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主催講座14「続々・サイエンス教室~身近な電子機器と数のはなし~」

第1回「身近な電子機器のはなし」

2020/02/16

 令和225日(水)講座14「続々・サイエンス教室〜身近な電子機器と数のはなし〜」の第1回「身近な電子機器のはなし」を石狩市花川北コミュニティセンターで行いました。講師は元北海道大学教授の三島瑛人さん、受講者は40名でした。

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三島さんには平成241月に講座「進化する石狩湾新港〜いま、IT(情報通信)産業の現場では」の第1回として「光ファイバー〜通信技術の今と今後」をお話しいただきました。今回は、最初に北海道大学で研究されていた分野(真空管、半導体発振器、電子と電磁波の相互作用、レーザー光の利用、照明光通信、非線形光学など)のことについて簡単に紹介された後、身近な電子機器の仕組みなどについて興味深いお話をされました。以下にその概要を紹介致します。

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1.CDのはなし

・直径12㎝のCD(光ディスク)には非常に細かい穴(ピット)が刻まれていますが、これを約1,000倍の直径約100mの野球場に拡大して見てみます。ピット列とピット列の幅は1.6(マイクロメートル)、ピット(穴)の直径は0.5ですが、これを野球場として見ると、幅1.6㎜、直径0.5㎜のピット列が並んでいることになります。CDでみると1㎜625本もの細かいピット列があることになります(下図)。

・ピットの深さは0.13㎛(野球場でみると0.13㎜の深さ)、ここにレンズを通して波長0.78㎛の半導体レーザーを照射してCDの細かい溝を読み取っています(下図)。

・CD(光ディスク)の取り扱い方を説明します。CDはチリやほこりを嫌うため1㎜の厚さの保護膜で保護していますが、チリやほこりを払う時には中心部から外に向かって放射状にぬぐう必要があります。円周状にぬぐうと保護膜に傷がつきデータの補完ができなくなり、音が抜ける可能性があります。

・ブルーレイディスク(BD)はより細かくなり、CDと比較するとレーザー波長が約1/2、ピットの段差が約1/2、ピットが約1/5になっています。

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2.LEDとLDのはなし

・LEDはLight Emitting Diode(発光ダイオード)、LDはLaser Diode(半導体レーザー)のことで、LDはLEDを高度化したものと言えます。半導体は金属のように電気を通す部分とプラスチックのように電気を通さない部分があります。ゲルマニウム(G e)やシリコン(Si)などが代表的な半導体です。

・半導体にはP形半導体とN形半導体があります。P形半導体は、GeやSiなどの属の原子に電子不足のホウ素原子(B)のような不純物をわずか入れてあり、これによって中に正孔(Positive hole)ができ正孔の移動によって電流が流れます。一方、N形半導体は電子過剰のリン原子(P)を入れることによって過剰な電子(自由電子)の移動が起こり、電流が流れます(下図)。

・P形半導体とN形半導体を接触させると(PN接合)N形の自由電子がP形へ移動しますが、電子の流れはすぐ止まります。これに外部から電圧を加えると自由電子が流れて電流が流れ続けます。P形半導体とN形半導体の境界付近で光が出ます。

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・LEDの発光の仕組みについて説明します。下の図のように、刺激になる光(雑音)があると自由電子と正孔が合体し、余ったエネルギーがLED光として放出します。図の禁制帯の幅(エネルギーギャップ)は半導体の組み合わせによって調節することができ、それに応じてLED光の色が変わります。例えば、ガリウム/ヒ素(GaAs)の半導体の場合は0.65 ㎛の波長の光を出します。

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・LEDのカラー化は下の図のように、三原色である赤青緑の3つのチップを一つのパッケージにして色を調節したり、青色チップと蛍光体の組み合わせでカラー化する方法などがあります。青色チップと黄色系発光体の組み合わせでは白色光となり、一般の照明として使用できます。

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・半導体レーザ(LD)は0.3mm四方のチップの中に発光ダイオード(LED)を含む活性層、金属電極(上下)、電流狭さく層(絶縁物)、クラッド層などが組み込まれています。電子や正孔は活性層の中を上下に流れて光を発生しますが、その光は活性層の左右にある屈折率の低いクラッド層との境界で反射されます。何回も何回も反射が繰り返されるうちに光は増幅されて、レーザー光となります(下図)。

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・半導体レーザ(LD)の特徴としては、発振周波数の幅が狭く、波面に凹凸がないなどの特徴があります。そのため、小さな点に光を集めることができ、CD、DVDおよびBDのような細かい線や小さな凹凸を感知して読み込むことができます。

 3.液晶ディスプレイのはなし

・液晶テレビは液晶分子、偏光板および配向膜などからできています。テレビの内部で信号を伝える光(電磁波)は、光の進む方向とは垂直に360度の方向に振動しています(下図の左)。ここに偏光板を挟むと、ある振動方向の電磁波のみを取り出すことができます(下図の右)。方解石や偏光サングラスなどを使えば偏光を分離することができます。

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・液晶分子は幅1nm、長さ10nmほどの小さな米粒のような形をしています。液晶分子は一般にゆるやかな規則性をもって並んでいますが、一定方向に微細な溝のある板(配向膜)に接触させると溝に沿って液晶分子が並びます(下図)。

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・溝の向きを90度変えた2枚の配向膜で液晶をはさむと液晶分子は90度ねじれて配列します。ここに光を通すと光も90度ねじれながら通過していきます(下図、(a))。ねじれた液晶に電圧をかけると液晶分子は垂直方向に並び方を変えて並び、光は分子の並びに沿って直進します(下図、(b))。結果的として、電圧をかけた場合は下の偏光板で遮断され、光は透過しないことになります。電圧をかけていない状態では光が通り、電圧をかけると光が遮断され画面上が黒くなります。つまり、電圧が引き金となって、液晶が光のシャッターの機能を果たします。

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・薄トランジスタ(TFT)カラー液晶パネルの構造を下図に示します。ひとつの細かい画素ごとに電圧のオンオフで光を通したり黒くしたりして、全体としてテレビの画面をつくっていきます。下の蛍光ランプ(あるいはLED)は、液晶自体が光を出さないため光源として使用されています。

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4.電子レンジのはなし

・電子レンジは食品などを温めるのによく使われています。食品が暖まるのはマグネトロ(真空管)ら発生するマイクロ波が食品に当たっているからです。電子レンジの構造を下の図に示します。

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・マグネトロンの内部は真空になっています。中心の円柱が陰極で電子を放出し、その周りを陽極金属が取り囲んでおり、空間部を電子が走り回っています。

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・マグネトロンは2.45GHz2,450MHz)のマイクロ(電磁波)を出していますが、エネルギー変換効率が約80%と高く、高出力で(家庭用でも600W1,000W)、ほとんど金属製で丈夫であるという特徴をもっています。2.45GHzが選ばれたのは、水の吸収が適度で食品の内部までマイクロ波を浸透させることができ、電波法で規制されている範囲内の電磁波であること、波長の1/4が約3cmで電波漏れ対策が比較的容易であることなどの理由があるからです。

・周波数を横軸に、水と酸素の吸収度合いを縦軸にとって関係を示したのが下の図です。水(水蒸気)の吸収が高いところではなく比較的吸収の低い周波数領域(例えば2.45GHzの周波数)を使っているのは、低い周波数の方が食品の内部まで電磁波を浸透させることができ、中心部まで温めることができるからです。

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・強い電磁波は人体に有害なので電子レンジから出てくるマイクロ波を遮断する必要があります。基本的には金属で覆うことによって遮断することができますが、前面のガラスの部分には金網(あるいは穴あき金属板)で覆い、ドアの隙間はチョーク構造として電磁波の漏れを防いでいます。

 

 講座の締めくくりとして、約50年前に感動した思い出について話されました。昔は体育館のような広い場所で4人がかりIC(集積回路)の拡大された回路図をチェックしていました。ところが今では拡大されても細かすぎて肉眼ではチェックできず、コンピューターでチェックするようになったとの思い出でした。


 最後に受講者から寄せられた感想をいくつか紹介します。

「身近な電子機器の仕組みが何となく多少分かった気がしました」

「通常はあまり聞く機会がない専門的なお話を市民講座で聞かれて良かった」

「LED、LD等のとっても興味深く、自宅に帰ってからいろいろ調べて見たいと思います。楽しく興味をもって講座を受けることが出来ました。次回が楽しみです〜」

「未知の分野というか、全くのニガ手な領域のハナシでありますが、何か楽しい時間でした。日常生活の中に身近に使われている物や製品ですので、ちょこっとでも知るのは大事だと思いますし、とても敷居を低くして、難しい話しもとっつきやすくお話しいただけて良かった!と感謝しています

「物理は難しいと思って参加しましたが、予想通りむずかしく、ほとんど理解できませんでした。でも、講義は何となく興味深く感じました」

「CDの掃除方法が違っていた。今までレコード盤と同じ方法で行っていたので、CDに不具合が起きていたのか!!」

「偏光!フィルターで水面の鴨etcを写す時に使う用具で、ギラギラする水面を消し去ることができる原理が判りました。よく反射を抑えてデジカメで使用しています。19,000円くらい、高いですね」

「レベルが高い話なのか、当方があまりにもレベルが低いのか、もう少しレベルを下げて欲しかった」




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