11月30日(木)まちの先生企画講座4「ミツバチとハチミツ~ハチミツから見る石狩の自然」の第1回「ハチと花。そしてハチミツ」を石狩市民図書館視聴覚室で開催しました。講師は尾形優子さん、受講者は17人でした。
司会者から開講の挨拶と講師を紹介し講座が始まりました。
【自己紹介】石狩で夫婦で養蜂を営んで10年位になります。ミツバチを飼ってハチミツを採り、ミツバチのため花を育ています。今回3回の講座で色々と紹介していきたい。1回目はミツバチと花そしてハチミツのテーマでお話します。
【概要】
スライドで用意された資料に沿ってハチミツとはなにか、花とミツバチの関係、ミツバチの特徴、養蜂家とハチミツ、一般的な養蜂家と尾形さんとの違い、蜜源となる植物・石狩の自然について講義したあと5種類のハチミツをテイスティング。異なる蜜源のハチミツの味の違いを体験しました。
ポイント ミツバチとはセイヨウミツバチのこと。ニホンミツバチは北海道にはいない。
【以下講義内容】
ハチミツとはミツバチが花の蜜を集めて濃縮して溜め置いたもの。レッドクロバーとかの花を吸ったことがあると思いますがハチミツほど甘くないですね。これをミツバチが凝縮し貯めたものがハチミツです。ミツバチのご飯であり越冬のための保存食です。ミツバチは冬眠でなく越冬しているので、消耗を出来るだけ抑えて春を待つという生活している。
2、ハチミツの組成は80%はブドウ糖と果糖、残り水分20%と微量のビタミン等(300種類)からなっている。
原料となる花蜜(ネクターという)の成分はショ糖(二糖類)で水分60%以上のものを外勤バチが胃の中に入れ持ち帰り、口移しで内勤バチに渡し、6角形の巣房に貯め、みんなの羽ばたきで水分を飛ばす。それを繰り返しているうちに、水分20%になったときハチミツになる。消化を繰り返すことでブドウ糖と果糖の単糖類ですぐ吸収される糖になっている。
3、花はなぜ花蜜をだす?
花粉を運び受粉を手伝ってもらうため、花の断面ですががくの下に蜜をだし動物を呼び寄せる。これはマロ―という花で蜜を吸っている様子ですが、花粉が多くよくわかり易い。こうして花粉を付ける物を送粉動物(ポリネーター)という。
4、植物の受粉には風媒花と動物媒花がある。
・風媒花ー花粉を風に運んでもらい受粉する(代表~スギ・シラカバ・イネ・トウモロコシ等)。
・動物媒花ー花粉を昆虫、鳥などに運んでもらい受粉する。花を咲かせる植物の80%は動物媒花であり、確実性を重視しているから。
多くの動物がポリネーターとなる(ハチ、アブ、ハエ、蝶、コウモリ、アリなど)。ミツバチは優れたポリネーターなので植物はミツバチに来てもらいたい、ポリネーターはよりたくさんの褒美(花蜜)が欲しい。花はハチに来て欲しいので、目的の昆虫を呼ぶ工夫をしている。
5、花はどうして色や香りや形をしているのか。
人間のためではありません。優秀なポリネーターに集まってほしいから。
①色
ミツバチは赤は黒く見え、黄色や青の花はよく認識する。紫外線を認識することが出来、多くの花は紫外線を反射する斑点があり目標を教えている。
タンポポの花は鳥や虫たちはどう見えるか。単なる黄色でなく真ん中が反射して、蜜の場所を教えている。
ハルシャギク、キク科は頭状花と舌状花からできている。花も無駄な働きはしないように、頭状花が開いて、受粉の準備が出来たら色素が輝いてみえる仕組みになっている。
ナシの花 バラ科 葯の所が赤い、昆虫には真ん中が輝いて見えていて蜜の場所を教えている。
②形
カキドウシはミツバチが止まれる場所を用意している。
ヒルガオはロートが深いとミツバチは届かないので大型の動物に来てほしい事がわかるように花の形をみるとどういう昆虫に来てほしいかがわかる。
③香り
ハマナス ドックローズというバラの原種ですがミツバチは大好きな花で、蜜はとれないがやってくるのは花粉がたっぷりあるから。ミツバチの幼虫を育てるのに必要で、香りは仲間の伝達に使っている。フェロモンはバラの香り成分に多く含まれている。
6、色・香り・形でミツバチを呼び寄せる工夫を植物のポリネーター獲得戦略と名付けている。
ミツバチの羽音が聞こえると花蜜の糖度を上げる、振動で花粉を放出するとか近年新しい研究がされている。開花時間、開花時期をずらすとか。ズッキーニ―とかは朝早く花を咲かせる。ミツバチは勤勉なので朝早くから働きたい。共存戦略でもある。
7、ミツバチはどうして優秀なのか。
セイヨウミツバチはコロニー(群)単位で生きている統率のとれた集団(社会性昆虫)で、見つけた場所は集団でそこに集中していく。これはセイヨウミツバチの特性でチュチュと吸ったら戻るを繰り返す。一匹が2000回も花を往復する。ミツバチとの違いは例えば蝶々では色んな花に気まぐれにひらひら飛んでいく。タンポポの花粉がチューリップについても受粉できない。ミツバチは同じ種類と決めたら同じ植物に付くので確実に受粉することが出来る。植物にとっても好都合なポリネーターなのです。
8、植物とミツバチはWINWINの関係で出来上がったのがハチミツで、蜜源ごとに味、香り、色が異なるハチミツが出来る。
9、北海道でどんなハチミツが採れているか。
2016年のデータですが今は570tくらいで量は増えているが構成割合は変らない。
ハチミツの生産量は北海道が1番だが北海道にいる養蜂家は10位以下となる。日本中の養蜂家の7から8割は移動養蜂で花の時期になると本州の各地から北海道に来る。蜜源のデーターは集計前後の花期が抜けているのでデータとしては不十分。
10、講師の尾形さんがやっている石狩の主要な蜜源を「蜜源カレンダー」から蜜源となっている花を写真で紹介。
移動しない養蜂を行っているので、花の端境期を埋める植物を栽培している。Beeガーデンと呼んでいる。ひまわり、タイム、バジル、青シソ。シソ科の花は蜜源となるものが多くミツバチも好きです。
一般的な養蜂家は山林・防風林・河川敷などでやっていて自然頼みだと蜜源が途切れる時期はつなぎとして砂糖水を与えている。私は移動しないので、花期が途切れないように蜜源としてハーブガーデンで栽培している。9月以降は一般では採れないが、私の所では咲いている。
春一番
さくら・かえで・たんぽぽ。
次が
ヒメオドリコソウ・ほぼ雑草ですが主要な蜜源となっている。
スイセンも花粉が多い花。
写真のオレンジ色の団子は、体についた花粉を唾液で団子にして後ろ足のくぼみにひょいと挟んで持ち帰り食料にしている。
ムスカリも貴重な蜜源、クロッカスなど春が遅いが一斉に咲く花はミツバチも喜んでくれてます。
トチはトチミツとしてまとまった蜜源、キハダ(シコロ)クリーム色の小さな花、黒い実になりアイヌの人は薬用にも使われていた。
ニセアカシア(ハリエンジュ)が咲くとすぐわかる臭い 流密が太い、アカシア咲くと何が何でも集中するので単花蜜(純粋な蜜)が採れやすい。他の木でまとまった量がとれない。
レッドクローバー初夏 7月から8月にかけて。
白クローバー 6月末から7月に咲く。真ん中はシナガワハギ(マメ科)英語でスイートクローバー、繁殖力が強い。名前は日本では最初に品川に入ってきたから。メギドットとも呼ばれハーブ、お茶にするとむくみを取る。
クリの花は猫じゃらしのような形で一つ一つが花。
シナノ木 大木になりやすい、フルーティな香りの木で街路樹として多く見られる。札幌駅北口の街路樹とか札幌屯田(ホクレンショップ辺り)の街路樹に使れている。果密がむき出しになってになってキラキラしている。
お盆過ぎると
イタドリ、ソバ、栽培期間の調整で花期が比較的長い(7月から9月)、キリンソウ(アキノキリンソウ)。
11、蜜源を変えているハチミツテイスティングはじまり
まずはテイスティングのしかたを聴いた後、用意された5種類のハチミツをひとつづつ順番に、色の薄い順に一緒になめて試食しました。
1番目はアカシア 花畔の防風林から採れたもの(場所・地域でも変る)。
2番目はHARU 春の(さくら)タンポポ、カエデ、フジ。今年のHARUは桜が少ない、開花後の低温でハチが活動出来ずほぼ自己消費してしまった。
3番目はクリ(まろやか)・シナノキ(フルーティな香り)。
4番目はハーブ イタドリ・ひまわりが主・ハチミツソウ(養蜂のため輸入種だが繁殖力弱く今は消滅)・タイム。
5番目は本州からの取り寄せ 烏山椒(カラスザンショウーミカン科)みかんの皮の味。
〇蜜源による味の違いを体験することが出来た。
最後に質問と回答のやり取りがあって終了。
①なぜ特定のハチミツができるのか。
色んなものを混ぜて売っていた。百花蜜と呼ぶ以前は雑密といわれていた。セイヨウミツバチの習性から特定の植物の花に通うので特定のハチミツが採れるが、ニホンミツバチの場合は北海道にはいないこと、二ホンミツバチはまとまった行動はとらずバラバラに動くので、百花蜜にしかならない。
②スーパーのハチミツ
スーパーで見られるのは殆どが輸入品。有名なY養蜂場も8割は外国産。中国からの輸入が一番多い。品質と価格は比例しているかな。
③トウジョウカについて 頭状花と舌状花
講師の尾形さんの話し方も大変分かりやすく、身近なようでよく知らなかったハチミツとミツバチと蜜源となる植物、異なる蜜源のハチミツを味わうことが出来、皆さん満足のようでした。次回が楽しみです。
アンケートのコメントををいくつか紹介します。
「石狩の主な蜜源の植物、勉強になりました。はちみつテイスティング楽しかったです」
「ミツバチの働きと植物の生態など大変勉強になりました。それぞれが命をつなぐ働きがあり、小さなミツバチが小さなお花に何度も通って集めたハチミツ。彼らの大事な食べ物であり、越冬するための保存食なのを私たちはおすそ分けしていただいていること、それを忘れずに大事にいただきます」
「とても勉強になりました。以前からとても興味を持っていたので楽しみに参加しましたが、ますますハチや花など自然の生態系にありがたさを感じています」