ようやく緊急事態宣言が解けて、10月2日(土)に予定していた主催講座10「仙台藩白老元陣屋資料館と苫小牧市美術博物館を訪ねて~胆振管内の歴史と文化をめぐる~」を無事開催する事ができました。受講者は、21名。
公民館を8時30分に出発して苫小牧へ向かいました。
車中では、用意された詳しい資料を使って、胆振、苫小牧、勇払などの地名の由来やアイヌが使った丸木船、チプやイタオマチプなどについての説明がありました。
◇苫小牧市美術博物館
初めにスライドによる苫小牧の歴史の解説がありました。
・静川遺跡(儀礼や祭祀を行う場所と思われる環濠遺跡で縄文人の精神性を示す遺跡として国の史跡に指定)
・沼ノ端で600年以上前の河川用チプ3艘、海川用板綴船(縄綴船)イタオマチプ2艘の5艘が発掘され、北海道有形文化財に指定
・「ユウフツ越え」(ユウフツを起点として川伝いに千歳に入り、さらに石狩川へ達する重要交通路)
・八王子同心による勇払開拓
・苫小牧海岸のイワシ地引網
・開拓使三角測量勇払起点(日本測量史における重要史跡)
・美々鹿肉缶詰製造所(明治11年)
・村山マッチ小箱工場
・樽前山溶岩円頂丘(明治42年形成、道指定文化財)
・王子製紙苫小牧工場(明治43年)
・王子製紙苫小牧工場旧事務所(大正6年、近代化産業遺産)
・王子専用軽便鉄道(近代化産業遺産)
・コイノボリ大火(大正10年)
・市制施行(昭和23年)
・苫小牧港第1船入港(昭和38年)、東港開港(昭和55年)
以上、縄文時代から現代までの苫小牧の歴史の概要を聴いて、苫小牧の事がよく分かり、明治初期に缶詰を作ったことや同じ掘り込み式の港湾を持つなど石狩と共通点もあり親近感を持ちました。
苫小牧の歴史のお話を聞いた後は、館内展示を見学。本来は、撮影禁止ですが、講座を記録するために特別に許可を受け撮影させて頂きました。
館内は、①大地のおい立ち②原野の生物たち③原野のあけぼの④アイヌのくらし⑤開拓のあゆみ⑥のびゆく苫小牧⑦スケートのまち苫小牧と云う7つテーマ構成で展示されていました。
なかでも一番関心が高かったのが5艘のアイヌの丸木船で、みなさん大変熱心に見ていました。③原野のあけぼの展示室では、土器が縄文時代から擦文時代まで並べて展示されていたので、各時代の土器の特徴が良く分かり、参考になりました。
苫小牧市美術博物館を見学した後は、車中で昼食を取り、白老に向かいました。
◇仙台藩白老元陣屋資料館
仙台藩白老元陣屋は、幕末に幕府から蝦夷地警護を命じられた仙台藩が築いた陣屋で、仙台藩は安政3(1856)年から慶応4(1868)年まで12年間この陣屋を拠点として東蝦夷地(広尾、厚岸、根室から国後・択捉まで)を警護しました。
最初に、陣屋についての解説ビデオを見た後、資料館内及び陣屋跡地を、解説を受けながら巡回しました。
武家屋敷風の資料館では、当初ユウフツへ配置予定だった陣屋が地の利の良い白老に変更された事、蝦夷地出兵の事情や状況(仙台から徒歩で20日かかった)、陣屋造成の様子、陣屋のジオラマ、藩士のくらしやアイヌとの交流、陣屋退去の状況、蝦夷地の絵図面や陣屋の縄張図、関係文書など仙台藩白老元陣屋のことが総合的に理解できるようになっていました。
資料館見学の後は、内曲輪と外曲輪を案内して頂きました。
陣屋跡は、主要部だけでも66,000㎡あり、自然の要害として利用した河川や丘陵地を含めると353,000㎡にもおよぶそうです。昭和41年に国の史跡に指定されました。
内曲輪は、堀や土塁で囲まれ、本陣、勘定所、兵具庫、穀蔵、厩が置かれていたようです。
外曲輪は、川や天然の掘割で囲まれ長屋、稽古場が置かれていたそうで、仙台から持ち込んだと云う大きな赤松(4本持ち込んで1本が残った)もありました。
また、陣屋には鹽竈神社と愛宕神社があり、鹽竈神社を見学しました。なお、この地には天然の蛍がいるそうです。
こうして、苫小牧市美術博物館、仙台藩白老元陣屋の見学を終えましたが、石狩にもこのようなまとまった資料館が欲しいと云う思いも抱きながら帰路につきました。
途中、長沼の道の駅「マオイの丘公園」に寄って石狩へ5時過ぎに帰着しました。
最後に受講者から寄せられたコメントをご紹介します。
「久しぶりの遠出の講座、想像以上にゆったり学び、見学出来たと思います。村山先生の資料と説明を皮切りに美術館、陣屋資料館の解説も加わり充実感のある、勉強した感が持てる一日になりました。大満足!ありがとうございました」
「石狩と比較して太平洋岸の町の発展の類似性や相違点が感じられて興味深かった。石狩アイヌと白老アイヌの文化・言語の違い(もしあれば)などの解説の講座に興味があります」
「久しぶりのカレッジの講座、それもフィールドワーク、大変有意義な時間でした。資料も良かったですが、美術博物館、陣屋資料館での学芸員の方の丁寧な案内で大変満足でした」
「荘内藩のハママシケ陣屋跡には何度か訪れた事があるが、白老にこの様に大規模な陣屋跡の史跡がある事は今日まで知らなかった。コロナ発生以来2年間に亘り外出を控えていた時、待望のカレッジ講座の再開により今日の機会を得られた事に感謝すると共にスタッフの皆さんにお礼を申し上げます」
「昔住んでいた苫小牧を久し振りに見て、随分変わっていました。苫小牧の歴史と立派な美術博物館を時間があればもっと見学したいと思いました。仙台藩の白老元陣屋は、あまりの広さにびっくりしました。説明して下さった学芸員さんにはほんとによく勉強されているのに驚きました。久し振りのバス旅行、楽しかったです」
「抽選に当たり参加することができました。仙台藩白老陣屋と苫小牧美術博物館、とてもよかったです。胆振管内の歴史と文化の一端を垣間見ることができ、嬉しさと感動に浸りました。役員の皆様、ありがとうございました」