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主催講座14「考えよう石狩市のエネルギー~再生可能エネルギ―と風力発電~」

第1回「新しいエネルギ―社会への挑戦~エネルギー・経済・雇用について考える~」

2021/01/24

 令和3年1月19日(火)主催講座14『考えよう石狩市のエネルギー〜再生可能エネルギーと風力発電〜』の第1回「新しいエネルギー社会への挑戦〜エネルギー・経済・雇用について考える〜」を石狩市花川北コミュニティセンターで行いました。講師は北海道大学名誉教授で北海道職業能力開発大学校校長の近久武美さん、受講者は40名でした。近久さんは石狩市エネルギー地産地消事業化検討会委員長を勤めておられます。
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 今後廃止される原子力発電所はどうなるのか、頻発する集中豪雨や土砂崩れ、荒れた農地と食糧難、そして格差社会と失業者増加など、日本の将来はどうなるのか不安になっていると述べられ、話を始められました。以下にその概要を紹介致します。
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1.地球温暖化〜この先、地球環境はどうなるのだろう? 
・最近は集中豪雨や竜巻、魚類生息地の変化、デング熱媒体蚊の北上など異常気象に起因する現象が身近に起こっている。この異常気象は過去1000年間の気温推移を見ると不思議ではないことが分かる。1900年以降になると気温が急激に上昇し(下図)、炭酸ガス(CO2)濃度もそれに合わせて上昇している(下図)。化石燃料を燃やすとCO2が発生し、CO2などの温室効果ガスが大気圏内に増えて地球を覆い、地球上から放出される光を遮断して地表に戻すため大気の温度は上昇する。
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・CO2濃度を減らして温暖化を抑えるために森林を増やすのが良いと言われている。しかし、森林面積を増やすには限界があるので、長い目で見ると究極的な解決策とならない。森林が光合成で100のCO2を吸収しても、50は森林の呼吸で吐き出し、50は土壌に吸収して200〜300年後に土壌内のバクテリアで分解されて再び地表に出てくるからである。長期的にみて森林はCO2を吸収したことにならない。

2.次世代のエネルギー選択
・CO2を出さないエネルギー技術として原子力発電と再生可能エネルギーがある。原子力発電には、国が壊滅するかもしれないほどの事故の可能性、数万年にわたる放射性廃棄物処理、それにウラン燃料が後80年分しかないなどの問題があり、あまり当てにできるエネルギーではない。
・有望なエネルギーは風力エネルギー、太陽光エネルギー、バイオマスエネルギーおよび地熱エネルギーなどの再生可能エネルギー(豊富な自然エネルギー)である。
・北海道で現在使っている電気量を風力発電50%、太陽光発電50%で賄う場合の設備面積とコストについて考えてみる。風力発電の場合は径65mの風車を200m間隔で8列並べるとすると日本海側に45kmの長さで3箇所、太陽光発電では十勝地方に直径12kmの場所に太陽光パネルを設置するだけでよい(下図)。食糧生産に比べてわずかの面積で必要なエネルギーを得ることができる。
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・一方、コストはどうか?2016年の水力以外の再生可能エネルギーの割合は10%であるが、それを50%まで増やしても年間総コストは殆ど変わらない。60〜80%にすると総コストは上昇するが、送電線を太くしたり(Case B)、蓄電池を使用したりするなどの対策を講じると(Case C, D)、2016年時点の約1.5倍に抑えることができる。再生可能エネルギーの導入コストはそれほど高くない(下図)。
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・面積やコスト面から見て再生可能エネルギーの導入には問題がないが、なぜ導入が進まないのか?従来のエネルギー会社は不利益となり、再生可能エネルギー会社が利益を得るという獲得利益分配の変化が起こり、古い行政ルールなどもネックとなって導入が進まないのだと思う。

3.従来メカニズムによる成長の限界
・国内総生産(GDP)が継続的に増加しているにもかかわらず(下図)、失業者や自殺者が増加している(下図)。これは薄利多売と貧富格差の増大によるものである。
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・今までは安さを求めて安いものを買っていたが、安さを競争する経済は限界にきている。払ったお金は給料(雇用)と裏腹であるので、これからは地域におけるお金の循環に目を向けなければならない。エネルギーについても日本は大部分を輸入し海外に代金を払っているが、これを地域内で循環して使うように変換できないだろうか。すなわち、再生可能エネルギーを主体とした地産地消型エネルギーインフラを形成して雇用を創出し、エネルギーを自給し、環境保全を実現できるような社会に変換すれば良い。

4.再生可能エネルギーで市民が豊かになるための留意点
・石狩市は風力や太陽光エネルギーの導入で豊かになろうとしているが、注意する点がある。風車はヨーロッパから、太陽光電池は中国から輸入しており、再生可能エネルギー導入で利益を得るのは海外や道外の事業者である。そこで、石狩市としては、地元の優位を生かして有利な条件で出資して利益を得るようにし、建設や保守・点検は地元の業者が請け負うようにすれば良い。市としては、環境と調和した都市計画を主体的に立案することも重要であろう。
・石狩市は札幌に対するエネルギー供給拠点としても有望である。
・北海道から受託経費を受けて進めている「厚田プロジェクト」の例を紹介する。太陽光発電で得られる電気を厚田学園や消防署、道の駅、給食センターなどに供給し、余った電気をバッテリーに貯蔵あるいは水の電解で水素を製造するのに使う。水素は燃料電池を介して非常時用電源として利用する構成となっている。将来的にはこの燃料電池を燃料電池自動車に置き換え、平常時にも有効利用システムとなるだろう。(下図)
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5.格差社会
・格差形成は統計論的に見て自然のメカニズムである。「7人に7個のパンを配る組み合わせの数」を例にとって考えてみる(下図)。6人が全くもらえず、1人が7個のパンを独り占めするのがケース1で、7通りの組合せしかない。最も可能性が高いのはケース10で(420の組合数)、3人がパンを全くもらえず、1個が2人、2個と3個もらうのが各1人である。皆に公平に1個ずつ与えるケース15は組合数が1で、非常に稀な場合になる。皆が同じ能力を持っていても少数の金持ちと多数の貧しい人になるのが、統計的に見て自然なことである。
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・格差形成を是正して豊かな社会をつくるためには、金持ちが貧しい人に富を再配分するような仕組み(累進課税、社会保障など)が必要である。貧しい人が生きて行ける社会、ガラパゴスのような競争が少なくても持続可能な社会を作るためには「教育」が最も重要である。

6.質疑応答
 十分な質問時間が用意されていたので10数人から活発な質問や意見が出ました。それに対して近久さんからは真摯で丁寧な回答がありました。以下にいくつかを紹介します。
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<Q1>風力発電では低周波被害が心配され反対運動が起こっているが、どう思うか?
<A1>ヨーロッパでは健康被害があまり問題になっておらず、健康に悪いか分かっていないのが現状だと思う。いずれにしても、健康被害懸念や苦情が無い場所の選定には配慮すべきだ。
<Q2>低周波振動は人類が経験したものではなく、健康被害が心配だ。健康被害の研究についてはどう思うか?
<A2>研究は進められるべきである。ただ、人類は再生可能エネルギーに頼るしかなく、人への害が及ばない洋上での風力発電、特に浮力型洋上発電などが良いと思う。技術的には難しくない。また、近隣住人が当該風車に出資をし、有利な条件で利益還元されるような仕組みについても、住民の参加と心理を通した健康影響の点で検討すべきと思う。
<Q3>厚田プロジェクトは道から4億5千万円のお金が出ており、中間報告書も読んでいるが、やる意味が分からない。無謀な計画だと思う。
<A3>実験結果を将来的な社会設計に利用していけるならば、実証実験として十分意味がある。バッテリー技術や貯蔵した水素を燃料電池車に利用する技術などを磨けば、経費を出した北海道も有益な知見を得ることになる。ちなみに、このプロジェクトの委員長は私であり、私に免じてご理解いただきたい。
<Q4>風力や太陽光発電は不安定で、電気を貯めることが必要である。バッテリーと水素貯蔵のどちらが良いか?
<A4>電気として使えるものは電気で使った方が良い。その時はバッテリーが適している。発電した電気が余る場合は水素として貯蔵して燃料電池車に使った方が良い。
<Q5>波力発電はどうか? 
<A5>規模とコストの割にエネルギー量が少なく、あまり良くない。潮流発電も問題がある。
<Q6>CO2固定化が良いと思うが、どうか? 
<A6>CO2を固定化できる場所に限りがある。また、化石燃料は後70〜80年で無くなるので、技術の将来性は低い。

 最後に、受講者の感想や意見のいくつかを以下に紹介します。
・平易な説明で分かりやすかった。有難うございました。
・勉強になりました。再生可能エネルギーで各家庭の電気が賄えるバッテリーの開発を切に願います。
・大変よくわかり、納得しました。原発に反対で自宅にソーラーをつけましたが一昨年で10年間の高売電価格が終了、その後メーカーがバッテリーをつけさせようとしましたが、100万円もするものを個人的につける気がしないので断りました。「少しでもCO2削減に役立っている」と思うことで自己満足しています。
・風力発電計画が石狩(一部当別)で50数基建設すると新聞に掲載されていた。風力による騒音、低周波被害、景観等を市民の一人として考えたい。
・原発は反対。太陽光電気で発展すべきと思う。大変良いお話、有難うございます。




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