11月15日(金)、主催講座10「北海道バレー構想と石狩~半導体、データセンターそしてIT産業など~」の第2回「見学学習」をさくらインターネットのデータセンターで開催しました。
講師は、さくらインターネット研究所の朝倉恵さん、受講者は33名でした。
講師の朝倉さんは石狩市出身で藤女子大学大学院修士(人間生活学専攻)、2012年6月にさくらインターネットに入社。「さくらの学校支援プロジェクト」元シニアプロデューサーを経て、現在さくらインターネット研究所に所属し主に社会に開かれた教育課程、デジタル・シティズンシップ教育についての研究を推進中です。
今回の見学にお手伝いいただいたスタッフの玉城さん、三谷さん、安永さん、新発田さん4名の紹介があり講座が始まりました。
1.データセンターとは?
昔はデータセンターが企業にとっても一般的ではなかった時代があり、インターネット利用者が知る機会もあまりなかった。その当時はSNSやゲーム、ニュースなどのデータを保管してサービスを行なうサーバをウェブサービス事業者自身が維持・管理していた。インターネット利用者は直接ウェブサービス事業者のサーバにアクセスしていた。
時代が変わってデータセンターが一般的になってきた頃、ウェブサービス事業者はデータセンターにデータを預け、インターネット利用者はデータセンターにあるサーバにアクセスすることが当たり前になっていった。
そして現在はクラウドの時代に入った。ウェブサービス事業者もインターネット事業者もスーパーコンピュータに匹敵するような計算資源をデータセンターにインターネットを通じてアクセスすることで利用することが可能になった。
データセンターに必要な4つの要素とは、
・大容量で安定的な電源供給
・サーバ室の適切な温湿度を維持する空調設備
・高速で安定的な回線
・災害に強い、頑丈でセキュリティが確保された建物
以上4つを365日24時間提供し続けることが、データセンターの使命である。
2.石狩データセンターの特徴
大規模、大容量、高速の3つのサービスを環境に配慮しながら実現すること。
①省電力、電力効率化の工夫
従来のデータセンター消費電力を100とした場合、石狩モデルは4割減らす省電力化。大きな特徴として空調に使用する電力を大きく減らした。その工夫として、外気冷房の仕組みを採用している。
また、一部のサーバでは直流給電によって交流から直流への変換を減らし、電気のロスを最小限に押さえてIT機器に使われる電力の消費を減らす工夫もしている。
②データセンターに最適な土地 石狩市は再生エネルギーに対する取組みが非常に熱心であることや広大な工業用地があり、近隣に変電所、海底ケーブル陸揚げがあるという物理的なメリットがある。
③内製による一貫したサービス運営
正社員が色々な役割を担い、一気通貫でサービス運営をしており、自社の建物ということもあり常日頃から工夫改善を社内の人間で加えている。
3.AI(人工知能)って、なんだろう?
今日聞いたからAIがわかったということにはならないほど難しい技術である。ただ、AIを使うとこんなことができるということを知ってもらえるといい。
AIに包括される中に機械学習、深層学習があり機械学習や深層学習を手段として用いることで生成AIのモデルが形成される。
機械学習を分かりやすく説明するため、「ルビィのぼうけん」という参考書を用意した。
機械学習とは、問題を用意する部分と学習データを集めるところまで人間がやり、モデルを作って答えを出すのはAIがやりブラッシュアップしていく仕組みである。
機械学習の方法としては、「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つがある。「教師あり学習」は人間がラベル付けして教える。「教師なし学習」はAI自身が特徴をみつけてグループ分けしていく。「強化学習」は目的をもってその目的を果たすまでずっとやり続けるという手法である。
ここで、実際に子供達の教育にも用いる「スクラッチ」というプログラミングのツールを用いて講師より「教師あり学習」の事例を実演。
「たしからしさ」をつなぎ合わせて文章を作るのが生成AIである。
東京学芸大学附属小学校で行なわれた生成AIを使った授業では、人間とAIの違いやAIをどのように生活の中で取り入れていけばいいのかということを子供たちが考えるような実践が行なわれていた。
「たしからしさ」というのは人間が与えた学習データによるものなので、人間が与えたバイアス(考えの偏り)がAIに非常に強く反映されていき徐々に色濃くなっていく。
Bingで「ソフトウェア協会のパーティーのイラストを描いてください」と指示して生成したイラストでは、AIがソフトウェア協会のパーティーに参加しているのは全て男性と認識するような生成結果となり、バイアスの一端を見ることができた。このように、AIを利用することによって危惧される一面もある。
だからAIは利用しないということではなく、「より良い社会にするために人間が一生懸命考えてAIを活用していく」ということが非常に大切である。
座学後、データセンター施設を見学(センター内は録音・撮影禁止)。
内容を掲載できないのは残念ですが、普段入室できないデータセンター設備について丁寧な説明をいただき大変貴重な時間となりました。
最後に受講者の感想を紹介します。
「百聞は一見にしかず。初体験でよかったです。少しだけ身近に感じられました。感謝!」「説明がわかりやすく、スタッフの皆さんの下準備でお陰様でバスの運行も見学もよかった」「どんどん大きくなるNET事業、AI事業は将来があり頼もしい次第でついていけなくなっています」「普通立ち入ることが出来ないデータセンターの見学良かったです」「人工知能(AI)開発に使うスーパーコンピュータ設備を見学でき非常に勉強になりました」「通常は入室できない施設内を拝見し、具体的な説明をいただき大変勉強になりました。コンピュータ関連でこんなに電気を消費することに驚きました」「確か3度目の見学になります。時代の進化をつくづく感じます」「知らない世界を知ることが出来ました。部長様の説明が最高によかった。ありがとうございました」「いしかり市民カレッジに参加していて良かった。地元でこの設備を見学できたことに感謝します」「素晴らしかった。石狩の未来に明るいものがありそう。長生きしなくちゃ」「外観しか見たことのなかったデータセンターの内部を見学できて良かった」「大変満足しました。知らないこととは云え、石狩にこれほどの設備があったとはビックリです。さくらインターネットが益々発展することを願います」
以上