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主催講座6「地球温暖化とCO₂地中貯留の取り組み」第2回「二酸化炭素の地中貯留実証試験の実際」

2023/08/20

 主催講座6「地球温暖化とCO₂地中貯留の取り組み」の第2回目は「二酸化炭素の地中貯留実証試験の実際」がテーマ。
8月8日(火)苫小牧市にある日本CCS調査㈱苫小牧CCS実証試験センターを訪れ、最先端の温暖化対策の取り組みを見学学習しました。施設見学の人数制限があり受講者は19名でした。 
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以下はその概要です。

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CCSとは
〇CCSとは「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語に翻訳すると「二酸化炭素・回収・貯留」の意味。火力発電所や工場などで排出されるCO₂を大気中に放散する前に捕らえて、地中に貯留する技術のこと。
〇我が国は、2050年時点のCCSの想定年間貯留量について年間1.2~2.4億トンを目安としており、2030年にCCSを導入するとした場合、2050年までの20年間は、毎年600~1,200万トンずつ貯留量を増やしていく必要があるとしている。

日本CCS調査㈱の概要
〇訪問先企業は日本CCS 調査㈱。該社は2008年に設立され、資本金は2.4億円。株主は電力・都市ガス・石油・プラント設計・建設・商社等33社で構成。本社は東京にあり従業員は約100名。このうち今回訪問した苫小牧市のCCS実証試験センターには20名が在籍している。
〇該社は、海洋汚染防止法に基づき環境大臣の許可を得た経済産業省の委託を受けて、我が国初の二酸化炭素の分離・回収・利用・輸送及び地中貯留技術の調査・研究や実証試験を行うことを主な事業内容としている。
〇国は2030年までに全国5ケ所でCCSを実際に行う計画で、先般その候補地が発表されたが苫小牧はその一つとなっている。 23,6,2,2.png

地球温暖化対策の一翼を担う
〇地球温暖化によって起きる様々な重大な影響に対しては、温暖化に備える渇水対策などの「適応策」と温室効果ガスそのものを減らす「緩和策」があるが、該社はこの緩和策のうちの一つであるCO₂の回収と貯留の取り組みの一翼を担う。
〇カーボンリサイクル(CCUS)という取り組みがある。これは溶接やドライアイス等のCO₂直接利用とともにCO₂を資源として捉え、分離・回収したCO₂の鉱物化・人工合成等により化学品・燃料等へ再利用し大気中へのCO₂排出を抑制する取り組み。省エネ・再生可能エネルギーそしてCCS等とともに地球温暖化対策のカギとなると言われている。
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苫小牧CCS大規模実証試験の概要
〇苫小牧市におけるCCS大規模実証試験は、隣接する出光興産㈱北海道製油所の水素製造装置から発生したガスの一部を1.4㎞のパイプラインで運び、CCS実証試験センターでCO₂を分離・回収。その後、圧入設備で、傾斜した2本の圧入井によって海岸から3~4㎞離れた2層の貯留層(海底下 1000~1200mの萌別層と同2400~3000mの滝ノ上層と呼ばれる層)へ圧入・貯留するというもの。
〇総事業費は地上設備100億円、モニタリング関連100億円、井戸掘削・圧入関連100億円の合計300億円。
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苫小牧CCS実証試験の目的
〇苫小牧CCS実証試験事業の主な目的は次の4点。
①分離・回収から貯留までのCCS全体を一貫システムとして実証
② CCSが安全・安心システムであることの実証
③情報の公表によるCCSへの理解促進
④操業技術の獲得による実用化に向けた取り組み

CO₂を分離・回収、貯留するメカニズム    
〇CO₂を分離回収する方法としては、CO₂吸収塔とCO₂放散塔そして低圧フラッシュ塔の3塔を活用した世界初の省エネ型・2段吸収法と呼ばれる方法を採用。この方法は通常型よりも大幅に分離・回収に伴うエネルギー削減効果があり、CO₂を含むガスから安定して濃度99%以上の高純度CO₂を分離・回収することが可能。
〇CO₂を貯留するメカニズムは、以下の通り。
①CO₂を貯める貯留層は、上部がCO₂を通さない遮へい 層と呼ばれる地層で覆われ、CO₂が漏れない地層であることや活断層などが近くにないことが求められる。これまでの調査で我が国のCO₂貯留可能量は約2400億トンと推定。
②貯留層は主に砂岩で、砂粒の間の隙間に毛細管圧力によりCO₂を貯留.
③CO₂の一部は長い年月をかけて地層水(塩水) に溶解、溶解した地層水と岩石が化学反応し約1000年の年月を経て鉱物化。長期間安定的に貯留される。苫小牧ではマグネシウムやカルシウムなどの鉱物が形成されると考えられている。 
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〇貯留にあたっては一定の温度と圧力により「超臨界」と呼ばれる体積が気体の300分の1となる液体と気体の両方の性質を持った状態で大量に貯留される。
〇 今では欧米などを主体に約200の商用プロジェクトが進行中であり、このうち既に30か所が操業している(2022年9月時点)。なお、CO₂を地中に圧入することは、原油の回収増進(EOR)を目的として40年以上も前からアメリカの油田で行われている。
〇苫小牧での実証試験期間は2012 年度に始まり、準備期間を経たのち2016年からCO₂を圧入し始め、3年を経た2019年に30万トンの圧入目標を達成し圧入を停止した。現状の萌別層圧入井を用いたシミュレーションでは573万トンの圧入可能量があると推定されている。
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現在はモニタリングの継続と情報公開
〇圧入目標を達成した苫小牧CCS大規模実証試験。現在はモニタリングの継続と設備の保全と機能改善を行っている。モニタリングシステムとしては、圧入後のCO₂の状態や微小振動・自然地震の常時観測、四半期ごとの海洋環境調査を実施中であり、現在に至るまで異常を示すデータは認められていない。
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実証試験の理解促進に向けて施設見学会を実施しているほかパネル展や講演会を開催するなど広く情報公開に努めている。  
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 〇2018年の北海道胆振東部地震でも地上設備には異常が無く、震源はCO₂貯留層とは距離的に離れていること、貯留層の温度・圧力の観測結果等からCO₂漏洩を示唆するデータは確認されていないことなどの情報を公開し理解を得た。             
〇2021年からはCCSとCCU(回収したあとの利用)の連携運用の検討・準備に入っている。

苫小牧市との連携
〇全国115カ所の候補の中から選ばれる前から 苫小牧市はCCS実証試験の誘致活動を始め、現在でも「苫小牧CCS・ゼロカーボン推進協議会」を通じた各種取り組みを行っている。

CCS実証試験事業の成果
〇CCS実証試験事業の成果
①CCS全体を一貫システムとして実証、30万トンのCO2圧入を達成
②CCSが安全かつ安心できるシステムであることを実証
③CCSへの理解促進の継続実施
④実用化に向けた取り組み課題を整理

CCS商用化に向けた課題
〇2050年の年間CO₂貯留量1.2~2.4億トンの本格展開を可能とするため、2030年までのCCS商用化・ビジネスモデルの構築に向けての課題は以下の通り。
①CO₂の分離・回収にかかるエネルギーコストの削減・低コスト化
②全国沿岸域に点在しているCO₂大規模排出源と貯留地域との間の大規模輸送技術の確立。(液化CO₂船による輸送実験等)
③貯留適地の確保
④現状、CCS事業は利益を生まないため事業者に対するインセンティブ施策や官民の責任分担の法整備による明確化、社会的受容性の向上に向けた環境整備が求められる。
法整備に関しては次期国会においてCCS事業法が審議される見通し。

☆会社の概要と実証試験事業の概要説明を受けたのち、受講者は施設内を見学。コンピューターによる集中管理が徹底された管理棟の現場で係員の説明に耳を傾けました。
また、バスで構内を周回、車内から設備全体を見たあと構内に設置された圧入井施設内に立ち入り30万トン圧入経過等について説明を受けCCS施設見学を終えました。 
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☆一行は、このあと苫小牧市役所を訪れ市の担当者から同市の産業と立地企業の状況のほかゼロカーボンの取り組みについて1時間ほどにわたって説明を受け帰路につきました。

《受講者の声》
「今年の夏は特に熱い日が続いていますが、CO₂を削減するためにこんなに大規模な実証試験が行われているのを見せて頂き、これからももっと現実のものとなって地球の温暖化が避けられるようになることを祈っています」
「普段見学できない日本CCS調査㈱の地中貯留実証試験の現場を見学でき、地球温暖化とCO₂減少対策の理解が深まり、非常に参考になりました」
「予約で一杯という見学ができて良かったです。実験で終わらせずに次世代・次々世代の人達が住みよい環境であって欲しいと願っています」




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