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主催講座5「外国人労働者の雇用とくらし」第2回「外国人労働者の支援活動とその実情」

2024/07/02

 6月21日(火)、主催講座5「外国人労働者の雇用とくらし」の第2回「外国人労働者の支援活動とその実状」をテーマに石狩市花川北コミュニティセンターで開催しました。講師は移住者と連帯する全国ネットワークの徳能恵子さん。受講者は32名でした。
 講師の徳能さんは、長年にわたり移住連のメンバーとして外国人の日常生活に関わる支援に携わってこられました。今回はその経験をもとにした外国人労働者の雇用とくらしについて自らの体験に基づく貴重なお話しの概要です。
移住連について                                        
初めに徳能さんが所属する「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」について説明がありました。「移住連は1997年に発足し、2015年に特定非営利活動法人として
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設立された組織です。1980年代半ばニューカマー(※)といわれる海外から日本への移住者、特にアジア系の人が増加。1972年の日中国交正常化や1983年の留学生10万人計画(ちなみに現岸田政権は留学生40万人計画を発表)があり1980年代後半のバブル時代に外国人労働者の導入について議論が始まりました。こうしたなかで労働者問題をはじめとする移住者支援活動が始まりました」
(※ニューカマーとは1980年代以降に日本へ渡り、長期滞在をしている外国人のことをいう)「2013年には当時の事務局長であった鳥居一平(現代表理事)の技能実習生問題への取り組みが認められアメリカの国務省よりヒーローショーを受賞したこともあります。外国人支援団体はたくさんあり貧困生活者の支援団体もその一つで、各団体からこの移住連に色々な報告が上がってくるためその時々に起きている問題が浮き彫りになっていくのが分かります」と話す徳能さん。
外国人技能実習制度について
 次に外国人労働者に関わる制度について触れ「2024年から技能実習制度は『育成技能』へと変わりました。外国人技能実習機構という組織があります。この組織はあく
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まで実習生だけが対象のため特定技能とか特定活動のような在留資格の人は関係がなく、実習を実施する会社とか管理団体からの実習計画表の提出を受けたり認定したりする組織です。認定の基準としては、寝室は床の間や押し入れを除き1人当たり 4.5平方m、食堂等は清潔なところといったような生活していく上で当たり前のことが明
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記されています。過去において例えば物置みたいなところに住まわせていたような事例があったことなどによります。このほか労働者の私生活の自由を侵害してはならないとか、寮の前に部外者立ち入り禁止と大きく掲示することや、外出や外泊に関して使用者の承認が必要だとか、お寺とか教会に行くのは自由というのもあります。イスラムの方ですと毎日お祈りするのが生きる上でのアンディティーの一部なのでそれを否定するようなことはしてはいけないことも認定基準に明記されています」と説明、来日した実習生の情報共有面については、「スマホは多くの人はソフトバンク等のキャリア契約をしておらず電話番号を持たずにWi-Fi を使える携帯電話でやり取りしています。ベトナムではFacebookの普及率が高く『メッセンジャー』というアプリでメールとか無料電話・ビデオ通話・テレビ電話を使い毎日家族と会話をしています」とスマホが研修生のコミュニケーションの貴重な手段となっていると説明がありました。
徳能さんが携わった事例の数々
 このあと徳能さんが移住連に所属し直接携わった事例について詳しい説明がありました。
 最初の事例は今から9年前、徳能さんが移住連に入るきっかけとなった事件で技能実習終了まであと数ヶ月の時に起きた運送会社でのベトナム人の不当解雇問題でし
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た。日本に来たベトナム研修生の世話をしていた徳能さんは、日本滞在中には良い思い出をと休日には大通り公園や増毛などに連れて行ってあげたりしていました。研修生の休日は金曜日。年末年始やゴールデンウィークそしてお盆や祝日もなく仕事をしていたといいます。2年半ほど経った2018年12月末に突然、会社から業績不振を理由に年明けの帰国通知が来たと涙声で徳能さんに相談がありました。調べると業績不振の場合は受け入れ管理団体が次の職場を見つけることになっていたため外国人技能実習機構に問い合わせるも年の瀬で連絡がつかず、切羽詰まって長年外国人の世話をしていた知人に連絡を取り相談に乗ってもらい対処しました。その時、石狩にある工場の寮を訪れた際、プレハブで手作りの劣悪な住居環境におかれている現場等を目の当たりにし労働基準法とか分からない徳能さんは外国人はこのようなところに住むのだと思ったそうです。
相談に乗ると30万円の違約金の契約もしていることが分かったほか給料明細を見ておかしいことに気づき札幌地域労働組合に相談、社会主義国なので抵抗もあった労働組合に入ることに。その後、関係者の支援のもと団体交渉まで行い最終的に未払い賃金・残業代の支払いを受けて無事に帰国することが出来ました。徳能さんはこの時の体験から移住連に入っての支援活動を行うことを決意したといいます。

 このほか以下のような事例について詳しく説明がありました。※詳しい内容は割愛させていただきます。    
〇18歳のベトナム研修生が頚動脈瘤奇形という年間10万人に1人発生する重篤な病気を発症。在留資格喪失問題と滞在しての医療継続という前例のない事態に遭遇。その時、札幌に設立された外国人相談センターに相談、母国の家族の気持ちを受け取りケアすることが出来、多くの機関に問題を共有してもらい事態が動いたケースで高額医療費制度の適用や障がい者年金等の受給も可能に。                                     〇2022年、札幌の鉄筋組立工事の職場での外国人へのパワハラ問題。会社の社長
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等から外国人への言葉・指導のあり方が問題になった。札幌地域労組からのアドバイスをもらうが転籍先が決まらず、焦りを機構に伝え連携する。この結果、強制帰国も避けられ新しい就労先も見つかり元気に働いている。                                       〇ベトナム人女性。職場で心理的攻撃を受け日常的に孤立。孤独から失踪するか思い悩む。機構にも相談、労働組合からのアドバイスも受けて無事に新しい農家に転籍できた。                〇コロナ・パンデミックが広がるなか、漢字が苦手な外国人が無料PCR検査や休業給付金などの行政サービスから抜け落ちる。こうした人たちへの手助けも行う。                    〇技能実習生のコロナウイルス感染に際し、支援物資が届かなかったり特定技能で転籍する場合、手続きを自分でやらなければならず、その支援活動も行った。
〇コロナ禍、生活困窮者に陥る留学生たち。住居確保給付金・学生納付特例制度・国民健康保険免除申請があることを教え、役所に同行支援。悪質なアパート管理会社の家賃二重取りにも遭遇。
〇日本語の流暢な特定技能の女の子、入国前に妊娠したら解雇となる不当な書類にサイン。妊娠が発覚し真冬に寮を追い出される。コロナ・パンデミックで国際線がストップし帰国が困難に。健康面のことを心配し国民健康保険の手続きを支援、医療を受けられるよう対処するとともに機構等の支援も求め大使館にもお願いし何とか臨時便で帰国の途へ。帰国に関する手続きは自分でやることに...
〇ミャンマー人女性、2023年から介護施設で働く。突然の腹痛になり手稲渓仁会病院にかかることになり急遽病院に駆けつけ高額医療費制度の適用を指導。札幌市には医療通訳センターがあり利用できる制度があるのに理解されていないケースが多い。 
〇23年に来日したミャンマー人男性。尊敬語も話せる日本語能力があり、ホールスタッフとして接客。いじめと差別を受け転職を余儀なくされ、転職先が内定しても在留資格確認と更新に数ヶ月かかる。その間はアルバイト禁止であり無収入に。このため社会保険等の免除手続きをしたが行政用語が難しく窓口で苦労することも。
日本はすでに移民社会
 以上のような事例を紹介したのち講演の締めくくりとして長年にわたり外国人労働者の支援活動に携わってきた徳能さんから熱い思いが述べられました。
「日本で働いて日本語や仕事も覚えても一定の期間が経つと帰らなければならないのが在留資格です。私たちが求めているのは移民社会にふさわしい移民政策。政府は移民政策を導入しないと言っていますが、日本はもうすでに移民社会です。人間を人間として受け入れ、尊厳と権利を尊重し安心して安定的に暮らすことができる政策への転換が必要だと思います」
「私たちは互いに違いを尊重し合う公正な移民社会を早く築いていく必要があると思います。日本に来て働かなければ良いのではとの意見もありますが、人口が減ると社会的にも様々な問題が生じます。私たちの社会はもうすでに外国人に支えられていることに目を閉ざさず気づくべきだと思います」
何かあった時は優しい日本語で
 「研修生は若い外国人です。青春時代を日本で過ごすうえで様々なことが起こります。何かあった際、優しい日本語で対応してほしい。こういった講演会にも本当は行政の人にも聞いてほしい。失踪原因の第1位は低賃金です。ある石狩市在住の外国人の源泉徴収票を見せてもらったら年間100万円ほどの収入しかありませんでした。どうやって生活するのだろうと思いました。技能実習生は土日の休みにアルバイトすることも禁止です。守らなければ在留資格がなくなります。借金をして来日し働くので立場は弱く解雇されたくありません。技能実習生の場合、職場を変える転籍に伴う転居時の郵便局への提出届けなどの行政手続きを1人で出来ない人がいます。日本語が理解できないためにSNSに頼り騙されてしまいます。例えば自分で書類を揃えられないためFacebookで相談に乗るよって言われて、信じてお金を振り込んだもののやってもらえないケースもあります。しかも在留カードの写真もその人に送ってしまった事例も本当に多いです」と上手にコミュニケーションを取れないことでトラブルに巻き込まれることも多いと指摘。
『我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった』
 「50年以上前、スイスを代表する作家マックス・フリッシュ氏が『我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった』と述べた有名な言葉があります。当時のスイスは労働力不足から外国人労働者を受け入れたものの短期間に大量の労働者が入ったため排斥運動が起きました。いわゆる移民問題です。それでも早期に国の方針として一定期間労働した人の家族滞在も認め、国は移民を受け入れました」
「道内の蘭越に外国人に評判の良い土木建築業があります。あるべトナム人が来日後はじめて働いた際、仕事がきつくて失踪。その後反省しその会社に戻ると、普通は裏切り者などと罵倒されたり非難されるところ、その社長は「待っていたよ」と優しく受け入れてくれた。この社長の懐の深さが評判のもととなっていると思いました」
行政だけではできないこともある
 「これまで様々な問題解決にがむしゃらに取り組んできました。管理団体の人に恫喝されて怖い思いをしたことや失敗したこともありました。逆に管理団体の方と協力して会社を説得できたこともありました。行政だけではできないことがあることも分かりました。関心ある市民や、会社の同僚として、日本人だからこそ変えていけることがあると思います」と周囲の理解と支援が大切と語り、講演を終えました。
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《受講者の声》
「外国人労働者の現状を知り本当に驚きました。単純労働者として利用していては日本の将来は絶望ですね。もっと細やかな法律を定め、人権が尊重され共存できる社会を築かなければと痛感しました。オフタイムの日本人との交流の大切さも...日本に来て良かったと思ってくれる社会に」
「身につまされるようなお話でした。日本はすでに移民社会。日本人の一人として多様性のある社会に少しでも近づけることを考えていきたいと思います」
「貴重な経験に基づくお話で今まで知らなかったこともたくさん聞けて良かったです。私たちも外国人との共生のためにできることを少しでもやっていかなければいけないと思いました」
「外国人技能実習生の状況がよくわかるお話でした。日本はすでに移民社会であり、それにふさわしい政策が必要であるという言葉が印象深かった」
「外国人労働者が劣悪な状態にあるのは分かった。全体から見てどのくらいの割合なのか? NPOの活動は理解できるが果たしてどこまでできるのか。このような取り扱いは日本だけの問題ではないように思う。取扱いを改善し過ぎれば逆に日本への流入過多になる恐れもある」




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