5月26日(木)主催講座2「私たちの身近な野鳥との共生を考える~長きにわたる野鳥観察を通じて見えること~」の第2回「身近なカラスの生態をもっと知ろう」を石狩市花川北コミュニティセンターで行いました。講師はNPO法人札幌カラス研究会代表理事の中村眞樹子さん、受講者は35名でした。
司会から今日のテーマは「カラス」です。カラスが嫌いな人は多いと思いますが、講演を聞いた後ではカラスを見直すことになるかも知れませんと講師を紹介して始まりました。
講師から、講演はスライドを使用しますが、配布資料「カラス対応マニュアル」は同じような内容ですので後で読んでください、との言葉がありました。
20年以上、毎日のようにカラスを観察し、カラスの生態行動を熟知している講師の話は、「そうなんだ」とカラスへ思い違いを払拭する内容の講演でした。
講師自身、巣から落ちたひなを保護した事がカラスからは子供を襲った人間と誤解され、何年経っても攻撃されていると語り、非常に記憶力がいいエピソードとして紹介。
カラスの行動に対しては人間の側が誤解や勘違いしている事も多く、カラスの生態を良く知ることで、適切に対処すれば解決できる場面も多くあるとのことです。
主にみられる2種類のカラスの特徴から始まり、夫婦仲の良い鳥であること、繁殖期には非常に神経質になることからこの時期に近寄らないことが大事で、むやみに恐れることはない。人間の側からカラスへ対処する行動や問題となるゴミ出しのアドバイスとカラスはネズミの捕獲やスカベンジャーとしての役割をはたしている事も紹介された。
以下講演の概要です。
〇カラスについては5種類いますが常時見られるのは2種類ハシボソカラスとハシブトカラスです。
・鳴き声で2種の違いを紹介したあと、以下スライドの沿って講演が行われた。
・ハシボソガラスってどんな鳥?嘴が細く、しわがれた声で鳴く、地面を歩くことが多い
・ハシブトガラスってどんな鳥?嘴が太く、澄んだ声で鳴く。おでこが出っ張っているので大きく見える。
〇繁殖について~繁殖期のカラスが人を襲う~繁殖期は神経質で巣や雛に近寄って欲しくない、カラスの縄張りに入って来ると警戒する。「人間が怖い存在」だから襲ってくる。
天敵は猛禽類、肉食哺乳類-一見可愛いエゾリスも、一番の天敵は人間。
カラスの繁殖は3月中旬から始まり、雌雄共同で巣造りを行う。4月から5月に巣作りの盛期。電柱への巣作りは北電は禁止している。電柱への造巣を見つけたら抱卵前に取ってもらった方がダメージが少ない。電柱には固有番号があること覚えてほしい。
巣立ちは札幌祭(6月15日)ごろ。
〇カラスの攻撃パターン~レベル0~レベル6まである。頭すれすれ低空飛行の5、背後から足で蹴る6(攻撃)。
〇カラスの威嚇パターン~カラスは事前に人間に対し「シグナル」を送っている。このシグナルに気づけば威嚇を避けることは可能。
〇巣の撤去ってどうなの?~巣立ち時期の雛は飛べないし自分で食べることもできず生き残るのは無理。街路樹から落ちた雛を戻す事は難しい。
〇注意看板設置~カラスの営巣地周辺に注意喚起の看板を設置するとよい。場合によっては一時通行止めにする。目的はカラスを守るためではなくカラスの威嚇行動から「人を守るため」札幌市ではHPからダウンロードできる。写真「注意看板の設置例」。
〇攻撃を回避する方法は?~カラスは翼を広げると70㎝の大きさ、腕をまっすぐ上げて動かさない。
〇時期外れの威嚇って?~黒いものに反応する傾向。折り畳み傘はカラスの死骸に見えるので、死骸を持ち歩いている危険人物に見える。
〇何もしていないのに威嚇される
〇これって勘違い?~ゴミステーションで襲われることが多いが、これは垂直飛行は出来ないので、ゴミステーションに低空飛行するときに頭をかすめることが襲われたと勘違いしている。
記憶力が良いので、巣から落ちた雛を助けたことが逆に敵とみなされ3年たっても100%襲われる。
〇カラスの食生活ってどうなの?~
ゴミに依存していると思われているが、公園や街路樹の実、家庭菜園、農作物が主な食糧となっている。
生ごみ収集は週2回しかないし、事業系ごみは個別収集なのでこれだけでは食べていけない。
〇カラスの功罪を紹介
・収集時落としたゴミをカラスがかたずけてくれている。
・歌舞伎町ではカラスを減らしたことでネズミが繁殖している。
・豊平川にあったエゾシカの死骸も1か月後には骨になって流されたように、動物の死骸も片づけるスカベンジャー。
・家庭菜園のトマトは大好き。
〇ゴミステーションのアドバイス
・黄色は嫌いとの都市伝説があったが全く効果なし。
・ゴミの出し方に注意し、ネットをきちんとかけゴミをはみ出さないようにする。・
・折り畳みの3方式も効果あり。
・見えるを遮断するブルーシートをかけるとただの物体に見える。
〈一口メモ〉 植物が赤い実を付けているのは目立つためで第3者に移動してもらうため。そこで活躍するのは鳥です。種と糞を一緒にだすので大助かりです。哺乳類はかみ砕いてしまうのでダメ。ヤドリギは鳥(キレンジャク)の体を通らないと発芽しない。鳥の中でもシジュウカラは種をつつくので歓迎されない。
写真は実で遊ぶカラスの様子
最後に質疑応答で講演を終了しました。
終わりにアンケートからいくつか紹介します。
「我々の身近にいるカラスの生態を映像、声付きで詳しく解説ししていただきよく理解できました」
「大変楽しかったです。かん違いしていた事も多く、これからは優しい目でカラスを見ることができそうです」
「カラスの生態がよくわかりました」
「カラスの生態がよく理解できました。特に繁殖期やゴミ出しの参考になった」
「おそわれたこともありカラスは嫌な鳥だと思っていたが、生態ついての詳しい話を聞いて少し理解することが出来た」
「ゴミをあさったり、低空飛行したりと困った存在のカラスですが、生態を知ると人間の責任、勘違いもあることに気づきました。百合が原公園を一人で歩いている時に低空飛行され、急いでその場を離れましたが次からは帽子をかぶり、腕をあげて通り過ぎようと思います。楽しい講義、マイクの調整ありがとうございます」
「カラスの生態がよくわかりました。団地内外の遊歩道を歩いているとこの季節、良く襲われます。今日の講義で勉強した方法を試して見たいと思います。ありがとうございました。それにしてももう少しカラスの数を減らすことは出来ないのか。大きな生態系の中で生きているので難しいと思うが!」
「大変面白く興味深くお話を聞くとが出来ました。これからカラスを見る目が変りそうです」
「カラスへの愛情が伝わる豊富な話題、さすがに詳しい研究成果、興味深い内容でした。あまりにも身近なカラス。集団でいる姿は何とも不気味で不快な気になります。減っている実感はなく・・ただ少しだけ親しみがわきました」