2023/02/24
いしかり市民カレッジは今までさまざまな講座を開いてきました。その講座の記録がホームページのトピックス欄に記事として残されています。市民カレッジにとって、また受講者や一般の市民にとっても貴重な財産だと考えています。この財産を掘り起こし、新たな視点を加えてホームページ上で新しいタイプの講座として開講することにしました。
「ホームページ講座」と名づけ、主催講座やまちの先生企画講座があまりない冬季間に開くことにしました。第1回は石狩湾新港を取り上げ、今までの講座を振り返り、少し新しい視点も加えて紹介いたします。
「躍進する石狩湾新港地域」
H27年度講座「躍進する石狩湾新港〜海から眺める石狩湾新港と先端企業」
第1回「海上から眺める石狩湾新港」
H29年度講座「躍進する石狩湾新港〜北電LNG火力発電所の建設現場を訪ねて〜」
1. 石狩湾新港地域
1)石狩湾新港について
北海道の日本海側に臨む石狩湾沿岸のほぼ中央に位置し、札幌市に最も近い港として札幌圏の物流拠点および日本海沿岸地域、北方圏諸国との経済交流拠点として北海道の長期的かつ飛躍的な発展を先導する目的で開発・建設された。
昭和47年に「石狩湾新港港湾計画」が決定され、昭和48年には国直轄事業として本格的に港湾整備が始まった。
2)石狩湾新港地域の企業〜現在の状況
総面積3,000haの地域に約700社の企業が立地し、港湾を核とした生産・流通拠点が形成されている。
現在は以下に示すように総計664社の非常に広範囲な分野の企業が存在しており、まさしく一大工業地帯を形成している。また、この地域を支えるサービス業として飲食・コンビニ・物販・その他(20店)、ガソリンスタンド(5店)及び官公庁9箇所などもあり、併せて700の企業が存在している。
石狩湾新港開発の当初の目的のひとつであった物流拠点として流通関係の企業が約240社と最も多く存在しているが、その後、さくらインターネットのようなデータセンターやLNG火力発電所のようなエネルギー関連企業、コストコのような巨大店舗、ビジネスホテルなども設置されるようになり、ますます多角化し、発展してきている。
①流通(合計 241社)
・運輸(130社)、 ・倉庫・物流センター(45社)、・卸売(56社)、・その他流通(10社)
②住宅関連・化学・印刷・紙加工品(合計 65社)
・住宅関連(27社)、・化学(30社)、・印刷(4社)、・紙加工品(4社)
③機械・金属(合計 180社)
・機械(66社)、・金属(114社)
④建設・建設資材(合計 63社)
・建設・建設資材(63社)
⑤食品(合計 49社)
・食品(49社)
⑥リサイクル(合計 36社)
・リサイクル(36社)
⑦エネルギー・その他(合計 33社)
・エネルギー(23社)、その他(10社)
2.もっと知ろう〜石狩湾新港地域
石狩湾新港は石狩市民にとって非常に馴染みの薄い、実態のよくわからない地域であった。あたかも隣接する市外の町を眺めているような存在であった。石狩湾新港地域で働く人間の多くが市外から通勤し、また石狩市中心部と石狩湾新港地域を結ぶ公的交通手段がほとんど無かったことが原因のひとつであるかもしれない。
そこで、いしかり市民カレッジではこのような石狩湾新港地域の実態を学び、より市民に知ってもらうために平成21年の開校以来さまざまな講座を開催してきた。このホームページ講座ではそのような講座を振り返って学び、将来の発展を期待する縁としたい。
1)石狩湾新港の誕生
平成22年度に講座「そして、石狩湾新港は生まれた」を開講し、第1回に新港建設の担当者で石狩市郷土研究会顧問であった故田中實さんから「石狩湾建設構想から着工まで」をお話いただいた。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2010/10/12-1.html
第2回は、やはり新港建設の担当者であった田岡克介市長(当時)から「そして、石狩湾新港は生まれた」をお話いただいた。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2010/10/12-2.html
第3回は現地見学として田岡克介市長(当時)自らが案内役となって「石狩湾新港地域を訪ねて」を行った。YKKAP(株)北海道工場と(株)北海道丸和ロジスティックを見学、さらに新港地域の風車、中央埠頭の大型LNGタンク、花畔埠頭のガントリークレーン、機械金属関連地区、リサイクル業者の地区などをバスで巡回して見学した。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2010/11/12-3.html
2)先端企業の見学学習
市民カレッジが開校した平成21年には「石狩湾新港地域の先端技術を訪ねて」の講座を開催し、第1回に「石狩の環境・リサイクル技術に学ぶ」としてマテックとジャパンリサイクルを見学、第2回には「石狩の食品加工技術に学ぶ」でホクレンパールライスと佐藤水産を見学して学習した。平成21年当時はホームページを開設していなかったため、残念ながら、これらの講座の記事は残されていない。
平成27年に講座「躍進する石狩湾新港〜海から眺める石狩湾新港と先端企業」を開催し、第1回では「海上から眺める石狩湾新港」を行い、タグボートに乗船して石狩湾新港を海から眺める非常に良い機会となった。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2015/07/8-12.html
第2回には「食費関連の先端企業見学」として東洋水産(株)北海道工場と横浜冷凍(株)石狩第二物流センターを見学した。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2015/08/8-13.html
海から石狩湾新港を眺める企画は受講者にとって非常に好評であったので、令和元年度にも講座「発展する石狩湾新港の役割」の第1回で「北海道の国際物流を支える港湾の役割」としてタグボートに乗船して海上から国際貿易港の姿を見学した。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2019/08/7-74.html
第2回では「最先端の物流センターを見学しよう」を行い、ホクレンパールライス工場とエースいしかり第7物流センターを見学して学びを深めた。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2019/09/7-75.html
平成30年には講座「躍進する石狩湾新港!〜先端企業を訪ねて」を開催し、日建片桐リース(株)レンタコムウェル石狩札幌介護用品管理センターとエフピコダックス(株)北海道工場を見学学習した。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2018/06/4-29.html
3)エネルギー集積地としての石狩湾新港地域
石狩湾新港には巨大なLNG(液化天然ガス)タンクや石油タンクが多数設置され、天然ガスや石油などのエネルギー源を札幌などに供給している。平成26年の講座「石狩湾新港の最先端技術を学ぶ」の第2回「『北海道ガス石狩LNG基地見学』及び『超伝導直流送電実験施設見学』」でLNGガスについて話を聞き、LNG基地の構内をバスに乗車して見学した。LNGの冷熱実験も見学学習することができた。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2014/08/208.html
一方、北海道電力ではLNG(液化天然ガス)火力発電所を建設したので、平成29年の講座「躍進する石狩湾新港〜北電LNG火力発電所の建設現場を訪ねて〜」では建設中の現場を見学することができた。発電所が一旦完成してしまえば外観などしか見ることができないが、建設中であったためタンクの内部構造や発電機の様子などを見学できる貴重な機会となった。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2017/06/lng.html
石狩市のエネルギー政策や現状については、令和2年度の講座「考えよう石狩市のエネルギー〜再生可能エネルギーと風力発電〜」の第1回「新しいエネルギー社会のへの挑戦〜エネルギー・経済・雇用について考える」で北海道大学名誉教授で石狩市エネルギー地産地消事業化検討会委員長の近久武美さんから学んだ。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2021/01/14-18.html
第2回には「新しいエネルギーとしての風力発電を考える」をNPO法人北海道新エネルギー普及促進協会理事長の山形定さんから学んだ。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2021/01/14-19.html
4)最先端技術の開発とIT産業
超電導直流送電は送電ロスが少なく、将来の送電技術として期待されている。石狩市では国の予算を得て超電導直流送電システムの実証実験を石狩湾新港地域で行った。まず、超電導直流送電とは何かを知るために平成26年の講座「石狩湾新港の最先端技術を学ぶ」の第1回で北海道大学名誉教授の山谷和彦さんと石狩市環境政策担当兼環境保全担当主査の宇野博徳さんから「『超電導直流送電とは』〜新港での夢の送電方式実験〜」を学んだ。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2014/08/8-11.html
超電導直流送電システムの実証実験が進展し世界最長の送電システムの試作が完成したので、実証実験に参加した中部大学超伝導・持続可能エネルギー研究センター教授の井上徳之さんから講座「躍進する石狩湾新港〜世界最長の超電導直流送電システムと水素エネルギー」の第1回「世界最長の超電導直流送電システムと実証実験現場の見学」で実験内容と結果について説明いただき、実証実験の現場を案内していただいた。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2016/08/post-54.html
第2回では石狩市企画経済部渉外調整担当部長の松田裕さんと北海道大学名誉教授の徳田昌生さんから「これからのネルギー〜石狩スマートエネルギーコミュニティ構想と水素エネルギー社会〜」について話を聞いた。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2016/08/post-54.html
さくらインターネットが石狩湾新港地域に大型データセンターを開設したが、このことは新港地区に大きな影響を与えた。これがきっかけとなって上記の超電導直流送電システムの実証実験が行われ、さらに最近では、京セラの子会社「京セラコミュニケーションシステム」や北海道電力と東急不動産(東京)、ITコンサルティングのフラワーコミュニケーションズ(東京)がデータセンターの新設を予定している。
平成23年に講座「進化する石狩湾新港〜いま、IT(情報通信)産業の現場では〜」を行い、第1回に「光ファイバー通信技術の今と今後」を元北海道大学教授の三島瑛人さんが話された。次いで、第2回では、さくらインターネット社長の田中邦裕さんから「なぜ、IT産業が石狩湾新港か」を話され、石狩では自然エネルギー(冷涼な外気)の活用が可能であることなどの利点について詳しく解説された。講義の終了後、データセンターに移動し、センター内をご案内いただいた。
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2012/01/10it.html
https://www.ishikari-c-college.com/topics/2012/02/10-it.html
5)環境省が脱炭素先行地域として選定
石狩市は令和4年4月に国の「脱炭素先行地域」として、全国26件のひとつとして選定された。石狩市の提案は「再エネの地産地活・脱炭素で地域をリザイン」であり、札幌圏における産業拠点である石狩湾新港地域において、太陽光発電設備の導入や木質バイオマス発電設備を活用してデータセンター群及び周辺施設に再エネ電力を供給する。電力消費の大きい複数のデータセンターの電力を全て再エネルギーで供給し、地域の脱炭素化を図ることなどを目的としている。石狩市の「脱炭素先行地域」に関する講座は、市民カレッジとしてまだ取り上げていないがいずれ企画して実施したい。