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 主催講座1「国宝になった白滝遺跡群出土品」第2回「白滝遺跡群出土品の価値」

2024/05/24

 4月23日(火)、主催講座1「国宝になった白滝遺跡群出土品」の第2回「白滝遺跡群出土品の価値」を石狩市花川北コミュニティセンターで開催しました。講師は、北海道埋蔵文化財センター理事長の長沼 孝さん、受講者は、38名でした。
 長沼さんは講座のお話に先立って、前回受講者から寄せられた質問に答えられました。
・グイマツとは?
針葉樹の一種で、亜寒帯に生息。寒冷地に生息するので、植林などはされていない。
・縄文時代に、縄はあったのか?
植物の繊維、特にシナノキの皮を利用した縄がよく使われた。アイヌの人たちも縄を作っていた。
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また、国宝の黒曜石のレプリカも見せていただきました。
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 本日のお話は、以下のような順に進められました。
1.「国宝」とは
2.「白滝遺跡群」の重要性
3. 発掘調査前夜
4. 発掘調査の実際
5.整理・報告書作成作業
6.石器群の変遷
7.報告書刊行・成果紹介・重要文化財指定
8.埋蔵文化文化財センター設置・ジオパーク
9.国宝格上
10.国宝の保存と活用
【おわりに】
 以下は、お話の概要です。
1.「国宝」とは
発掘調査や重要文化財指定などは、文化財保護法(昭和25⦅1950⦆年施行)に基づく。
有形の文化財で学術的価値の高い物は、重要文化財に指定され(現在約13,000点)、その中でさらに学術的価値がきわめて高い物が国宝に指定される(現在1,135点)。国宝の内で出土品は49点(建造物230点)。縄文時代では土偶5件と火焔型土器1件の6件。これまで旧石器時代の国宝はなく、白滝の出土品が初めてである。
2.「白滝遺跡群」の重要性
(1)黒曜石原産地「白滝」
・黒曜石とは、噴出した溶岩が急激に冷却した岩石。天然ガラス、比重2.4、二酸化珪素70%以上。
緻密で強い光沢があり、硬く割れやすい。
・黒曜石の名称
英語では、Obsidian。江戸時代の奇石収集家・木内石亭が著わした『雲根誌』では、漆石、烏石など。
長野県では「星糞」、アイヌ語では「アンジ」。北海道では「十勝石」と呼ぶことも多い。
・世界の原産地
600か所以上。メソアメリカ文明のマヤ文明、テオティワカン古代都市などでは黒曜石の石器を使用していた。モアイ像の黒目の部分にも使われていた。
・日本の原産地顆顆
長野県(星ヶ塔、鷹山)、静岡県(神津島)、佐賀県(腰岳)、島根県(隠岐)、大分県(姫島、白色)。
・北海道の原産地
白滝、置戸、十勝三股、赤井川(道央部の遺跡で多く出土)、道内で最も南は豊浦の豊泉。
・原産地推定
蛍光X線分析法で分析すると原産地が識別できる。
・黒曜石利用のはじまり
30万年前頃から使用されている。日本では3万7千~8千年前頃から。北海道でも3万年前の遺跡が帯広(若葉の森)や白滝で見つかっている。
・白滝の黒曜石の産状
白滝の黒曜石は、220万年前に出来た。赤石山及び八号沢、十勝石沢、幌加沢で原石が採取できる。「山」(赤石山)、「川」(湧別川の白滝と遠軽)、「海」(オホーツク海)で採取でき、それぞれで形状が異なる。
(2)旧石器研究のメッカ「白滝」
遠間栄治(白滝遺跡群を発見、調査研究活動を支えた郷土史研究家)。白滝団体研究会(『白滝遺跡の研究』)。
湧別技法(吉崎昌一提唱の細石刃剝離技術)。明治大学『北海道服部台における細石器文化』。村教委『白滝村の遺跡』。木村英明『北の黒曜石の道 白滝遺跡群』『黒曜石原産地遺跡・『白滝コード』を読み解く』
3,発掘調査前夜
・高速道路建設計画に伴い、遺跡確認のための試掘調査を行った(約20ha)。
・3者(開発局・道教委・村教委)で協議し、高速道路のルート変更の合意で、遺跡の現状保存を行った。
・国史跡の追加指定(21,898㎡⇒226,250.33㎡)をして公有化。
4,発掘調査の実際
・調査から報告書まで20年間、23か所の遺跡、面積12,3万㎡の調査
・出土石器:669万点、13.6t
・発掘作業延べ人数:69,306人
・発掘調査のスタートは、まず重機による表土除去、その後25%調査で土層、石器の出土状況を確認しながら進めた。石器の位置を記録して取り上げ、遺物分布図(ドットマップ)を作成
・白滝では石器しか出土しないので、作業員のモチベーション維持に苦労した
・石器製作と石器分布の関係、石器製作と使用の実際などを知る。雨天日は石器と土壌の水洗を行う
5.整理・報告書作成作業
・注記作業、接合作業、接合資料(3次元パズル)
・整理作業延べ人数:77,207人
・単体石器の実測図作成、接合資料実測用の写真撮影と実測図作成
・石器実測延べ人数:16,989人
・黒曜石の分類と接合作業
6.石器群の変遷 
・細石刃石器以前 ステージ1
A群:小型剥片石器 B群:広郷型ナイフ石器(広郷型尖頭状石器)
・細石刃石器群以降 ステージ2
C群:峠下型、湧別技法 D群:札滑型 E群:広郷型 F群:紅葉山型、遺跡間接合
・G群:尖頭器 H群:有舌尖頭器 I群:小型船底石器 J型:ホロカ型彫器
・押圧剥離(テコの原理による石刃剥離)
7.報告書刊行・成果紹介・重要文化財指定
・報告書:「白滝遺跡群Ⅰ~ⅩⅣ」(14冊、14,746頁、厚さ89.6㎝)
・調査の経過と概要
石器実測図(単体・接合)、石器製作の手順、石器分布図、写真、一覧表(石器属性等)
・「発掘された日本列島展」(1996・2003・2014年)への出品
・重要文化財指定:平成23(2011)年
点数:総数1,858点(石器1,423点、接合資料435組)
8.埋蔵文化財センター設置・ジオパーク・石育
・平成23(2011)年、遠軽町埋蔵文化財センターの設置
展示室(670㎡):大地に残された記憶、現れた大遺跡群、白滝での石器づくり、旧石器時代のくらし、
本物のマンモス牙、遠間栄治記念室、黒曜石ギャラリー(重要文化財展示)
・収蔵室、体験学習室(石器・まが玉・アクセサリー・骨角器・とんぼ玉・土器づくりなど)
・白滝ジオパーク
自然と文化の融合、展示室
・石育
黒曜石を知る、赤石山見学、石器づくり体験、修学旅行を活用した白滝ジオパーク紹介
9.国宝格上げ
・令和4(2022)年11月18日の答申(文化審議会⇒文部科学大臣)
・令和5(2023)年6月27日の官報告示(正式指定)
・国宝の点数:1,965点(石器1,514点、接合資料451点)
・国宝格上げ時の追加:総数107点(石器91点、接合資料16点)
・国宝指定の石器群
細石刃石器群以前の石器群(3~2.5万年前)、細石刃石器群(2.5~1.5万年前)、尖頭器石器群(2~1.5万年前)、尖頭器製作接合資料、石刃核接合資料
・新聞第1面での報道(答申・告示)、社説、日本初の旧石器時代の国宝
10.国宝の保存と活用
・地域の多彩な文化財とともに
「白滝遺跡群」(国史跡)、合気道ゆかりの地、「瞰望岩」(国名勝)、「遠軽家庭学校礼拝堂」(道有形)
・ステップアップした石育、国宝の魅力を知る、国宝を紹介
・各種学会、研究会などの開催、国際黒曜石会議
・黒曜石を生かした工芸品、表札、隠岐の工芸品、ギャラリーショップ十勝石、倒流香
【おわりに】
・「遺跡」と「遺物」のドラマは地域の個性
⇒「学史」・「調査」・「指定」・「保存」など
・「地域の宝」としての地域に根ざした取り組み
⇒「保存活用地域計画」・「石育」
・「国宝」として、世界へアピール
⇒学会、研究会など
・「ローカル」から「グローバル」へ、「グローバル」から「ローカル」へ
・「国宝」は、「世界文化の見地から価値の高いもの」「国民の宝たるもの」
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 以上が本日の講座の概要ですが、旧石器時代の国宝第1号である「白滝遺跡群」の貴重さ重要さがよくわかるお話でした。

 最後に受講者から寄せられたコメントをいくつかご紹介します。
「明解な講話、大変ききやすくわかりやすい興味がわくお話でした。ありがとうございました。数十年にわたる現場での発掘、調査、研究、発表された長沼さんの迫力ある、説得力あるお話、感動しています。楽しく受講できました!!」
「非常に理解しやすい説明で時間があっという間に経ってしまいました」
「大変面白かった。発掘をやってみたいと思いました。白滝にも行ってみたいと思いました」
「白滝についていろいろご紹介いただき、ありがとうございました。ぜひバス見学ツアーに行きたいです!以前札幌の「虹のしっぽ」のイベントで、白滝黒曜石を加工するワークショップに参加しました。また近々あるようです(5月3日)。講師:平田篤史(むかご工房)」


 




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