2023/05/24
5月19日(金)主催講座1「家庭菜園で美味しい野菜を作るこつ」の第2回「家庭菜園のポイント『定植、播種と栽培管理について』」を石狩市花川北コミュニティセンターで開催しました。講師は、大道技術士事務所代表で元拓殖大学北海道短期大学教授の大道雅之さん、受講者は29名でした。
大道さんは最初に前回のアンケートで寄せられた受講者の質問に答えることから始められました。
質問1:小さなハウスの管理について
回答:ハウスは温度が確保できるので、ミニトマトやピーマンなど収穫期の長い作物には適している。また、露地ではうまくいかないホウレンソウなども良い物が出来る。灌水も最近では自動灌水の装置が販売されている。注意点は温度が上がりすぎること。肩換気や出入り口での換気を十分に行う。日の出後はすぐに温度が上昇するので朝早めの換気が必要。
質問2:手頃なPHメーターはないか?
回答:簡易測定が出来る「アースチェック液」や土壌テスター(A-leaf、デジタル土壌酸度計)などがある。酸度測定は、石灰や堆肥を散布する前と散布後畑を起こした時の2度計るとよい。計る土は起こした深さの物。小さな畑は一か所でよいが、3間×3間くらいの大きさなら3か所くらいの土を取って計るとよい。
「アースチェック」:750円くらいで45回使用可能。
「土壌テスター A-leaf」:1200円くらい。機能が強い。
質問3:堆肥の使い方について。前面に施すべきか畝だけで良いか?牛糞堆肥と馬糞堆肥の違いは?
回答:できれば畑の全面に撒く方が良い。石灰散布も同じ。
馬糞堆肥についてはあまりデータが見当たらなかったが、やりすぎなければ良いのではないか。
質問4:チッソ分の追肥はどうしたらよいか?
回答:チッソ成分は人間でいえばご飯にあたり、植物の体を作る。品目に応じて対処する。ダイコンなどは、元肥中心。トマトやナガネギなどは元肥を控えめにして必要に応じて追肥する。
質問5:培養土について
回答:表示を見て、作物に適応したものを使う。
質問6:芽の出たタマネギやイモ類は植えられるか?
回答:芽が出たタマネギは花が咲くので不可。芽が出たジャガイモは、1cmくらいまでならOK。
質問7:乾燥剤は肥料になるか?
回答:撒いても害にはならないが、効果は疑問。
質問8:肥料について
回答:肥料成分には主にチッソ、リン酸、カリの3要素がある。
チッソ:体をつくる働き リン酸:代謝を司る働き カリ:水分、養分の運搬にかかわる働き
質問9:成分8・8・8の肥料はどんな作物に使用するとよいか?
回答:どの作物にも使える。ただし、やり過ぎないこと。
質問10:有機質肥料について
回答:有機質肥料はゆっくり効くことを覚えておく。
本日のお話は、以下のような順で進められました。
1.マルチ・トンネルについて
2.トマト栽培について
3.イチゴ栽培について
4.タマネギ栽培について
5.ホウレンソウ栽培について
6.根菜類の栽培について
1.マルチ・トンネルについて
1)被覆資材の種類
2)トンネルのかけ方
トンネルは専用支柱などの上にフィルムをかける方法。支柱間隔は80㎝程度。ポリエチレンフィルムをかけることが多く温度調節は穴あけ換気で行う。不織布をかける場合は、保温性はやや劣るが高温になり過ぎることが少なく、掛け放しで管理できる。
ベッド幅とトンネル支柱(ポール)の長さの関係は、ベッド幅60㎝、90㎝、120㎝に対してポール長150㎝、180㎝、240㎝でフィルムの幅はポール幅の+30㎝とする。
3)マルチのかけ方
①マルチの種類と機能
透明のマルチは、地温を上げるが雑草も多くなる。黒マルチは、地温は上がらないが雑草を抑制。グリーンマルチは、透明と黒の中間。雑草の多寡など畑の状態に合わせて使用すると良い。家庭菜園ではグリーンマルチが無難。
・マルチの色、幅を決める
マルチ幅は、ベッド上面幅+(ベッドの高さ×2)+20~30㎝
・マルチかけ
植え付けの3~4日前に行う。風のない日を選ぶ。土とフィルムの間にスキマがないようにする。2~3人で作業する。最後に土に埋めた部分を軽く踏む。植え付けまで、マルチが風に煽られないようにマルチの上に土を入れたビニール袋などを置く。
トンネルは、作物の頭がつかえるようになったらはずす。マルチは最後まで。
※定植後、風よけ(あんどん)を付けると良い。果菜類は、支柱を立てる。
2.トマト栽培について
トマトは、強い光と中温を好む。適温は、昼:21℃~26℃。夜:10℃~15℃。10℃以下では花粉が機能不全となる。30℃以上では落果や果実の着色不良が起きる。
1)苗の選び方
葉が育っているかどうか。花が一輪咲いているくらいが植え付け時期。葉と葉の間が間延びしないもの。子葉が青々としているもの。
2)畑づくり、施肥
①施肥
元肥は、窒素分を基準にして全面に行う。窒素10㎏/10a。追肥は、第3花房開花期から各花房開花期ごとに2g/1㎡程度施すが、草勢が旺盛な場合は省略する。マルチの場合は、マルチをはぐって施す。
施肥の計算⇒10㎏/10aは1㎡当たりに直すと10g。8・8・8の肥料を使う場合には、10g÷0.08で125g/1㎡となる。しかし、5・5・5の場合は、5%ではなく15%になっているので注意が必要。肥料の表の表示ではなく、裏の成分表を確認すること。
②畑づくり
・施肥、耕うん、ベッド作りは3~4日前までに済ます。
・10㎝程度の高さのベッドを作りマルチをすると良い。
③定植
・浅植え、深植えは不可。
・定植後すぐに支柱を立てて誘因する。
④トマトの生理
・第一花房から次の花が咲くまではおよそ2週間ほど。この頃には頭がトンネルにつかえるくらいになるので、トンネルをはずしてやれば虫が受粉させてくれる。
・一つの花房が充実するには、上の葉が3枚必要。あとは、温度があれば着色する。
⑤病害虫
被害があれば手で取る。
3.イチゴの栽培について
これから植えるなら四季なり(エランなど)の品種を植えると良い。通常は、秋に植えて翌年の夏に結実。
4.タマネギ栽培について
苗ならこれからでも出来る。
5.ホウレンソウ
・露地では難しいが挑戦して欲しい。
・直播の場合は、間引きが必要。
・覆土は、種の厚みの3倍が基準。深植えすると芽が出ないことがある。
・播種して覆土後は、軽く踏んで鎮圧すること。
6.根菜類(じゃがいも、サツマイモ)
・ジャガイモ
5月中過ぎには植えることが出来る。芽を付けて40gくらいの大きさであればOK。芽が動いている物の方が成長が早い。植え付けは、軽く溝を掘り、植えた後5~6㎝の土をかけ軽く踏んで鎮圧する。土寄せを行う。
・サツマイモ
道内の栽培面積が増えている。
以上で本日のお話は終了しましたが、各作物の栽培要点を具体的に示していただいたので、受講者には大変参考になったと思います。
最後に受講者から寄せられたコメントをご紹介します。
「より具体的な栽培方法を説明いただき参考になりました。ありがとうございました」
「今までの栽培方法がまちがっていた点が明解になり、早速今年から実施しようと思う」
「家庭菜園と云えども美味しい野菜作りは大変です。トライアンドエラーでレベルアップかなと思う」
「参考になる項目ばかりで家庭菜園に取り入れ収穫増大に結びつけばとわくわくしています。ササギ豆の発芽が毎年良くないので時間があれば教示ください」
「知らない事が少しずつ解ってとても良かったです。長ネギを植えていますがネギ坊主をどのようにしたら良いのか、どの部分を食べたら良いのか教えて欲しい」