11月29日(金)、「北海道バレー構想と石狩~半導体、データセンターそしてIT産業など~」の第3回「ゼロエミッション・データセンターと自動配信ロボットの取り組み」を花川北コミュニティセンターにて開催しました。
講師は、前半の「ゼロエミッション・データセンターの紹介」が、京セラコミュニケーションシステム株式会社デジタルソリューション事業部ゼロエミッション・データセンター部長の尾方哲さん。
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後半の「自動配信ロボットの取り組み」は、京セラコミュニケーションシステム株式会社経営企画室モビリティ事業企画課長の水迫浩昭さん。
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受講者は、前後半とも42名でした。
講師の尾方さんは北海道出身でデータセンターサービス・モバイルデータ通信サービス、再生可能エネルギー100%データセンターの企画・開発に携わっており、水迫さんは鹿児島出身で自動配送ロボットの実用化に向けた実証実験に数年間取り組んでおられます。
1.データセンターと再エネ関連動向 ~データセンターのグリーン化に向けて~
本年10月に稼働した状況ですが、環境に優しいデータセンターをコンセプトに運営しており、色々なものがデジタル化している中でデータセンターが支えている状況がある。近況の動向として5点列記しているがその中でトピックスとして脱炭素・カーボンニュートラルについて気候変動等への対応が社会的に注目されており、データセンターとしても大きなテーマになっていることから我々もこの点に着目して取り組んでいるところである。ここを中心に話をしていきたい。
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データセンターの中は、大きくサーバ室と電気室などの設備室があり、設備を稼働させるために太陽光、風力、火力などの発電所から送電網を通じてデータセンターに電力が供給される仕組みである。サーバで膨大な計算(ロジック)や記憶(メモリ)をするとそれらが全て熱となり排出される。
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そこで、電源については再エネを利用し、より効率的に送電し、水を使った冷却、進化した半導体を使っていく等環境負荷を減らすため、かなり複合的な取り組みが必要となってくる。
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社会全体として気候変動による(温暖化)温室効果ガスの排出を抑えていく必要があると言われているが、どうやって抑えていくかという事を推進している代表的な団体(気候変動対策イニシアティブ)がある。
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再エネ調達の方法として6パターンあるので紹介する。
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①自家発電方式。自社敷地内に設備を置いて自営線で直接送電線を繋ぐやり方。
②自社敷地内に別の事業者設備をおいて電力の供給をしてもらうやり方。
③と④は、オフサイト方式で外部電力会社から電力を供給するやり方。
花川北コミュニティセンターの施設は再エネ利用100%ということで風力発電を利用しているようである。
⑤北海道であれば北電や北ガス等が提供する再エネ由来の電力メニュー(グリーン電力)を契約するやり方。
⑥電力契約は変更せずに電力使用量相当の環境価値を購入するやり方。
現在の主流は⑤と⑥になる。しかし、それだけでは不十分であり①~④も増やしていくことが必要とされている。
2.ゼロエミッション・データセンターの紹介 ~KCCSの取り組み~
2019年道新の元旦号で取り上げてもらい3月に当時田岡市長であったが石狩市と連携協定を締結した。しかし、新型コロナウィルスやウクライナ情勢の影響もあり、当初の計画から遅れ開所が本年10月となった。
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2050年カーボンニュートラル宣言に乗っ取った事業展開を求められることから、
①変動する再エネ利用に関しては地産地活(石狩にあるエネルギーを有効に使う)。需給一体(発電量に適した有効利用)。
これらの最適化を目指す。
②再エネによる脱炭素化に積極的に取り組むデータセンターにしていく。
③会社の事業として太陽光を利用した発電所を作る仕事をしており、地域活性化につながる雇用の創出により地域経済に貢献できるようにしたい。
また、デジタル技術を活用する拠点なので、後半の自動配送ロボットも絡んでくるが地域課題を解決できるよう役に立っていきたい。
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当データセンターの特長をまとめると、再エネ100%活用と省エネ。サスティナブル建築。そして、高信頼性になる。
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一番メインの再エネ可能なエネルギーについては、現在石狩湾洋上におおよそ200㍍の高さがある風車が14基建っている。その電力が送電網を通じて供給されている。
さらに、自前の太陽光発電所を設置している。基本的にはこの2つでデータセンターを動かしている。利用している発電設備を画像で明確に示せることは非常に珍しいことである。
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変動する再エネをうまく使うために自家発電設備の他に再エネを需給する蓄電池を装備している。電池をうまくコントロールし、安定調整するためにAIも活用しながら制御。
年間ではなく時間単位で炭素に依存しない電力を賄う「24/7(24時間週7日)カーボンフリー電力」によるデータセンターは国内初で他にはまだない。石狩ではそれが可能になる。
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世の中では再エネ調達方法の⑤と⑥が主流だが、当データセンターは①と④で運営しているのが特長である。
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省エネについては、立地条件を生かし外気を取り込んで間接外気冷房設備を構築。
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3.自動配送ロボットの取り組み
通信とICTと再エネの3つの事業を組み合わせて、モビリティ(配送ロボット)なら何か出来るのではないかということでスタートした。その中で地域に根ざしたものを作っていくという観点から「配送ロボット」で地域活性化を目指す事業が始まった。
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この事業は、経産省の外郭団体(NEDO)から助成を受けて、ロボットによる配送の無人化・省人化を行なうことを目標にしている。従って、開発目標としては複数台使って多様な地域にサービスを提供することになる。パートナーはヤマト運輸とセコマ。もう一つは、雪上走行技術の研究開発を実験レベルで行なっている。
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課題としては、宅配数量の増加(現在はそれほど増えてない)、配送員の担い手不足、高齢化による交通弱者や買い物弱者の増加、これらの問題を解消していくことを考えて取り組んでいる。
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緑苑台地区で2022年度から3年間に渡って行なった実証事業について、ロボットは最高時速は15㎞/hのロボットを使用しており、移動型ロッカーと保冷ロッカータイプの2種類を使っている。
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2021年度は、宅配・コンビニ・クリーニング業者の協力を得て、決まったコースを走らせることを実証。
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2022年は、千葉県幕張の都市型でどのようなことができるか実証。買い物支援でマンションの下まで配送する。無人移動販売では、QRコードで決済。
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2022年度後半は、石狩市において複合的地域におけるラストワンマイル物流に取り組み、個人向け配送と移動販売を実証。
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2台同時に走らせて、停車場所を6カ所設定した。ロボットにタッチパネルが付いていて、それを操作する事で該当のロッカーが開いて荷物を取り出す形。
2023年度は、一人で複数台(3台)を監視する試みをした。セルフレジをロボットに搭載し、配送場所を50カ所に増やした。高齢者の方からは「セルフレジは面倒、慣れないと難しい」という声も頂いた。
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2024年度からは、7月から出前館の注文サイトを使って、セコマの商品を配送する試みをした。緑苑台の世帯数1200件あるが、約300件の家の前で停車場所を設定し、配送した。4ヶ月実施したが、利用者が想定よりも多くなかったこともあり、サービス化には課題が残る結果。ロボットの自動運転、他車を回避し、右左折時の一時停止等、自律で走行できるレベルになっている。
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町中にある固定型ロッカーをロボットに搭載し、家の近くまで届ける(9時~21時)形だったが、2ヶ月で30件の結果であった。
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北海道の雪対策について、一番難しいのはロボットのセンサーが雪を障害物として捉えてしまうので北大と一緒に研究している。
また、様々な方の意見を聞きたいので、研究会も作り活動しているところである。
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今後のロボットの予測だが、2035年には8000台程度走行して市場規模としては
1000億円程度の経済効果を見込んでいるが、あくまでうまく行った場合の話である。
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人は24時間働けないが、ロボットなら可能。早朝や深夜配送等ニーズのあるところで活躍が見込める。そういうところを目指していきたい。
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水迫講師には、貴重な実証動画を投影してもらい、とても丁寧に説明いただきました。
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最後に受講者の感想を紹介します。
「データセンターでは電力が必須で、再エネ関連の活動が大切ですね。自動配送ロボットの取り組みは初めて学ばせていただき興味深かった」「時代の要求に沿った研究・取り組みに感心しました。今後の発展に期待します」「データセンターがどうして当地が選ばれるのか、本日の講義を含めて存分に理解できた気がします。石狩市は実に素晴らしい時代に合った企業との取り組みがこの先楽しみです」「自動配送ロボット、動画を取り入れての講義で理解できた。しかし、開発途上まさしく近い将来の完成姿をイメージして楽しんでいきます」「冷涼な北海道は非常に良い環境であることがわかりました。自動配送ロボットは非常に興味があり実用化を期待しています」「日常的に触れることの少ないデータセンターとエネルギーについて理解が進んだ。太陽光よりも洋上風力の比重が高いことに驚いた。洋上風力発電には様々な問題があり素直に良いとは言えない。悩ましい問題だ。自動配送ロボットの話が聞けてよかった。人手が少なくなるということは日常生活が大変になるということ。可能性の追求という点ではこれもありかな。しかし高齢者は対応できるかな」「自動配送ロボット、まだまだですね。新聞配達が出来るといいと思います」「石狩でこのような事業がなされていることは知らなかったので勉強になりました」「データセンターから見えるところに発電設備があるということに石狩市民として少し誇らしく感じました」「京セラさんの再エネに関し、世界的な脱炭素問題も報道されているこの頃興味深く聞きました。また、配送ロボットも早く実現してほしい」「ゼロエミッション・データセンター部長、京セラ尾方哲講師からのデータセンターのグリーン化~KCCSの取り組み~等を説明していただき水迫浩昭講師には自動走行ロボットの利用等を資料ビデオを通して詳しく考察させて下さり素晴らしい講座感謝申し上げます。運営委員の皆様方一年間ご苦労様お礼申し上げます」「自動配送ロボットがいずれ実用化されると思うがまだまだ問題点が多そうです。早期にクリアー出来て実現できることを期待したい」「ゼロエミッション・データセンターについては、再エネの概念自体を例を交えながらわかりやすく教えていただけてよかったと思います。とても興味深い。自動配送ロボットは、研究開発のご苦労がよくわかる内容だったと思います。これからが楽しみですね」「京セラデータセンターの再エネ調達方法を知ることができた。「24/7カーボンフリー電力」の考え方は今後重要になってくると感じた。自動配送ロボットの進歩に期待したいが同時に課題も残されていることを知ることができた」「カーボンフリー電力の意味や意義を身近に感じる機会になった気がします。前回さくらインターネットデータセンターを見学できたので本日のお話しが理解しやすくよかった。再エネ・省エネの問題もデータセンターの面から関心が深まりました」「少し興味があったが見学したり話を聞いたりしないと分からないものだなぁと思いました。3回の講義と見学は大変勉強になった」