿易商ガルトネルが江戸末期に箱舘奉行から許可を得た七飯地区の開拓権を開拓使が6万両弱の賠償金を払って解消した事件。
明治4年、開拓使札幌出張所完成(札幌を北海道の首府に)。明治6年、開拓使札幌本舎完成。
・札幌の町づくり
島義勇(佐賀藩士、初代主席判官、蝦夷地・樺太探検の経験を持つ、札幌市役所ロビーや北海道神宮、佐賀市に銅像あり)が中心となり、南1条西1丁目を起点に町づくり。
5.長官空席時代(明治4年10月~明治7年8月、黒田清隆が次官)
◇開拓使旗(北辰旗)の制定
明治5年、蛭子末次郎の図案考案により制定、明治11年掲揚中止、同15年廃止。
6.第3代長官 黒田清隆(明治3年次官、明治7年8月~明治15年1月まで長官、鹿児島出身、函館戦争では政府軍の参謀)
◇業績
①明治3年(次官時代)、北方経営に関する建議書(石狩に本府、お雇い外国人による基礎調査、津田梅子ら女子を含む留学生の派遣《自らも明治4年に渡米》)を提出。
②開拓10年計画(明治5年~15年、費用1000万)
開拓使顧問ホーレス・ケプロンの方針により、官営工場設置、海陸運輸の設備、札幌農学校の設置、農鉱業の振興、屯田兵制度の創設、移民の促進等を行った⇒これらは北海道初の開拓計画で、今日の北海道の基盤となっている。
黒田は、北海道開拓の祖、と云うべき存在。
・開拓使仮学校:札幌農学校の設置
北海道大学等のルーツ。明治4年4月開校(我が国初の官立学校)
・官営工場の設置
石狩の缶詰工場、札幌のビール工場など多数。建物に★マーク(札幌ビールのマークとして残る)を付けた。
・屯田兵制度創設(明治7年)
目的は、北辺の防衛、北海道の開拓、士族救済。
明治8年、琴似入植(198戸965人)
・集治監設置と樺戸集治監開庁(明治14年)
目的は、国事犯、重罪犯等を遠隔地に収容すること、開墾や更生、定住を計ること。
石炭や硫黄の採掘などの労働力としても活用された。
・お雇い外国人技師
農務省長官のホーレス・ケプロンを招聘。ケプロンは、道路建設、工業、農業など全般にわたる提言を行った。
開拓使お雇い外国人76人(人数については諸説ある)のうちアメリカ人が46人で61%。
主なお雇い外国人―クラーク(教育)、ライマン(鉱山)、ダン(酪農)、クロフォード(鉄道)
③有能な人材の登用
榎本武揚、大島圭介、新井郁之助
※北海道開拓の祖とも云うべき黒田も郷里・鹿児島での評価は、案内板のみで銅像はなく、西郷隆盛の絶大な人気とは大きく隔たっている。
◇官有物払い下げ事件
官有工場を極安値で民間に払い下げた事が、弾劾を受けた。
7.第4代長官 西郷従道(明治15年1月~明治15年2月)
官有物払い下げ事件の影響により開拓使廃止の建議が提出された。
西郷の任期は、歴代最短の1カ月。「開拓使時代」と「三県時代」の橋渡し役であった。
※開拓使の廃止
主な理由は、10年計画の終了、官営工場の赤字、薩摩閥の解消など。
以上が、本日のお話の概要ですが、武石さんの豊富な知識が随所に垣間見えて、大変厚みのあるお話でした。次回、次々回が楽しみです。
最後に受講者から寄せられたコメントをいくつかご紹介します。
「コンパクトな資料、大変わかりやすい解説、興味深く楽しく受講出来、大変感謝しています。次回も楽しみです」
「資料の内容が豊富で非常に分りやすい」
「学校で教えてもらえなかった北海道の歴史、楽しく拝聴しました。来週の講義も楽しみにしています。電気も暖房機もない極寒の地で当時の人達の御苦労に思いを馳せています」
「大変良かった。話がわかりやすく、理解しました。第二回、第三回が楽しみです」
「北海道開拓に功績のあった人々の事を詳しく解説してもらい大変勉強になりました」
「道庁のOBとして今回の三回の講座、大変興味を持っています。大変良い話。2回~3回目を楽しみにしています」