8月30日(水)、主催講座7「アイヌ文化を旅する」の第2回「ウポポイ(民族共生象徴空間)を訪ねて」の見学学習を行いました。受講者は38名でした。
バスは午前8時に市民図書館前を出発し、高速道路を通って10時に白老町若草にあるウポポイに到着しました。胆振地方は天気予報通り雨になりましたが、施設内移動に支障が出るほどではありませんでした。ただ、残念なことに野外での催物が中止になってしまいました。
体験交流ホールでの伝統芸能上演を団体鑑賞する以外は、
それぞれのアイヌ文化に対する興味・関心をもとに広い空間を自由に巡り学習を深めしました。
〇見学学習日程
〇ウポポイとは
ウポポイは「民族共生象徴空間」の愛称で、白老町のポロト湖東岸に、2020年7月20日アイヌ民族の歴史・文化を学び伝えるナショナルセンターとしてオープンした。
主要施設は、国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園、慰霊施設からなっており、アイヌ文化の復興・創造・発展のための拠点とされている。
〇ウアイヌコロコタン(民族共生象徴空間)案内図
◇エントランス棟
馬蹄形のフリーゾーン。券売所、インフォメーション、休憩室、アイヌ工芸品などのショップ、レストラン、フードコートもありアイヌ食文化も楽しめる。
〇国立アイヌ民族博物館
ウポポイの中核施設としての役割を担う国立アイヌ民族博物館は,先住民族であるアイヌの尊厳を尊重し,国内外にアイヌの歴史・文化等に関する正しい認識と理解を促進するとともに,新たなアイヌ文化の創造及び発展に寄与することを理念としている。博物館の運営は、指定法人である公益財団法人アイヌ民族文化財団が行っている。
◇広い展示場
◇イナウ(木幣)
◇アットウシ(左・中)
アイヌの伝統衣装でオヒョウやシナノキの樹皮で作られた繊維を使用している。
◇トンコリ(右)
トンコリはアイヌに伝わる伝統的な弦楽器で、通常は五弦であることから「五弦琴」と訳される。
◇探究展示 テンパテンパ
アイヌ文化に触れることができるコーナー
テンパテンパ(さわってみてね)
◇2階広角窓よりの風景
〇伝統的コタン
アイヌの昔のチセ(家)が再現され、生活空間を体感できるエリア。室内見学の他、アイヌの暮らしや文化について参加、体験などのプログラムがる。
◇5棟のチセがあり、3棟が公開されている
◇チセの内部
◇弓矢体験ほか
◇民族衣装を着用体験ほか
〇チキサニ広場
この広場にある屋外ステージでは、ユネスコ重要無形民俗文化財指定の「アイヌ古式舞踊」やムックリ(口琴)の演奏など伝統芸能が上演されています。
この日は雨のため残念なことに屋外行事が中止になったので7月4日の下見時に撮影したものを紹介します。
◇上演前の演舞者勢揃い
◇子守歌
◇ムックリ演奏(口琴)
◇イヨマンテリムセ(熊送りの踊り)
〇イカラウシ工房
展示のほかにスタッフによる実演も行われ、長く受け継がれている技術を見学できるほか、木彫りや刺繍の体験もできる。
◇工房内部
◇チエㇷ゚ケレ(魚皮靴)とルㇱ(熊の毛皮)
◇木皮糸
◇木皮糸作り実習
〇ウエカリ チセ 体験交流ホール
ユネスコ無形文化遺産 にも登録されている「アイヌ古式舞踊」や、楽器演奏(ムックリ(口琴)・トンコリ(五弦琴)など)など、アイヌの伝統芸能を上演するホールです。
いしかり市民カレッジは、11時30分からの上演(20分間)を団体鑑賞。演目は「シノッ」(伝承のかたち)の中から5演目でした。
・ウウェランカラㇷ゚ 正式な挨拶
・シチョチョイ 豊作の踊り
・ユカラ/サコロぺ 英雄叙事詩
・ムックリ 口琴
・イヨマンテ リムセ 熊の霊送りの踊り
〇ヤイナホッカラ チセ 体験学習館
教育旅行などの体験活動や楽器演奏・調理体験などができる施設。
◇ムックリとトンコリの実演を体験
・ムックリ(口琴)には、竹や鉄、木製などさまざまな種類があり、今回演奏したのは竹製のもの。竹の真ん中が彫られて弁になっていて、口に当ててヒモを引っ張ることで、音が鳴る仕組みになっている。口の形を変えたり、口の中で舌を動かしたりすることによってさまざまな音色が奏でられ、自然界に聞こえる雨や風の音、動物の鳴き声に加え、自分の感情なども表現されているとのことでした。
・トンコリ(五弦琴)
アイヌの撥弦楽器。大きさは全長120cm、幅10cm、厚さ5cm程度。木をくりぬき,響板を張りつけて胴をつくり,五弦を張ったもの。奏法は肩に立てかけるか,抱きかかえるようにして両手の指ではじく。
第1回講座では、若い関根摩耶さんがアイヌの精神文化に誇りを持って海外に発信しようと活動しているお話を聞きました。そして今回は、存立の危機にあるアイヌ文化の復興・創造等の拠点として国が整備したウポポイで、アイヌ伝承文化の一端を学習しました。アイヌの人々の生命と暮らしと文化を守り豊かに継承発展させるために、私たちに何が出来るかを問う旅でもあったように思われます。
最後に受講者の感想を一部要約して紹介します。
「充実した一日でした。一度は伺おうと思いつつ日延べしていましたが参加してよかった。北海道に生まれたのに何も知らなまった。アイヌの暮らしぶりが少し分かった」
「アイヌ文化の歴史・言葉・信仰・生業・食・芸能を差別受けるなど苦難を歩んできた。しかも、アイヌの人たちは偏見に屈することなく自分達で文化の伝承、保存に尽力してきた。一部は消滅したが、復興が叫ばれ保存に広がりを見せるようになった。こうした背景に尽力のある事を忘れてはならない」
「一日中雨で残念でしたが思っていた以上に広く立派な博物館で驚いた。展示作品を見てもアイヌの人達の工芸の技法に感心させられた」
「ウポポイを訪ねる見学学習に参加させて頂き、アイヌの歴史や文化、国立アイヌ民族各物館、伝統芸能、カムイの暮らす世界観(映画)上映など体験することが出来た」
「時間が少し足りなかったですね。上からの施設という感は免れませんが、芸能や神話等、またアイヌ系の方々と直接話が出来てよかった。受講生との会話も楽しいですね。その会話で知ったのですが、旭川アイヌはもと石狩に住んでいたのだと、、、。それも埋もれてしまったようなので自分なりに掘り起こしたいと思う」