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主催講座5「外国人労働者の雇用とくらし」第1回「道内で働く外国人労働者の受け入れ実態」

2024/06/18

 6月7日(火)、主催講座5「外国人労働者の雇用とくらし」の第1回「道内で働く外国人労働者の受け入れ実態」を石狩市花川北コミュニティセンターで開催しました。講師は北海学園大学経済学部 地域経済学科教授の宮入隆さん。受講者は24名でした。

 
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このほど技能実習に代わる外国人材受け入れの新制度「育成就
労」を創設する改正入管難民法が国会で成立し2027年にも開始されます。国際貢献を掲げ1993年から続く技能実習制度は廃止となり大きな政策の転換を迎えます。
 こうした状況下、全国的にも特に人口不足が深刻化し外国人労働者の依存度が高まる北海道。以下は長年にわたり労働力の不足問題に関わる外国人労働問題に携わってこられた宮入さんの貴重な講座の概要です。
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この講座で話したいこと
研究での専門は産地づくりや農産物の流通等の農業経済学で、労働力不足問題としての外国人労働力問題に携わり10年ほど経つ。今回の講座では、農業を中心に北海道の外国人労働力問題の概要を話すとともに併せて介護や食品加工分野の状況について、さらには地域としての対応の必要性なども話したい。共生社会が目指されるなかにあって、この問題は外国人を入れている企業や農家だけの問題という時代ではなく、地域社会全体の問題になっている。
〇そのなかでコロナ禍や円安の影響等、北海道に外国人材が来てくれるのか。そして今国会の大きな焦点にもなっている技能実習制度の廃止と育成制度の創設などとともに話したい。
おひざ元の石狩では
〇おひざ元である石狩市における外国人労働力問題はどうかというと道内でも先進的な事例であると思っている。
〇花川の教会において水産加工・建設業界で働く外国人を交えての地域での交流会が開かれた際に出席した。雇用や仕事を離れて地域社会で生活者として交流できることは大切である。このような交流が町内会にも今後求められてくる。
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〇技能実習制度等の外国人労働力については色々な問題があるのは事実である。それを解消するためには働く場だけではなく、地域で生活者として考える必要があると考える。
〇制度で日本に来る大半の外国人は、在留に年限がありいずれ自国に帰る。言わば転勤族でもある。入れ代わり立ち代わり入ってくる中で一定の共生の場が必要であり、花川中央団地の事例など石狩市はこうした取り組みの先進的事例でもある。

なぜ今、外国人なのか
〇なぜ今、外国人なのか。北海道は人口減少の先進地である。全国平均より10年早く人口が減少し始めている。かつては570万人以上人口があった北海道、今は514万人。2030年までには間違いなく500万人を切る。労働力が不足するばかりでなく、今の市場規模が縮小することになる。
〇15歳から64歳までの働き盛りの生産年齢人口が4分の1も減っている。日本の高度経済成長を支えたのは国内の内需拡大があったことによる。しかしこれからは域内市場で作っても売れない時代になる。
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〇パーソル総合研究所と中央大学が示した労働力を埋める方法に関する資料によると全国で640万人の人手不足が見込まれるなかで対策としては働く女性を増やす、働くシニアを増やすことに加え外国人の活用をあげている。そして生産性の向上がくる。ただ、北海道農業では生産性向上のためスマート農業も進んでいる。それでも人手が足りず新たな人材の掘り起こしが必須条件となっている。
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〇農業の労働力不足要因としては、農業構造の変化があげられ、とくに食料基地として力強い農業が行われている北海道が顕著。農地は減っていないが規模拡大で補っている。地域の人口減少に加え農業の働く環境は「キツい」という現実がある。給料を上げるにも農産物価格を上げることは難しい。円安の影響もある。このようにすぐ改善できない環境があり外国人の労働力に頼らざるを得ない状況にある。制度は技能実習生から転籍が自由な特定技能に変わる中、これからも北海道に外国人が来てくれるかが課題。海外に外国人労働者が取られる可能性があるほか都市への人材の流出等の危惧がある。
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〇昔は外国人に頼るべきかという議論があったが、今はそういう時代ではない。外国人に来てもらわねば北海道の地域経済自体が成り立たない、ずっと外国人に「選ばれ続けるか」が今後の課題である。
全国・道内の外国人労働者の動向
〇外国人労働者の雇用動向をみると全国の外国人雇用人数は2023年で200万人を超えコロナ禍で多少停滞していたが全産業で2割ほど増加している。とくに食料品製造業・農林水産業は軒並み増加率が高く、農業分野では5万人を超える外国人が雇用されている。
〇北海道における外国人労働者数は2023年度、全産業で35,000人ほど。コロナ禍前の2019年と比較した場合、全国的には23%増であるのに対し道内は45%増と急増している。在留資格別では技能実習生が44%と多く20%程の道外とは異なる。地方ほど高度人材にはなれない非熟練労働者が多いことが特徴。ただし、最近になって高度人材である専門・技術的分野の外国人労働者が増える傾向にある。
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石狩市の外国人労働者の動向
〇石狩市はというと永住者を含めた外国人でみると技能実習生と特定技能の人で全体の7割を超える。北海道全体では4割弱で全国では1割強。まさに石狩市は働く在留資格の外国人が多く北海道の縮図とも言える。
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〇産業別にみてみると全国や北海道全体では3割程度となっている飲食品製造業が石狩市の場合7割を占めているのが特徴。食品製造業で働く人が最も多く、コンビニ・スーパーなどの惣菜・弁当類といった中食向け食材の供給分野にも外国人労働力は欠かせない。その次に建設業に携わる人が多い。北海道全体でみると水産加工が7割、次に農業が多く受け入れており、人口が多い札幌市では最近介護の外国人労働者が増えている。
外国人受け入れ制度の動向
今後、制度的には特定技能制度を中心に外国人材が受け入れられることになっており、「育成就労」は特定技能外国人に移行するための人材育成を担う制度である。
石狩市で多い技能実習生の場合、3年在籍していれば無試験で特定技能に移行できる。特定技能では5年滞在できるので最大8年間在留できる。難しい試験に受かれば永住・定住や家族帯同も認められる。今後必要な人材を長期就労者として受け入れていく場合、地域で受け入れ対応できるかが課題になる。就労者本人は日本語を話すことができても帯同する家族は会話もままならない可能性が高い。外国人も税金等を納め地域の住民になるわけで町内会でも日常的な会話を含め色々な対応が求められる。困りごとを含め外国人が居住する地域・町内会等で対応出来るか課題となる。
〇北海道で外国人の雇用が多い業種は、水産加工などの食料品製造業、農林業そして建設業と続く。建設業の増加はエスコンの建設、オリンピック開催などがきっかけで最近のことである。物流問題からドライバーなどの外国人も増えていくとみられる。色々な分野で外国人が増えていき外国人に頼らざるを得ない。どこまで増えるか、地域でどう対処していくかが課題になる。
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外国人受け入れ国の動向
〇外国人の数が増えていくだけではなく受け入れる国籍も増えている。昔は中国東北3省からの受け入れが多かったが、現在では全国的にみるとベトナム・中国・フィリピン・ネパールの順で多い。道内ではベトナム・中国に次いでインドネシアなどが上位を占める。特定技能ではインドネシアがすでにベトナム人を抜いていることが特徴的。インドネシアの増加要因は人口が多いことのほか、送り出し機関などの体制が未整備で、様々なルート開拓が可能だったためである。外国から人を呼ぶ場合に色々費用が掛かる。一人40~50万円ぐらいが相場であるという研究者もいるが、国や地域によって様々である。仲介するブローカーの存在が一概に悪いというのは当たらない。国や業者でばらばらであるため統一は難しいと思われる。
〇石狩市の場合、6割近くがベトナム人で次にインドネシアが多い。受け入れする側が今まで来ていたベトナム人がいつの間にか別の国籍になる場合もあり得る。国籍は多様化する。今の在留資格では滞在年数の問題をクリアする必要があり、ベトナム、インドネシアに次いでインド人も増える可能性が高い。日高の軽種馬業界は400人ほどのインド人が暮らしている。家族が帯同して子供も生まれる。浦河町ではインドのヒンズー語の母子手帳もある。こういう時代がすでに来ている。
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道内の地域別外国人受け入れ動向
〇技能実習生の道内地域別受け入れ状況をみると石狩市を含む石狩振興局管内は最も多く、道内の外国人労働者受け入れの中心地でもある。
〇以前はホタテの殻ムキ等の水産加工の多いオホーツク振興局が多かったが、現在では石狩振興局が一番多い。人口の多い道央圏は働く外国人も多くなっている。旭川中心とした上川地域など都市圏で建設関係が増えているところが近年の特徴である。空知も建設業で増えている。
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外国人労働者制度の変化
〇次に外国人労働者制度の変化について見てみたい。技能実習制度が悪いから酷い働き方をさせたという声もあるが、制度が変わったからといって人権侵害などの問題が解決することはない。これまでも述べてきたとおり、重要なのは、どう地域でしっかり受け入れするかが問題。制度の問題に矮小化してはいけないと考える。
〇農業の分野では外国人研修制度がまずあった。その時の研修生は最大1年しか日本にいることができなかった。食費や家賃などは受け入れる側が全面的にみていたため賃金は低かった。
〇2010年、在留資格としての技能実習制度が出来てこの制度がメインになってくると急に北海道でも外国人が増えてきた。つい最近のことである。
〇農業でもかつての外国人研修制度を使うのはもうだめだとなり、労基法が適用になり日本人の労働者と同じ待遇になった。
〇日本は単純労働力としての労働者を受け入れないという考え方が一貫している。国は労働者移民ではなく高度人材を受け入れるという考え方がベースにあるがこのことで制度上の矛盾点も生まれた。
〇人材を実習生として受け入れ育ててから長く居させるという育成就労の考え方は、1993年から始まったこの技能実習制度のもとで開発されてきた。2017年に技能実習生の人権保護を謳った画期的な法律ができたことも重要である。
〇労働者として本格的に受け入れるということで出来た特定技能制度。技能実習生は最大でも5年以内に本国に返さなければならず、もっと長く働いてほしいというニーズに対応出来なくなったため取り入れられた。入れ代わり立ち代わり受け入れしていると中国で人は集まらなくなりベトナムなどに変わっていった。
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育成就労を基本とした制度の創設
〇世界的にも社会的にも問題なってきたこれまでの制度。数年後の2027年までには技能実習制度は廃止され育成就労を基本とした特定技能実習制度になる。
〇労働力でなくて人材育成による途上国への技術移転を基本としてきた技能実習制度。技能実習法という法律ができて、滞在可能期間も3年から5年になった。2019年に特定技能制度が出来た。産業界からの要請により安倍政権時代の「骨太の方針」の中で移民政策ではないとされたが、この方針が示された。今までダメだった外国人の労働者としての受け入れが農業などでも可能となった。
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〇 2023年には、農業でも特定技能2号が適応されることとなり、家族帯同も認められた。能力の高い人は永住定住も可能となり、すでに農業だけでも50人以上が合格した。今度の育成就労制度は原則3年以内のOJT期間を経たのち試験に受かれば特定技能1号さらに2号になれば長期就労が可能となる。人材育成による技術移転はサブとなる。高度人材を育成しようという考え方である。ただ、外国人の多くは日本でずっと働きたいとは思っていない。長く居たいだろうと思うのは日本の幻想である。 ここで問題となるのが転籍の問題である。特定技能外国人が増えた農業ではすでに転籍が進んでいる。
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技能実習制度の課題
〇園芸産地は、炭鉱で栄えた夕張など、労働力が容易に確保できるところで先行した。夏場の忙しい時期に労働力がある地域に野菜産地が出来た。丘珠の玉ねぎ農家なども地域の女性労働力があった。
〇地域農業が発展できたのはほかの産業があったためで、過去からあの手この手で労働者をいろんな形で集めてきた。しかし今日ではそれでも集まらないため外国人に依存しているのが実情。農業では経営者や担い手ではなく農業労働者が欲しいのが実態であり。それを外国人で埋めてきた。
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〇技能実習制度は作業が限定され使いづらく、他の制度に切り替わってきており、北海道はその傾向が顕著である。北海道の技能実習制度の割合は半分を切っているのが実態。
〇北海道の農業では畜産業の外国人が多いという特徴がある。季節雇用が多いことも北海道農業の大きな課題である。
移民労働者を受け入れる時代
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〇「北海道の社会が若者に逃げられて次に外国人に逃げられたら自分たちは終わってしまう。だから外国人を大事にしないと地域の産業が維持できなくなる」という経営者もいる。
〇外国人労働者の長期就労者が増え、家族帯同で日本で生活する外国人が増える。このため生活者として外国人に接することが出来るかが問われる。そして過疎地域では日本語を教えたりする人材の確保が大きな課題である。
〇外国人がかわいそうという時代が終わった。今後は日本人の賃金が外国人より安いケースや特定技能2号の外国人が増えれば、その下で日本人が働くということも出てくる可能性がある。
〇難民と移民労働者は違う。今や移民労働者を受け入れる時代になり移民はタブーという時代は終わってしまったという前提でこれからのことを考える必要がある。
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《受講者の声》
「外国人の労働者がどうしても必要なことや受け入れ体制の大事さがよく分かりました。移民がタブーという時代が終わったとの言葉が印象的でした」
「新聞・テレビの報道から得られる知識はごく一部で断片的。今回の講座で詳細な事柄を知ることができた」
「内容が盛りだくさんで大切な問題が山積していることが分かりました。石狩が外国人労働者の先進地であり責任を感じました。私は国際交流センターで日本語教師の講習を受けたので是非それを生かしたい」








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