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主催講座4「国際データ通信網と北海道」

第2回「北海道の国際ハブ化と石狩市」

2022/06/27

 6月21日(火)主催講座4「国際データ通信網と北海道」の第2回「北海道の国際ハブ化と石狩市」を石狩市花川北コミュニティセンターで開催しました。講師は、北海道大学北極域研究センター助教のユハ サウナワーラさん、受講者は27名でした。
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 以下はお話の概要です。
□北海道の国際ハブ化と石狩市
1.データセンターとは
各種のコンピュータ(メインフレーム、ミニコンピュータ、サーバー等)やデータ通信などの装置を設置・運用することに特化した施設の総称。
・グローバルデータセンターは急速な成長を遂げている産業分野。
・北極圏のさまざまな地域においてデータセンタークラスターが発達している。
・さらに北極周辺地域では、新たなデータセンター投資への誘致が地域開発計画・戦略に組み込まれる傾向にある。
・しかし政策決定者は、世界で進行中のデジタル化において大きな役割を果たすこの産業に関する知識をほとんど持ち合わせていない。
2.データセンターとエネルギー
データセンター産業は、大量の電力を消費し二酸化炭素排出量が大きいので建設すべきではないと云う考え方があるが、それは誤りで、演算能力・サーバーが多数の場所に分散する状態に比べるとはるかにエネルギー消費量は少ない。データセンターでサーバーを稼働させることで、データセンター外にある多数の機器を使用する必要がなくなればエネルギー使用量を大幅に削減することができる。
※データセンターは、他の企業が成長した結果生じた需要に応えるために建設されるものである。
3.データセンターの種類
・ハイバースケールデータセンター
利用企業が所有・運営。20メガワット以上の施設。キャビネット数は500以上(サーバー数は最低5,000)
・エンタープライズデータセンター
利用企業が所有・運営。キャビネットは10台以上、規模は40メガワット程度まで上ることもある。
・コロケーションデータセンター
所有者が特定地域の複数企業、クラウド、ハイパースケールの顧客に対してスペース、電力、冷却機能を販売するもの。顧客は必要な数のキャビネットをレンタルできる。数百~数千の個人の顧客に対応できる。
・クラウド
コンピューターシステムリソース、特にデータストレージや演算能力を要求に応じて顧客に提供するクラウド企業が所有・運営するもの。インターネット上で多くのユーザーが利用できる。
4.データセンター産業史 
2010年代から2020年代初頭にかけて急速な成長。
・1960年代からタイムシェアリングシステム(1台のコンピューターを複数のユーザーが同時に利用するシステム)が始まる。
・1990年代、エンタープライズデータセンタ―は、テクノロジー産業が盛んな地域にしかなかった。1998年、Googleは自社ハイパースケールデータセンターを米国内に開設。データの集中化が大きく進み、分散コンピュータが盛んになったのは、2000年代中頃のこと。
・クラウドコンピューティングの出現により、オフィスや家庭に保管されたサーバーから世界各地に所在する大規模データセンターへと移行した。
同時に、Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftは自社の大規模データセンタ―の建設を開始し豊富なエネルギー貯蔵量と光ファイバーによる良好な接続が望める地域で初のデータセンターハブが発展し始めた。
5.日本のデータセンター産業の状況
北海道ニュートピアデータセンター研究会の設立趣意書
「現在、データセンターの多くは首都圏や大阪周辺に集中し、ネットワークやインターネットエクスチェンジ、国際光海底ケーブルが特定のエリアに集中している。日本のインターネットとデータセンターの役割り、機能、立地をどのように変えていくべきか、今がそのグランドデザインを描く重要なタイミングである。われわれはインターネットの構造、データセンターの立地という視点から、ビジネス、生活、国際連携の新形態を再設計する研究会を設立して議論するために本研究会を設立する」
6.北極圏・北方圏のデータセンター
寒冷気候の活用は、新しい発想ではない。2006年にワシントン州クインシーにデータセンターを開設したMicrosoftは、翌年には世界有数の寒冷地ロシア・イルクーツクの地方当局とデータセンター建設の可能性に関する覚書を締結したと報じられた。
・フィンランド
2011年Googleがハミナにデータセンターを開設。
・スウェーデン
2013年Facebookがルレオにデータセンターを開設。現在、ルレオ、ボーデン、ピーテオ地域に世界的なデータセンタークラスターが形成されている。
・デンマーク
データセンター産業の可能性は、2011年から2012年にかけて初めて認識される。ヨーロッパに近いと云う利点がある。
・ノルウェー
遅れたが、この2∼3年で急速な発展。光海底ケーブルに力を入れている。
・アイスランド(エネルギーはすべて再生可能エネルギーであることをアピールしている)
HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティングの略で、膨大なデータに対し複雑な演算処理を高速に実行すること)の設置。
・北極圏や北方圏にデータセンタ―が集中する理由
豊富な電力の備蓄、安価なエネルギー(特にグリーンエネルギー)、寒冷な気候、安定した社会、光通信の好適な接続性、手ごろな地価、低い自然災害リスク、信頼性の高い電力網、熟練労働者などの存在。
※グリーンエネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど(原子力は除く)から作られるエネルギー。
7.北欧のデータセンターの経済波及効果
・Facebook(スウェーデン・ルレオ)
10年間の経済的影響は、1,220億円。4,500人の雇用。
・Google(フィンランド・ハミナ)
2009年~2015年の経済効果は、859億円。雇用効果は、1,600人。もしフィンランドがデータセンターの波及効果を完璧に実現すれば、2025年のレベルでデータセンター産業の1年当たりの一般的効果は2,994億円になる。
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8.北海道のデータセンター
北海道総合開発計画 平成28年3月
「情報拠点となるデータセンターに係る需要がますます高まると見込まれる。首都圏等との同時被災リスクが低くバックアップ業務を見込んだデータセンターの立地上有利であり、冷涼な気候を利用した省エネルギ―が可能なことから、我が国社会経済のインフラである情報基盤の耐災害性・信頼性の向上につながる。さらに北海道の経済を牽引する農林水産業、観光業等へのビッグデータ26利活用による新産業・新サービスの創出などの展開も可能である。そこで、こうしたICT産業の立地を促進する」
9.石狩市とデータセンター
・さくらインターネット石狩データセンター
日本最大級の郊外型大規模データセンター。北海道の冷涼な外気を冷房に活用して空調にかかる消費電力を大幅削減している。一部の環境で、高電圧直流給電システムを採用。発電から給電、消費までの流れを自社でまかなっている。
・ゼロエミッションデータセンター
京セラコミュニケーションシステムは、2019年に再生可能エネルギー100%で運営するゼロエミッションデータセンターの計画を発表したが、電源の問題で計画が遅れている。しかし、再度新たな計画を発表する予定となっている。
10.北欧・他の寒冷地から学ぼう
・再生可能エネルギーに本格的に取り組んでいる。エネルギー(電力)が安い。
・Microsoftは、2021年11月に動力源を100%グリーンエネルギーとするデータセンタ―の開設を発表。
・データセンターの排熱に関する研究及びその再利用(エネルギーを捨てない)が進んでいる。
・データセンターの排熱を地域暖房に利用している。
・データセンターの低い温度(30~40℃)の排熱をそのままで利用する方法として、温室、養殖場、バイオマス乾燥などの用途が考えられている。
・データセンターは、既存の産業施設が利用されることも多い。
11.データセンター設計とエネルギー効率
・グリーンデータセンタ―とは、最低限のエネルギーで最大の演算能力を生み出すもの。
・現在
冷却と空調、エネルギー回収と再利用、シフトウェアプロセスにおける資源効率、国・地域ノエネルギーシステムの統合などが課題。
・将来
コントロールやメンテナンス、管理の自動化に関する研究をもとに、自立型データセンターの開発が進められている。自立型データセンターは、自身のみで効果的に運転を継続し、停電や部品の不良と云う予期せぬ状況でも人間の干渉なしに自己修復できなくてはならない。
さらに、AIによる遠隔モニタリング(人間のいない)データセンターの設立を目指している。これは、既存の完全自動モデルをさらに推し進め、現場スタッフに関わるエネルギー消費を切り捨てることで、さらなる効率化を目指している。
12.北海道は、多くのメリットがあるにもかかわらずどうしてハブ化していないのか
・電力の問題
価格(高い)と供給量の問題。
・サイト開発
メリットを簡単にアピールできるサイトの開発が必要。
・協力と国際化
北海道ブランドイメージを打ち出すことが必要。
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 以上でお話は終わりましたが、データセンタ―に関わる北欧の事情が良く分かるとともに、北海道がこれからどうすれば良いかも示唆するものでした。また、日本のエネルギー政策についても深く考えさせられるお話しでした。

 最後に受講者から寄せられたコメントをご紹介します。
「北欧・日本のデータセンター設置の現状が良く分かりました。関東圏のバックアップの意味と寒冷地である利点を活かして北海道のデータセンタ―設備の増強を期待したい」
「大変興味深い内容でしたが、やはり難しく感じました。講師ユハ サウナワーラさんのなめらかな日本語、人柄の良さが伝わる話し方に好感が持てました。排熱利用や古い工業ビルをデータセンター変える等は身近に感じられ、今後の可能性を感じます」
「寒冷地の石狩市でもっと雪を利用した年間を通した設備が出来ないものか?石狩市に大型データセンターが出来ても通勤に対する交通網が無い為人を集められないのでは?石狩市はなぜハブ化が進まないのかな??」
「データ通信網についての説明を引き続き講演して下さいました。2回目、北海道に進める内容に、立地上有利であること(都市、東京、大阪)中心に現状はデータセンターに係る需要今後高まる。北海道の経済を牽引するので石狩市もすでに力を入れている様ですね。ユハ サウナワール講師、3回目も宜しくお願い申し上げます」




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