10月3日(木)、主催講座9「市長によるエネルギー講話と『石狩湾新港地域再エネ関連施設』見学~躍進する石狩湾新港~」を開催しました。市役所4階会議室で加藤龍幸市長(学長)によるエネルギー講話を行い、その後バスで石狩湾新港地域を見学巡回しました。受講者は、48名。
1.加藤龍幸市長(学長)によるエネルギー講話「石狩市のエネルギー構想と持続可能なまちづくり」
■講話の内容
1)石狩湾新港と再生可能エネルギーについて
2)洋上⾵⼒発電とは
3)⽯狩市の洋上⾵⼒発電と今後の展望
4)再エネ"地産地活"の取り組み
以下は講話の概要です。
1)石狩湾新港と再生可能エネルギーについて
◇石狩湾新港地域の規模と立地
・規模:3,022ha 立地企業:760社/就労人口2万人超(うち13,000人が札幌より通っている)
・立地:札幌駅から15㎞/30分で最も札幌に近い港。
・下の画像の黄色部分が石狩湾新港地域
◇特徴
多様な産業と再エネ電源が集積している。
・産業:コストコホールセール石狩倉庫店(平日でも1万人の集客を誇る)、スーパーホテル(全国のスーパーホテルでも上位の稼働率)、さくらインターネット石狩データセンター、ニトリ石狩DC(物流センター)などなど。オンデマンド交通や自動配送ロボットの実証フィールドにもなっている。
・再生可能エネルギー集積:風力、バイオマス、太陽光などの再生可能エネルギーによる発電施設が集まっている。一部の風力発電は、市内の小中学校などの電力を供給(令和6年5月から令和7年6月まで実証。市内小中学校など公共23施設に電力を供給する)。
◇過去のエネルギー基地としての石狩
1858年に存在が確認された石狩の油田は、当初埋蔵量が少なく停滞していたが、1911年に日本石油に譲渡されてから、パイプラインが引かれ、1929年には年間産油量10,000kl、従業員250人と最盛期を迎える。1960年、閉鎖。
2)洋上風力発電とは
・海上に⾵⼒発電所を設置し、⼤量の電⼒を得る発電⽅法。
・道内では、太陽光や陸上⾵⼒よりも多くの発電量が⾒込める。
・国内で商⽤運転を開始している洋上⾵⼒発電所は秋⽥県と⽯狩市の2か所(港湾区域)のみ。
・国は洋上⾵⼒を脱炭素の切り札と考えており、全国的に導⼊が進む⾒通し。
◇石狩市は洋上風力発電の適地
・⾵況(⾵の強さ、⽅向の安定性)が良い。
・遠くまで浅い洋上⾵⼒設置に適した海底地形。
・広大な工業団地を有している。
◇合同会社グリーンパワー石狩による洋上風力発電(港湾区域)
・発電出力:8,000kw×14基
・約8万3,000世帯分の年間電力消費量を発電可能。
・運転開始:2024年1月1日(※全国で2カ所目)
・洋上風力発電風車設置の様子
SEP船(自己昇降式作業台船)への積み込み(1回に風車2基分ずつ)
このあと、工事の進行状況の映像が紹介されました。
3)⽯狩市の洋上⾵⼒発電と今後の展望
◇洋上風力発電機の安全性
風、波、地震、落雷などに対し、地上のビルなどと同様の耐久力と電気事業法や港湾法などに基づく技術基準に適合することが必須条件。石狩湾新港洋上風力発電事業は、それらの必須条件を満たしていることを確認する「ウィンドファーム認証」を取得している。建設後のメンテナンスも、24時間体制の監視のほか専門技術者が港湾内に勤務して風車の安全管理を行っている(広報いしかり2023年10月号)。
◇洋上風力発電による影響
・交流人口の増加
スーパーホテルでは、洋上風力関係者の1~2か月の長期利用が増えた。親船町の民宿でも長期利用が増えた。
視察者の増加⇒70件約600名。
東京都内高校の修学旅行も内定(石狩市が学びのフィールドとしても注目されている)。
◇石狩市沖での事業想定
設置基数:76~91基 発電容量:91万kw~114万kw(原発1基分に相当)
◇「石狩市沖」での洋上風力を検討する協議会(法定協議会)の設置
・各地域・組織を代表し、洋上風力発電に求める事項を協議。
・地域共生策(洋上風力発電事業者による設置地域への地域貢献事業)の検討。
・法定協議会のイメージは、関係自治体、漁業関係者、有識者、国・北海道により洋上風力に関する地域意見をとりまとめ、地域意見に配慮した洋上風力発電事業の実施を事業者へ要請して、地域共生策を展開すること。
◇地域共生策とは
・洋上⾵⼒発電所の規模に応じた基⾦を活⽤し、発電事業者が地域に対して提供する取り組み。
・⽇本国内の先進地域では、漁業環境整備や地域⽔産品の全国流通をはじめとした漁業者に対する支援に加え、手薄な公共交通を解消するためのオンデマンド交通導入など、地域課題を解決する共生策の検討が進んでいる。
・検討に当たっては、地域の将来像や課題を⾒つめなおし、地域に求められる要素を洗い出す必要がある。
◇洋上風力を知ってもらう取り組み
子どもたちには、情報を伝えるだけでなく、地域共生策への提言もお願いしている。
◇北海道内の洋上風力発電
「石狩市沖」以外にも日本海で複数の計画がある。
道内各地での洋上風力発電事業において、石狩湾新港が基地港湾として活用される可能性⇒これは、新港地域に立地する企業のビジネスチャンス!
◇洋上風力発電に関する発注を地域で受注するための「組織体」の結成
・市内経済団体と協力し、企業向けの周知活動を実施。
・参入を目指す企業で、洋上風力に関する仕事を受注する「組織体」結成。
・洋上風力の恩恵を少しでも多く、石狩市内に循環させる。
◇秋田県秋田市との研究会設立
・再エネ関連の調査・事業を効率良く展開するため、秋田県秋田市と研究会を設立。
・洋上⾵⼒を地域産業にする施策や、両市の交流⼈⼝を増加させる取り組みを検討。
・⽯狩市内企業が秋⽥市内企業と協⼒体制を構築することも視野に入れている。
4)再エネ"地産地活"の取り組み
◇石狩市が目指す再エネの地産地活(地域で作られた電力を地域で活用する)
◇REゾーンの設定(約100ha)
REゾーン(Renewable Energy Zone )は、再エネ100%の電力供給を目指す区域。
◇地域の再エネをデータセンターに供給
※データセンターとは
・⼤量のデータを保存・計算する施設。世界のデジタル化に合わせて存在感を増している。
・⼤量の電⼒を消費するため、再エネの活⽤が必須。
・多額の投資であるため、地域に経済効果が生まれる。
・再エネが活⽤でき、冷涼な気候である⽯狩市はデータセンターの適地。
・地域のデジタル産業が活性化する可能性が高まる。
①さくらインターネット
・2011年11月進出。
・国内企業で初めてガバメントクラウドに条件付き(2025年度末までに技術要件を満たすこと)で認定される。
・生成AI向けGPU基盤へ約1,000億円の投資を計画しており、経済産業省から約 500億円の助成を受ける。
②京セラコミュニケーションシステム
・2024年10月1日開業。
・エネルギー地産地消型モデルにより再エネ100%で運営するゼロエミッション・ データセンターを実現。
・AIを活用したエネルギーマネジメントシステムにより、地域の再生可能エネルギーを有効活用。
③合同会社石狩再エネデータセンター第1号
・2026年営業開始予定。
・データセンターの地方分散を担い、再エネ活用やレジリエンス(危機やストレス、トラブルにうまく対処し立ち直ることができる回復力)の強化に寄与する。
・地域価値創造型・地域貢献型データセンターの実現を目指す。
・脱炭素先⾏地域の事業として企画されており、出資者である東急不動産と⽯狩市が再エネ利活⽤型のまちづくりに関する連携協定を締結。
◇石狩湾新港地域による主体的な収入確保
・石狩市の税収のうち、石狩湾新港地域からの収入が3割強⇒産業振興が持続可能なまちづくりを支える重要な基盤になっている。
・再エネを"⼿段"とした産業振興で、堅調な伸びをみせている。
◇直近の石狩市内の開発案件について
石狩地域バイオマス発電所、再エネデータセンター第1号、たびのホテル石狩(石狩市の誘致ではなく先方の意向で進出)など。
◇今後の開発可能性について(交流拠点)
・石狩湾新港地域は、2021年のコストコホールセール⽯狩倉庫店進出をきっかけに、札幌圏全体からの集客を⾒込めるエリアに変貌した。
・ 2023年3⽉にはエリア内の特別⽤途地区を⾒直し、⼤規模商業施設の建設が可能となった。
・ コストコ周辺への商業施設誘致を目指しており、2024年度は18haの新規開発用地(5工区)についても商業施設などで構成する交流拠点として整備すべく、⽅向性などを検討する調査事業を進めている。
◇先進的な取り組みを進め、持続可能なまちづくりを行うためには、考える癖のある職員の育成が不可欠!
●若⼿職員による政策提案プロジェクトチームの設置(2024年度より試⾏)。
・公募により、30代以下の若⼿・中堅職員15人が参加。
・付託テーマ(未使用市有地の有効活用や市役所業務のデジタル化など)を議論し、解決策を理事者にプレゼンテーション予定。
・プロジェクトチームによる提案事業は、予算化・事業化を本格検討。
■本日のまとめ
―脱炭素の実現により、 新たな地域活⼒の創造へ―
以上が本日のお話の概要ですが、加藤龍幸市長は、最後に緑苑台地区で開発中の280戸の団地を紹介して、再エネ電源の立地というチャンスを生かして持続可能な活気あふれるまちづくりを目指していきたい、と結ばれました。大変分かりやすいお話を聴いて、石狩湾新港地域における再生エネルギー電源立地の状況とそれを利用する企業の集積が交流人口を増やして市に活気を与え、経済的な恩恵をもたらして持続可能なまちづくりにつながっていることを理解することができました。なにより受講者のみなさんがお話を聴いて、石狩の未来に明るい希望を感じてくれたことが、講座の主催者として大変嬉しいことでした。市の若い職員さんたちの活躍も大いに期待したいと思います。
加藤龍幸市長の講話を聴いた後バスに乗り、企業連携推進課の藤本夏樹主任の案内で洋上風車などを見学しました。
西ふ頭へ向かう途中車中からデータセンターなどを誘致している「REゾーン」を観察しました。
通常は立ち入り禁止の西ふ頭に特別に入場させてもらい、14基の洋上風車を見学。市長のお話にもあった約83,000世帯の電気をまかなう能力を持つ風車の姿は壮観でした。高さは196mあるそうです。売電期間は20年。電力は、風車から海底ケーブル、地下ケーブルを通してコンテナ約40基分の大型蓄電池へつながり、そこで出力変動を充放電制御して北海道電力ネットワーク(株)に送られる。売電価格は、現在36円/kwh。
洋上風車の次に車中から大型蓄電池を見学。
最後は、市長のお話にあったREゾーン内の交流拠点化を目指すエリアを通り、コストコホールセール石狩倉庫店、スーパーホテルなどを眺めながら市役所へ戻りました。受講者のみなさま、お疲れさまでした。
最後に受講者から寄せられたコメントをいくつかご紹介します。
「市長の石狩工業地帯の現状と今後の発展について今後も期待が持てる工場誘致について明るい希望の持てる話を聞き安心しました。また、バスでの工業用地の見学も良かったです。特に巨大な規模の風力発電の14基の建設には圧倒されました。市役所の案内して頂いた職員さんの説明も良かったです」
「石狩の現状と将来の発展可能性を現市長さんから聞けて大変良かったと思います。市長さんの力強いご説明から再生エネ策が地域振興の起爆剤となっているようにうかがい、石狩の将来に明るい希望をいただきました」
「洋上風力の建設工事の映像は目をみはるものでした。NHKのプロジェクトXをみている感動でした。コストコも実家である中富良野の農家の甥家族が年に数度ですが、子供たちを連れてドライブ気分で訪れています。これもネット情報で知ったようです。今日は、石狩の希望を見学させてもらい意義ある講座でした。ありがとうございました」
「市長からの話は再エネ(を)起点にしたマチづくりの話を聞けて良かった。プラス面とマイナス面についても話が聞きたかった。見学もできて良かった」
「大変意義のある講座でした。初めて市長から現在の取り組みの一端、エネルギー問題、まちづくりへの具体的なビジョン等、わかりやすいお話が聞け大変良かった、と思っています。考える若い職員の育成、研修の場、期待しています。脱炭素、地球レベルでのお話、理解できました」
「初めての市長講話でしたが、市民の一人として住んで良かったなと心から想った次第。今後の新港の運営・発展には市長の手腕(が)期待されている所、頑張って下さいね!小樽との関係もむずかしい問題があると思いますが、小樽のいいとこ取りにならない様にしっかりカジ取りをお願いしますね」
「資料の内容を充実してください。新港の地図(要らん)があったらよかったです。海岸防風林の国有地は保護林になると聞いていますが、市有地の部分が伐さいされて再エネ施設が建てられるのは間違いだと思います。石狩の自然環境の保全なくして、地球環境は保全されないと思います」
「市長としては経済面を第1に考えるのはマア理解できるが住民のことももう少し考えて欲しいと思った。石狩の持つ自然を考えて欲しい」