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主催講座11「LGBTQへの理解を深める」

第2回「LGBTQの抱える問題と今後の展望」

2022/11/23

 11月20日(日)、主催講座11「LGBTQへの理解を深める」の第2回「LGBTQの抱える問題と今後の展望」を石狩市花川北コミュニティセンターで開催しました。講師は、NPO法人北海道レインボー・リソースセンターL-Port代表理事の中谷 衣里さん、受講者は25名でした。
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本日のお話は以下の様な順で進められました。
1.前回分の質問、感想より
2.チェックイン~LGBTQであることを公表している有名人~
3.LGBTQの権利と安全を巡る各国の状況
4.LBGTQの生きづらさの根源
5.まとめ
6.質疑応答

1.前回分の質問、感想より
1)Q―同性婚を認めると少子化が進みますか?同性同士だと子孫を残せません。日本のこの先が心配です。
A―同性婚が認められていない今の社会を想像してください。
・同性愛者が仕方なく異性と結婚して子供をもうけることはまずありません。同性のパートナーとただ結婚できない状況にあるだけです。
また、この社会で多数を占めている異性愛者の人たちは、同性婚が認められたら同性同士で結婚をするでしょうか?
・同性婚を認めた国における出生率の変化
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この表をみても、同性婚を認める事と少子化とは相関関係がありません。
・少子化対策は、子どもを育てやすい家庭の条件を拡げると良いのではないでしょうか。
 現在の状況
婚姻関係にある、日本人同士、異性愛者の男女で、自然妊娠で授かり、貯蓄があって、両親揃って育てられることなどが条件となっています。
 これからの望ましい状況
 同性婚の2人が子を産み育てられる、社会的養護の子どもを迎えて育てられる、シングルで生きている人も子どもを育てられる、などもっと条件を拡げると良いのではないか。
 子どもを育てたい人を金銭的にも精神的にもサポートして、子どもを育てる環境を社会が整えることが少子化対策として有効なのではないでしょうか。
2)Q(感想)―頭では多様なセクシュアリティを理解できるが、LGBTQの人が身近にいればいるほど気持ち悪くなってしまう。
 A―感想に対して、中谷さんは2つの例を挙げられました。
ひとつは、娘がレスビアンの台湾の父親の動画。父親は悩むが、最後に思う「愛する事、受け入れる事、それが答え」。
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もう一つは、一時は人間関係がバラバラになったと云う中谷さんご自身の実家での体験。
「お互いに対話を重ねてその人の人間性を理解し尊重し合える人間関係を築くことが出来れば良いと考えています」と中谷さん。
2.チェックイン~LGBTQであることを公表している有名人
 受講者それぞれが思いつく有名人を書き出して考えてみました。
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 多くの名前が挙がりましたが、芸能界だけでなく、知識人や政治家など広い分野でLGBTQであることを公表した人が多くいる。
 社会には、カミングアウトしているかいないかに関わらずLGBTQ当事者は多くいるようです。
3.LGBTQの権利と安全を巡る各国の状況
1)世界の現状
①性的指向に基づく差別からの法的保護のある国及び地域―156
②同性成人間の合意に基づく性行為を犯罪としている国及び地域―70
③法的に保護されていない/犯罪化されていない国及び地域―43
①②の2極化が進んでいるとも云われている。
2)性別変更に関する日本での取り扱い(性同一性障害特例法、2004年~)
㋑18歳以上であること
㋺現に婚姻していないこと
㋩現に未成年の子がいないこと
㋥生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること(この条件は世界的にみると非人道的で人権侵害であると言われている)
㋭その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること(多大な費用がかかり、重大な後遺症が残る場合もある)
以上をすべて満たすことが条件となっている。
3)諸外国の性別変更に関する法制度
・医師の診断書がなくても法的性別変更が可能な国及び地域―10
・性別適合手術を受けなくても法的性別変更が可能な国及び地域―26
・未成年者でも法的性別変更が可能な国及び地域―5
日本は医学モデルやシスジェンダー・異性愛の枠組みにトランスジェンダーの人々の生き方を押し込めようとしている。2014年世界保健機構(WHO)が、さらに2017年欧州人権裁判所が、上記㋥について「性別を変更するために生殖能力をなくす手術を課すことは人権侵害である」と判断、変更を求めている。
4.LGBTQのいきづらさの根源
1)中谷さんが考えるLGBTQ+当事者へ向けられた社会の差別構造モデル
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二つの歯車がどちらへ廻るか。
ひとつの歯車は、ソフト面。偏見や慣習などステレオタイプの考え方の意識や理解を変えていく。
当事者だけでなくそうでない人も含めた社会問題となっていくことが必要。
もうひとつは、ハード面。制度の新設や法改正で社会の仕組みを変えていく。
法律や制度で守られることは、LGBTQ+の人たちが社会の中で認められること。
LGBTQ+の人たちが生きやすくなるためには、両輪を廻していく必要がある。
何もしなければ、歯車は差別を低減する方向には廻らない。
2)ハード面の是正について
◇自治体独自の取り組みとその限界~札幌市の場合~
「札幌市パートナーシップ宣誓制度」で保障されるのは次のうちどれでしょうか?
①男女間の婚姻と同等の社会保障を受けられる
②パートナーが亡くなった時に遺産相続ができる
③税制面の優遇を受けられる
※実は3つとも保証されない!
この制度の概要(法律で定められているものではない)
性的マイノリティの方の気持ちを受け止める取り組みとして、お二人が互いを人生のパートナーとして、日常生活において相互に協力し合うことを約束した関係であることなどを札幌市長に対して宣誓をする制度です。お二人の宣誓に基づき、宣誓書の写しと市長名の誓約書の受領証を交付します。
対象
・双方が18歳以上であること
・市内に住所を有する、又は市内への転入を予定していること
・双方に配偶者がいないこと
・他にパートナーシップの関係にないこと
宣誓組数
2017年6月1日~2022年7月31日 160組。
中谷さんもパートナーと二人で宣誓した。
その時中谷さんが感じたことは「市の職員さんから、おめでとうございます、と言われたことがとても嬉しかった。今まで誰からもこんな言葉をかけられたことがなかったから。住んでいる町から認められたんだと感じ、晴れて札幌市民になれた気がした。結婚が出来ないことでけじめをつける機会もなかったが、ふたりにとってのけじめとなった。さらにこの宣誓が私たちの背中を押してくれて、お互いの親に対してもこれからもふたりで生きていくという姿勢を見せることが出来た」
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◇各自治体のパートナーシップ宣誓制度でできる事
・札幌市―市営住宅に入居できる。
・兵庫県明石市―カップルとともに暮らす子ども含めて「家族」と認めるファミリーシップ制度がある。
・福岡県糸島市―住民票の"世帯主との続柄"の記載を「縁故者」とすることができる。
・奈良市―結婚休暇と同様に、パートナーシップ宣誓制度を行った職員はパートナーシップ休暇を取得できる。
・広島市―パートナーの焼骨を埋蔵するために市営合葬墓の使用申し込みができる。
・家族割引や死亡保険金の受取人指定ができる(民間企業)。
◇パートナーシップ制度全国導入状況
全国1,757自治体のうち241自治体が導入している。単純数は少ないが、人口普及率をみると61.9%で、2015年に世田谷区と渋谷区で始まったパートナーシップ制度がようやくここまで広がった。
しかし、パートナーシップ制度は多くの同性カップルの気持ちを受け止める制度ではあるが、要綱・条例の限界があり、男女間の婚姻には遠く及ばない
◇「結婚の自由をすべての人に」訴訟
概要
2019年2月14日、国が同性間の婚姻を認めないことは憲法が保障する婚姻の自由を侵害し法の下の平等にも反するということで、全国13組26人の同性カップルが国に1人当たり100万円の損害賠償を求め東京・大阪・名古屋・札幌の4地裁に一斉提訴。その後福岡でも提訴されて全国5地裁への提訴となった。
現在は、同性カップルが婚姻届けを提出しても法律で定められていないので不受理となる。
本来であれば国会で法律が作られると良いのだが、そうではないので裁判で訴えると云う回り道をしなければならない。
・結婚できないことでどんな不利益があるか?
緊急事態の場合(重体で入院、災害時の避難など)、ライフプランを考える場合(ペアーローンを組む、相続など)、共同親権が取得できない、慶弔休暇が取得できない、外国人パートナーのビザの問題等など様々な不利益がある。
・どうして同性同士の婚姻は認められていないのか
憲法24条第1項「両性」をどう定義するかが、争点となっている。
「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し~」と書かれているが、民法では多く「夫婦」と云う異性間を表す言葉が使われている。
・そもそも現憲法が出来る前は、個人より「家」「戸主」の意向が重視されていたが、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されたのが現憲法。
・憲法には明確に同性同士の結婚を禁ずる文言はどこにも書かれていない。
・現憲法が作られた1946年頃は、同性同士の結婚は想定されていなかった。
・憲法の出来た経緯を考えると、「両性は結婚する2人の当事者」と考えるのが妥当ではないか。
・結婚するかどうか、いつ誰とするか自分で決めることを、相手が同性であるという理由で否定することは、24条第1項が保証する結婚の自由の不当な侵害ではないか。
・昨年3月、札幌地裁で同性同士の婚姻を認めないことは違憲との画期的な判決が下された。現在は、札幌高裁で裁判が継続している。
5.まとめ
中谷さんは2回のお話のまとめとして、こう話されました。「私は、性の多様性については、この言葉に尽きるのではないかと考えています。それは、みんな違って、みんないい、です。この言葉は一人ひとりを励ましてくれる素敵な言葉だと思います。今は、みんな違って、みんないい、に向けて様々な状況が変化している時代だと思います。しかし、みんな同じ部分もあると思います。それは、幸せになる権利です。同じだからこそ、みんながそれぞれ思い描く「幸せ」や「自分らしさ・その人らしさ」を一人ひとりが生きたいように生きられるような社会になって欲しいと思います」
 その後質疑応答があり講座は終了しました。
 受講者の大半がLGBTQについてのあまり深い知識はなかったと思いますが、中谷さんの2回のお話を聴いて、LGBTQの人たちの生きづらさや認められない苦しさがよく分かりました。これからの社会が、みんな違って、みんないい、に少しでも近づいていくことを願いたいと思います。
中谷さん、LGBTQの問題についてご自分の体験も含めて分かりやすく話して頂きありがとうございました。これからも、みんないい、に向かって前に進んで下さい。
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最後の受講者のコメントをご紹介します。
「この度の講座でかなり理解が深まったと言えます。自分自身のとらえ方が変わったと・・。どのような人にも社会的に(法的に)も認められなければならないと思います。性的に問題ありと判断され差別されることは人格侵害であると気が付きました。人はどのような形であれ自由でなければ・・と思います。多くを学べました」
「同性同士の結婚は認められて当然だと思います。ただ同性婚でも子どもを望む場合、これは異性婚でも同様ですが、子どもの出自やアイデンティティの問題も含め、子どもの人権にも配慮が必要だと思いますので、別の段階の話になるかと思います。性同一性障害特例法の中身を初めて知り非人道的だと驚きました。㋥㋭についてはその理由が知りたいです」
「LGBTQの実態、内容が具体的に理解する機会を得ることができ有意義でした。しかし、自身の理解はまだ実感として成立していないですが、理解の一助にはなったことは確かです。ありがとうございました。今後の活動を期待しています」
「私自身としては当事者と会っても差別する気はおこらない。ありのままで良いと思う。ただLGBTQの人達にとっては社会的な問題や特別法の理不尽さなど障害になることは多いと思う。頭では分かっていても心がついていけない。結局どうして良いのか分からないので端から見ていることになりそうだ」
「私はもう83歳ですが、『1人ひとりが生きたいように、生きられるような社会に!!』が一日も早く実現されることを願っております」
「最初の同性婚と少子化の関係についての話がわかりやすくてとても良かったです。皆が生きやすい世界になったら良いなと思いました」
「LGBTQの内容を詳しく知る事が出来て大変良かったです。多様性が叫ばれていても理解し納得するには時間が掛かります。でも誰でも幸せになる権利が有るので是非負けないで地道な活動を続けて欲しいです。個人的には応援のメッセージを発信していきたいです」
「宣誓制度の明確な内容がよく解りました。そして日常的に自分が生活している中ではなかなか考える(多様性に対して)機会が無いので良い機会になりました。理解と教育は今後に向けて大事な事と考えます。個(人間性)の尊重がとても大事と考えます」
「このような講座を開いてくれた市民カレッジの方々にお礼申し上げます。これから市民の1人でもLGBTQの理解を深まることに期待しています。私、人権擁護委員として機会あるごとに啓発に努めてます」
「①LGBTWに対する国会の不作為を感じる。②子供の頃から多様性への理解を教育(すること)も必要」
「LGBTQが多くの困難を抱えていることは理解できたが今後の方向性が見えない。国民のコンセンサスを広める事が重要である」
「法制度の不備については、(整備の)大切さを感じる。性の違和感については、日常の生活の中に明らかな苦しみを抱えている別の問題のように感じた」









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