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まちの先生企画講座1「羊飼いの生活」第2回「羊の放牧と河川敷」

2024/05/25

 令和6年5月20日(月)まちの先生企画講座1『羊飼いの生活』の第2回「羊の放牧と河川敷」を石狩川河川敷の放牧場で行いました。今回の講師は石狩ひつじ牧場経営者の山本知史さんで、受講者は21名でした。
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 石狩市民図書館に集合してバスで石狩川河川敷の放牧場に向かいました。約15分で現地に到着、山本さんの出迎えを受け、放牧場入り口で各自の足元を消石灰の粉で消毒してから放牧場に入りました。

 以下に山本さんのお話の概要と羊の様子などを記します。
1.なぜ河川敷で放牧か? 〜大きな成功に向けて
・3年前、東急デパートの「チーズ&ミルクフェア」でチーズを売っていた時、国交省の河川事務所の人がやってきて「石狩川の河川敷で羊を放牧してみませんか?」との誘いがあった。
・河川敷での放牧は牛、馬、羊、山羊などの動物が考えられるが、牛や馬は体重が重くてノリ面などを壊す可能性があり、山羊は単独で行動することが多いので管理が難しい、羊が最も相応しい、羊を放牧して飼育しているのは山本さんだけ、ということで誘いがかかった。
・国交省の人の話を聞いて次のようなことを考え、引き受けることにした。
(1)半年間餌代はかからない。
(2)河川敷は国が管理していて、年1回除草を行わなければならず、ノリ面の保護のためにカナディアンライグラスのような草を植えて地盤強化や豪雨時の地盤の亀裂の発見を容易にするなどの理由で、日々の維持管理が必要だそうです。
(3)河川敷ののり面は大型機械で草刈りをするが、その他の部分は、人が草刈機で除草しなければならない。面積が広大でその分多額の労賃がかかり、またガソリン使用によって発生するCO2は地球環境によくない。石狩川の長さは268km、右岸と左岸があるので計536kmにもなる大河川である。
・農林水産省みらい基金で助成対象事業を募集していたので、プロジェクト名「石狩川を百キロ続く羊の放牧地に変え、食料自給率アップで平和な国作り」で応募したところ、昨年12月に助成が決まった。200件の応募があって採択6件の中に選ばれた。3年間で1,000万円が助成されることになったので、河川敷での羊の放牧の整備事業に弾みがついた。

2.「ヤンボー!!」の声で集まる羊
・長さ500m x幅50mの河川敷(25,000m2;2.5ヘクタール(ha))で30頭の羊を放牧飼育している。通常1ha当たり20頭を飼えるといわれているので2.5haだと50頭飼えるが、今のところは慎重に進めている。
・通常の飼料(非有機飼料)を5%以内にとどめ、95%を河川敷の牧草(有機飼料)にして食べさせて育てるとJAS有機認証を取ることができる。通常飼料としてはCOOPフーズからもらった廃野菜に一般の配合飼料(トウモロコシとふすまなどの配合物)を混ぜたものを使い、これをプラスチックのバットに入れ、羊を呼び集めて入口付近の場所で食べさせている。
・ここに集めて食べさせるのは、集まってくる羊を見て動きの鈍い羊がいないか、食べている羊のお尻を観察して異常がないかなどを調べるためである。
・大声で「ヤンボー!ヤンボー!」と叫ぶと羊が集まってくる。受講者も「ヤンボー!」と大声で叫んで羊に呼びかけた。
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・「ヤンボー!」の呼び声で集まってきた20数頭の羊はすぐに餌を食べていた。ここで受講者は羊と触れ合うことができたが、大変人懐っこく、皆さん大感激でした。山本さんは全ての羊の顔をわかっていて、名前をつけている羊もいるとのことでした。
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3.7頭の可愛い子羊
・20数頭の羊が放牧されている場所から数百メートル離れた場所に7頭のメスの子羊が放牧されている。これらの子羊は5ヶ月歳未満で、ここで6ヶ月間河川敷の有機飼料である牧草を食べて育つとJAS有機認証を得ることができる。
・羊の肉としては2歳以上がマトン、1歳未満がラム、1歳〜2歳をホゲットと呼んでいる。先日ホゲットの肉を札幌市内のジンギスカン屋に売ったところ非常に美味しいと大好評であった。
・7頭のメスの子羊は一昨日他の羊から切り離してここに移した。オスが一緒にいると繁殖期に出産してしまう可能性があるからです。
・ここの子羊は山本さんが「メチャクチャ可愛い」と言う通り、本当に可愛いい子羊でした。山本さんが柵に近づくと子羊は集まってきてじゃれあうような感じでした。1頭づつ名前をつけて可愛がっているようでした。
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・羊そのものが全て人懐っこいわけではない。オーストラリアなどで飼育されている羊は飼い主が来ると遠くへ逃げ、距離を置くようにする。そこでは犬を使って管理していて飼い主は怖い犬の親分と判断しているからのようです。一方、山本さんは羊にできるだけ恐怖感を与えないよう、管理に犬を使わないようにしている。
・羊の屠殺は北海道畜産公社に依頼し、肉は自分で販売する。法律上自分で屠殺することは禁止されている。もし病気で亡くなってしまえば産廃業者にお金を払って引き取ってもらう必要がある。普段から病気に罹らないように十分注意して育てている。

4.放牧場の設備〜なんでも自分でする‼︎
・放牧場は電気柵で囲まれている。柵の下の1〜2段は比較的高電圧にしてある。以前は電気柵を自分で設置していたが、みらい基金が交付されたので最近は土木工事業者に依頼して電気柵を設置している。
・羊には水が必要である。河川敷にはもちろん水道が無いため苦労して3本の井戸を掘った。直径20cm x高さ4mの円筒状に水が溜まれば約125Lの水が得られることになり、汲み上げて使うと30頭程度の羊は十分飼育できる。
・井戸を掘る道具は、店で探したが見つからずネットなどで調べて自分で作った。30cm四方の金属板から22cmの円に切り出し、180度の2カ所に切れ目を入れた。中心に穴をあけ、金属ポールに接続し、金属ポールの先端には、回転できるように取っ手を付けた。金属皿には外周に切り目を入れてからペンチで持ち上げ垂直に曲げた。それを回転させることによって地下の砂が少しづつ皿の上に溜まり、取り除けるように工夫した。
・井戸の上部はオーガを使って土や泥を取り除き、砂の層になれば、この自作の金属皿を回転させて井戸を作った。
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5.生き様〜なんでもチャレンジ‼︎
・就農してすぐ石狩農協に加入しようしたが羊飼いのカテゴリーがないと断られ、サツラク農協に声をかけると牛ではないのでダメだと断られた。農地を探していた時も農協支援センターは、反応が鈍く、結局は自分で農地を探した。日本は新しいことに対して拒否感を持っていて、チャレンジしようとすると様々な規制にぶち当たってしまう。
・アメリカのフロンティア精神のように、日本でも新しいことにチャレンジする心とそれを応援する気持ちを持って欲しい。
・日本人は素晴らしい民族だと思うが、周りを気にしてやったことがない事に対して億劫になってしまうのが一番の弱点だと思う。誰がやらなくても自分を信じてやり通して欲しい。
・政治についても同様で、自分の意志をはっきりさせて、市民同士が意見を言い合える社会にすることが大事で、みらいを変えられるのは、子供じゃなく大人しかいない事を自覚してほしい。

 最後に「皆んなで楽しく平和に生きて行こう」と話され、今回の講座を終えられました。

受講者の感想や意見のいくつかを以下に紹介します。
「酪農の新しい哲学を勉強できた」
「とーっても楽しく、良い体験をさせてもらいました。若いメスの羊が魅力的だった。山本さんの生き方に拍手‼︎」
「ありがとうございました。羊たちがかわいらしかったです。人類が全て平和で暮らすことを願うばかりです」
「羊を飼う事に対する考えにぶれのない人だと思いました。羊に後ろからドーンと押される事なく、楽しかったです。アリガトウ、羊さん!羊年生まれのさちこ」
「気持の良い天候の中、大変有意義な見学学習ができました。羊に直接触れた経験は大、山本さんの情熱あふれるお話しは圧巻と‼︎ チャレンジする生き様、厳しさ、優しさ、おおらかさ、明るさに感銘を受けました」
「とても楽しかったです。大人のオス、少し恐いのかなと思っていたのですが。種オスでも人なつこい羊がいて、たくさんなでたり、ハグしたりする事が出来、良かったです。おりこうさんの大型犬くらいの感じでした。井戸掘りのお話しもおもしろかったです」
「羊の飼育について具体的に聞けて、また羊と触れ合えて良かったです。お祭りにも行きたいです。知人の若い動物好きの新規就農者が羊やチーズに関心を持っていたので、今日の話も伝えたいと思います。日本人の悪い所もその通り、と普段から腹立たしく思っていますが、私は周囲を無視(?)してでも正しいと考えた事は主張する方です!」
「河川敷の豊富な草に囲まれた羊達は顔つきや体格が良く、放牧の良さが伺い知る事ができました。特に山本氏の仕事に対する情熱やアイデアが各所に見受けられ、今後の隆盛に期待するところです。石狩川の河川敷地は広く分布しており類似した放牧場の拡大を期待します」





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